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第46話 聖女・サラ・3歳

(なんでわたしがっ、こんな気持ちにならなきゃいけないのっ⁉)


 サラは両手に力を込めて握り込み、力が入り過ぎた肩を高く上げたまま声を上げて泣いた。


「びぇぇぇぇぇぇぇぇん!」


 悔しいとか、悲しいとか、イライラした気持ちが心の中にモクモクと沸き上がって整理がつかない。

 サラは顔をグシャグシャにしながら泣いた。

 ボロボロと流れる涙の粒は大きくて、サラが着ている白いドレスのようなワンピースまでグッショリ濡れた。

 防汚加工のかかった服ではあるが、綺麗になるスピードはサラの気分と連動しているようだ。

 サラの気分に合わせるように、誰かに見せつけるかのように白いドレスは惨めに汚れていった。


『サラ~、泣かないで』


 クロがサラの頬を肉球でポフポフと撫でた。


(あったかくて、ぷにぷにのホワホワ)


 安心感のある手触りを頬に感じて、腕を投げ出すようにしながらサラはその場にペタンと座り込むと、さらに大きな声を上げてワァワァと泣いた。

 

『あぁ、ニンゲンの子どもは慰めると余計に泣いてしまうな?』


 バーンズは困惑したように言いながら、サラの横にペタリと座った。


(バンビちゃんの毛皮)


 サラは大泣きしながら小さな右手でバーンズの背中を撫でた。

 柔らかな感触は心地いいが、サラの涙を止めるまでには至らない。


『ニンゲンの子は泣き虫なんだからっ。仕方ないわねっ。ワタシの美しい毛も撫でていいわよっ』


 シローネはバーンズの反対側にペタリと座った。

 

(真っ白毛皮~)


 サラは歓喜しながらも泣き止むことなく左手でシローネの真っ白な毛皮を撫でる。


『ん、しょうがないなぁ~。ボクが抱っこしてあげるよ』


 ピカードはサラの後ろに回り込むと、小さな体をヒョイと持ち上げて自分の膝の上に置いた。


(もふもふのニンゲンをダメにするクッション~)


 サラはピカードの腹に体を預けながら、右手でバーンズを撫で、左手でシローネを撫で、クロにプニプニされた。


(天国か⁉ いやマジで天国だったのか?)


 1回死んでる者しかいないとなれば、ココは天国ということになるが。

 

(異世界人が入ってこれる場所にあるのが天国なわけないか)


 転生は天国へ行ったのとは違う。


(ここもまた人生を歩む場所!)


 そのくらいのことはサラにも分かる。

 サラが掃き出し窓の外をみれば、王子がブランコに座りジト目でこちらを見ていた。


(自分の恋人の事()()考えてないくせにっ!)


 それが真実でないことくらいはサラにも分かっていたが、どうにもこうにも感情が荒ぶっておさまらない。

 なので目の合ったミハイルにアカンベーをお見舞いしてやった。


(ああー、なんかムカつくーーーーーっ! サラちゃんは聖女だけど3歳児なのにっ!)


 サラが子どもの特権を活かしてグスングスン泣きながら両側に座るモフモフの手触りを楽しんでいると、お腹がグゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥと音を立てた。


『お腹空いた?』


 クロがサラを心配そうに覗き込んで言った。


「ん……クズッ……ちょっとだけ」


(そういえば朝ご飯、まだだった)


「グスン……皆も……クズッ……お腹減った?」


 サラが聞くと、ピカードは腹をグゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥと鳴らして返事をした。

 他の聖獣たちも無言でコクコク頷いている。

 サラはグスングスンと泣きながら無限収納庫を開けて、朝食によさそうなものを適当にひっぱりだした。

 テーブルの上には和風の朝食メニューと洋風の朝食メニューが並んでいる。

 聖獣たちは各々好みのものを手に取った。

 サラは泣くのに忙しいので、簡単に食べられるおにぎりを選んだ。


(泣きながら食べるおにぎりはしょっぱいな)


 サラはそんな風に思いながらも、掃き出し窓の向こうにいるミハイルへ見せつけるように泣き続けた。



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