第36話 聖獣の森で遊ぼう 3
ヨダレは垂らしてない。
ピカードの背中は汚れていないから確かだ。
とはいえサラには浄化の加護もかかっていて汚れない仕様になっているから、ピカードの背中が汚れていないことがヨダレを垂らしていない証明にはならない。
むろんそこは無視である。
聖獣たちは、森の中のちょっと開けたところで止まった。
(土の見えてるところが広いけど、普通に森だね? でもなんだかポップコーンみたいな美味しそうでいい匂いがする!)
「うわぁ~、ここなに?」
『ここがキノコとタケノコの自生地だよ』
サラの問いに、クロが何故聞かれているのか分かりませんが? とでもいうようなキョトンとした顔で答えた。
「えっ⁉ だってココは……」
サラは空を見上げた。
草原ほど広いスペースではないものの、空が見える程度には木々が離れている。
木々の葉は茂っているが、枝と枝も離れているからしっかりと日差しが入ってきていて明るい。
もともと聖獣の森は木と木の間隔が開いているので、それなりの広さがあるということだ。
「キノコって暗くてジメジメした所に生えるものじゃないの? ココは太陽がしっかり見えるほと日差したっぷりだし、風も入ってくるから湿気も溜まってないよ?」
『別にキノコはジメジメしてなくても、明るくても生えるよ?』
クロはキョトンとしたまま言った。
他の聖獣たちもウンウンと頷いているから、ココの常識では明るくてカラッとしていてもキノコは生えるものらしい。
(キノコは、わたしのいた世界とココでは常識が違うとして……)
サラはキョロキョロと周囲を見回した。
「タケノコが生えるというけど、竹が見当たらないよ?」
(タケノコというからには、竹は必要だろ?)
サラの純粋な疑問に、バーンズが答える。
『竹はアレだ』
バーンズがアゴで差す先を、サラは目で追った。
すると木々の間からズドーンとデカい竹が生えていた。
「なに……すごっ。コレ、世界樹?」
天高くそびえて生える竹は太い茎を持っていた。
「青っぽい幹だな、とは思ったけど……普通の木だと思ったぁ」
『節があるだろ?』
「それは、よく見たら節があるのは分かるけど……ほかの木の幹よりも太いのが茎とは思わないよぉ」
バーンズに言われて、サラは突っ込みを入れた。
(聖獣の森、半端ない。竹が竹じゃないよぉ。細くて沢山生えているイメージなのにぃ)
『でもさー、上の方見てよ。ちゃんと笹のついた枝が生えてるでしょ?』
「確かに」
クロに言われてサラが上を見ると、笹の葉がサラサラと鳴っていた。
ただ笹と言われないと分からないほど大きい。
サラであれば船にすることも、布団にすることも出来そうだ。
「笹寿司にされそう……」
『ん? 笹寿司ってなぁに?』
ピカードが顔だけサラに向けて首を傾げた。
(かわいい。デカいクマなのに、質問するだけで可愛いとか、お得だな?)
サラはニコニコしながら解説する。
「笹寿司はねぇ、笹で包んで作るお寿司だよ。酢飯を笹の葉で包んで押して作るの。具は色々なんだけど、キノコを甘く煮たのを入れたりもするよ。押し寿司だから、ちょっと固めのお寿司~」
『固めなのか……』
何故か残念そうに銀色オオカミが呟いた。
「ん。でも笹の葉で包んであるから、お箸がなくても食べられるよ。楽ちん」
『それはいいねぇ。楽しみ~』
(和む~。間延びした呑気な喋り方だけど、本気で楽しみにしていそうなデカいクマの存在に癒されるぅ~)
サラがほのぼのとしていると、頭の上でオカメちゃんが「びきゃー」と鳴いた。
バタバタしているオカメちゃんに誘導されるようにサラが頭を動かすと、視界にキノコが飛び込んできた。
(第一キノコ発見! だけど思ったのと違うっ!)
木の下にクッションのような冗談みたいに大きなキノコが見えた。
大きくてピンク色の傘には黄色の水玉模様。
軸は紫色だ。
(アレはどうやって食べるんだろう? ていうか。そもそもあんな毒々しい見た目のキノコ、食用じゃないよね?)
サラは口元をヒクヒクと軽く痙攣させた。




