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第33話 王子は聖女を守りたい

 後方支援の救護班が適切な処置をしてくれたにもかかわらず、イザベルは意識を失ったままだ。

 速やかに王都へと連れ帰り、病院で本格的な治療も受けた。

 今は病室のベッドへ寝かされている。

 医師の見立てによれば、魔獣による傷だけでなく聖力の枯渇による影響も大きいらしい。

 ミハイルはベッドの横に置いた椅子へ座り、心配げにイザベルを見つめていた。


(イザベル。君を救うために、私には何ができるだろうか?)


 病室にいてもミハエルにできることはない。

 ミハエルは愛しい聖女の右手を取ると、その甲に軽くキスをした。

 

(温かい。今なら彼女は、まだ生きている)


 彼女を助けると強く心に誓ったミハエルは椅子から立ち上がると、音を立てないようにそっと病室を後にした。


 ミハエルが会議室に入っていくと、中にいる人々の視線が一斉に彼へと向けられた。


「イザベルの護衛はどうなっていたんだっ⁉」


 ミハイルは会議室の机の上バンッと手のひらで叩きながら叫んだ。

 護衛たちはすくみあがるだけで、まともな返事はない。

 宰相が間に入るように言う。


「まぁまぁ王子。そう強く叱らないであげてください。王都を魔獣から守る必要があるのですから、聖女の護衛が手薄になっても無理はありません」


 大神官は椅子に座ったまま、ヘラヘラと不気味な笑みを浮かべていた。

 ミハエルは大神官をキッと睨んだ。


(さてはこいつも一枚噛んでいるな? タヌキがっ! 卑怯な策をとっても、サディア公爵の娘が王妃なることなど絶対にないっ!)


 貴族令嬢に決められることは限られる。

 だから場違いな場所にいるからといって怒鳴りつけるのは筋違いだ。

 親の命令に従っているだけであろうサディア公爵の娘アウラに罪があるわけでもないが、チラチラとこちらを見てくるのすら腹が立つ。


 ミハエルはアウラに冷たく言う。


「アウラ嬢。貴女には関係のないことだ。会議室から出ていってください」

「でも……」


 もじもじとして去る気配のないアウラに悪意があるわけではない。

 それを理解していても、イラつくのは仕方ない。

 ミハエルが本気で睨むと、アウラは冷や汗を流しながら会議室から出ていった。


(大神官も、宰相も、父上さえも、イザベルの死を願っているのか⁉ そうならば私の立場でも動かせる駒はそうない。信頼できる友人に頼るのも、相手の立場を考えたら無理だ。どんな不利益を与えてしまうか分からない。だが、このままでは本当にイサベルを殺されてしまう)


 ミハイルは机の上にある地図を睨みながら、頭の中では全く違うことを考えていた。


(どうすれば召喚した聖女さまをこちらへ呼ぶことができるだろうか?)


 この国では魔法ならば誰でも使える。

 王太子であるミハイルは、それなりの魔力量を持っているし、もちろん魔法を使うことができた。


(そういえば大神官は、神殿のシステムを弄って召喚される場所を森に変えた、と言っていたな? それを利用できないだろうか?)


 ミハイルは机を睨みながら、どうすればよいのかを思考を巡らせていた。

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