第40話 タケノコ調理にチャレンジ
得体のしれない土付きの物体が山盛りであり、その奥のほうでニンマリと笑う銀髪で色白の青い瞳をした3歳児がいたらどう見えるか?
聖獣たちは不気味な光景にブルッと震えた。
「なんでよ⁉」
プンスカするサラに、クロが恐る恐る言う。
『だってサラが気持ち悪い……』
「気持ち悪い言うなっ」
速攻クロへと突っ込むサラに、シローネがタケノコに鼻を寄せて嗅ぎながら興味津々といった様子で聞く。
『クンクン。「コレ、なぁに?』
「タケノコだよ」
『えっ⁉ コレが⁉』
シローネが驚いて体を後ろに引いた。
白いウサギは大きくても、驚いても、後ろに仰け反っていても可愛い。
『コレがタケノコだって?』
バーンズが不審そうな目で見ながら匂いを嗅ぐと、驚いた様子で体を後ろに引いた。
『本当だ。タケノコの匂いがする』
クロも寄ってきてクンクンと匂いを嗅いだ。
『ホントだー。タケノコの匂いー。でもボクたちの知ってるタケノコと全然違うね』
『そうだねー。随分とちっこい』
ピカードが大きな手の爪の先でチョンとタケノコを突いた。
『でも美味しそうな匂いがする』
ボソッと銀色オオカミが言うと、聖獣たちはウンウンと頷いた。
「でしょー? コレを料理して食べられるようにしまーす」
『えっ⁉ タケノコを食べるの⁉』
クロが驚いて言えばシローネも『嘘でしょ』と言いながら引いている。
他の聖獣たちも興味はありそうだが、食べ物という認識はないようだ。
「わたしの転生前の国では余裕で食べてましたー。一般的な食べ物でーす」
(とはいえ、タケノコはあく抜きが必要とか色々大変だったよーな気がする)
料理すると大口叩いたけれど、社畜OLをしていた沙羅がタケノコを調理するような機会はなかった。
(あく抜き……)
サラがどうしようか考えていると目の前にパーンとゲームのステータス画面のようなものが浮かび上がった。
「おおっ」
1人驚くサラを、聖獣たちは不気味そうな表情を浮かべて少し離れた所から見ている。
(この画面は他の生き物からは見えないみたい。えっと……あ、タケノコのあく抜き方法が書いてあるっ。ぬかで煮るんだねぇー。ふむふむ。重曹や米のとぎ汁も使えるんだ。でも煮るの面倒だから魔法でポンッ)
やり方が分かれば、魔法を使うのも簡単だ。
サラは聖力を魔力に転換しつつ、タケノコのあくを抜いていく。
皮もむいて、ゴロンとむき身のタケノコが転がっていくのを見て、サラは気付いた。
「あっ、いけない、いけない」
慌てて無限収納庫から長いテーブルをだし、その上に大きなガラスのボールを置くと、そこへタケノコを入れていった。
『あっ、いい匂い』
クロが鼻先をクンクンと動かしながら言うと、横でバーンズとシルヴィがウンウンと頷いている。
『匂いはいいけど……本当に食べて大丈夫なのかしら?』
シローネは疑いの眼差しであく抜きの終わったタケノコを見つめている。
『毒見役は任せて』
『ピカードは何食べてもお腹壊したりしないでしょ? 意味ないわ』
シローネはピカードに突っ込んだ。
あく抜きしたタケノコを前にざわつく聖獣を前に、サラは胸を張って宣言する。
「はっはっはっ。お待ちなさい、皆の衆。タケノコ料理はココで終わりじゃない。ココからが始まりなんだ! ちょっと待ってて」
画面にはレシピが次から次へと流れていく。
(レシピと魔法があれば、わたしは無敵!)
サラは聖力を魔力に転換しながら、次から次へと気になるレシピを試していった。
茹でたタケノコにオカカと醤油をかけた物や甘みそをかけたもの、甘辛の煮物にタケノコご飯、タケノコのお味噌汁にクリーム煮、チンジャオロースにバター炒め、メンマに白和えと様々な物を作ってはテーブルの上に並べていく。
いい匂いが森を漂っていくのを、聖獣たちは鼻で追っていくが、その目は期待に満ちつつも懐疑的だ。
サラはフフフと笑いながら出来上がった料理を前で両手を広げ、聖獣たちへ勧めた。
「ほらほら、美味しそうでしょ? 食べてみて」
聖獣たちは恐る恐る料理を覗き込むと、それぞれ気になった物を手に取った。
クロが手に取ったのはチンジャオロースだ。
肉球のある手に器用に箸を持ったクロは、タケノコとピーマン、そして豚肉をつまんで口に運んだ。
1回、2回と咀嚼して、黒い目が真ん丸になる。
『えっ⁉ これ美味しいよ、サラ』
「うんうん、そうでしょ、そうでしょ」
サラは得意げに小鼻を膨らめて胸を張った。
「クロはチンジャオロースが気に入ったみたいね。そっちのクリーム煮には鶏肉も入ってるから、好きかもよ?」
『鶏肉かぁ。どうかなぁ』
首を傾げながらも、クロはサラの勧めに従ってクリーム煮に手を付けた。
そしてまた、黒い目を真ん丸にしている。
(気に入ったみたい)
サラがクロを見てフフフと笑っていると、シローネが驚いたように呟くのが聞こえた。
『え? 何、コレ。美味しい~』
「うんうん。美味しいでしょ~、タケノコ。お醤油や甘みそかけただけでも美味しいのよねぇ~」
シローネは、茹でて甘みそをかけただけのシンプルな料理を口にして、目を丸くしている。
「それが口に合ったなら、他のもイケると思うよ?」
『ねぇ、サラ。ボクが食べてるコレは何?』
ピカードが自分の手元とサラを交互に見ながら聞いてきた。
「それはねぇ、春巻き」
『春巻き美味しいねぇ。春を巻いてあるからかなぁ~』
(なにそれ、表現カワイイ~)
バーンズとシルヴィは、タケノコのうま煮を競うようにして黙々と食べている。
(なんといっても【うま煮】だもんねぇ。美味いよねぇ。皆タケノコ料理が気に入ったようで何より)
サラはタケノコの天ぷらをパクリと食べて(胃もたれしない胃袋サイコー)と思った。
山ほど作ったタケノコ料理は多少残ってしまったものの、初めての挑戦にサラは大満足だ。
片付けを終えて食休みを終えた一同は、再び【春のキノコ・タケノコ祭り】を楽しむのだった。
(明日の出勤も、サービス残業の心配もない生活サイコー)
サラは力尽きるまで遊び倒した。




