第43話 王子の説得、聖女の拒否 1
掃き出し窓の向こうでペチャンとなって気を失っていた王子をピカードが軽々と抱き上げ、室内のソファへと寝かせた。
「大丈夫ですかぁ~」
サラは声をかけながら治癒魔法をかける。
(スキルいっぱいもらったから、他人を助けられるの助かる)
「王子さま~? ミハイル王子さま~、聞こえますかぁ~?」
サラの小さな手のひらからは、白い光が出ていた。
手のひらを向けられている先には、王子さまらしい白い衣装を身に着けたミハイルが寝そべっている。
(グッタリしている。まるで屍のようだ)
聖獣たちに見守られながら、サラは縁起でもないことを思った。
そのくらい現実味がない。
(わたしが治癒魔法使ってるっていうのも、キラキラした金髪の王子さまが目の前にいるっていうのも、現実味なさすぎ。そもそも喋る上にサイズを自由自在に変えられる動物に囲まれてるし~)
まるでお医者さんゴッコのような治癒魔法ではあったが、効果はあった。
「うぅ~ん……」
「あ、気付いた」
「びぎゃっ」
サラの声掛けに反応して、ミハイルが目を覚ます。
(うわぁ。睫毛ながーい。金髪で睫毛も金色ってだけじゃなくて、瞳の色も金色なんだー。すごーい)
自身も銀髪に青い瞳と、前世日本人であるサラにとっては物珍しい色合いではあるのだが、ニンゲン自分のことは見えないので意識はしないものである。
ただただ目の前の王子さまの容姿に驚いて目をぱちくりさせるサラであった。
「あ……私は……?」
王子はまだぼんやりしているようだ。
サラは状況説明のために話しかけた。
「いいですか、落ち着いて聞いてください。わたしはサラ、聖女です。そしてココは聖獣の森です。あなたは聖獣の森にいます。分かりますか? ここにいる動物たち、喋りますよ」
「ぴぎゃっ」
頭の上でオカメちゃんが鳴いたが、お前じゃないとサラは思った。
サラが後ろに控えていた聖獣たちを振り返ると、ミハイルも顔をそちらに向けた。
「えっと、紹介しますね。クマがピカードで、ウサギがシローネ。バンビちゃんはバーンズで、銀色オオカミがシルヴィ。で、クロヒョウがクロ……」
『サラはクロって呼んでるけど、ボクの名前はクロザート。クロザートでもクロでも好きな方で呼んで』
「えっ、動物が喋っ……」
ミハイルは上半身を起こすと、目を丸くしてクロを見ている。
「うん。だから聖獣なの」
「何がだからか分からないが、さすが聖獣さま。凄いですね」
金の瞳に聖獣たちはガン見されてモジモジしている。
(おや、わたしの時と反応が違うな?)
やはり金の瞳は異世界においても特別なのか、とサラがぼんやりと思っていると、金の瞳の持ち主が顔の角度をギュンと変えてこちらを見た。
「そしてあなたが聖女さまなのですね?」
「う……うん」
サラはコクリと頷いた。
銀髪頭にくっいていたオカメちゃんもついでに頭を下げる。
ミハイルはサラを見て「小さいな。幼女じゃないか」などと呟きながら、目をぱちくりさせていた。
だが意を決したようにキリッとした表情を浮かべ、ソファの上に足を揃えてキチンと座ってサラに頭を下げながら言う。
「我が国は今、瘴気が満ちてしまって大変なことになっているのです。魔獣も王都に迫っています。聖女さま、どうか我々を助けてください」
「やだ!」
サラは笑顔でキッパリと即答した。




