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第29話 聖獣の森見学会 1

 聖獣の森の朝は早い。

 イメージとしては草原の端のほうに建てた家ではあるが、厚手のカーテンもレースのカーテンも開けっ放しで寝たため、日差しは容赦なく入ってくる。


「うぅ~ん……」


 サラは朝日を感じて目覚めた。

 

(朝だー。なんかスッキリしてるぅ~。よく眠れたけど、寝坊しちゃったかな? いま何時だろ? 遅刻しちゃう……)


 一瞬だけ焦ったが、自分の小さな手が視界に入ってハッとする。


(あ、大丈夫。遅刻関係ない。ここは異世界だから、会社行く必要ないっ)


 サラは温かくでよく動くモケモケの毛皮の上から上半身を起こした。

 頭の上でオカメちゃんが「ぴぎゃっ?」と鳴く。

 それを合図に他の聖獣たちもモゾモゾと起き始めた。


「おはよー」

『おはよー、サラ』


 聖獣たちは朝の挨拶をしては欠伸をしたり、伸びをしたりと忙しい。

 お洒落なシローネは、サッと全身に浄化魔法をかけて身支度を整えている。

 聖獣たちは舌を使って身づくろいする者が多い。


(全身舐めたら臭くならないのかな?)


 そんなことを思いながら、サラがボーッと聖獣たちを眺めているとピカードのお腹がグゥゥゥゥゥゥゥゥと盛大に鳴った。


『お腹空いたぁ~』

『それは皆、そうじゃない? サラもお腹空いたよね?』

「うん」


 社畜時代は空腹を感じて朝食を摂るようなことは少なかったが、異世界に来てからはキチンと朝もお腹が空く。


(健康的!)


 3歳児のサラの体は、とても元気なようだ。


「お腹が空いたなら、無限収納庫を開けようか?」


 女神は太っ腹なので、昨日食べた分は既に補充されているだろう。

 まだ食べたことがない目新しい朝食メニューもあるかもしれない。

 サラはワクワクしながら聖獣たちに聞いた。


『雨も止んだし、森へ行かない?』


 クロの提案に、他の聖獣たちも頷いた。


『そろそろ森が恋しい。サラのくれるご飯も美味しいけど、森のご飯も美味しいから』


 ピカードが言えば、シローネも頷く。


『そうよね。森は空気も違うし、美容にもいいわ』

『我々は聖獣だから、たまにニンゲンの生活を味わうのは面白いけど、基本は森だな』


 バーンズが言うと、隣でシルヴィもコクコクと頷いている。


『それに。そろそろサラにもらったご飯も木になってる頃じゃない?』


 クロの言葉に聖獣たちは頷いている。


「ご飯が木になる?」


 サラは全身を使って首を傾げた。

 オカメちゃんの足がガッと銀髪を力強く掴む感触がする。

 この鳥、頭から下りる気ねぇな? と思いつつ、サラは聖獣の森への興味をかきたてられた。


『じゃ、森へ行こう!』


 クロの号令で、皆はサラの家を後にした。

 森は家の目の前である。

 

(見えてるのに遠い。なんだココの遠近感)


 サラの体が3歳児サイズということもあり、トコトコと一生懸命歩いてるのに、森へ着かない。

 

(疲れてきた……)


 トコトコがトボトボに変わりつつあったサラの足元から地面が消えた。


「うわっ?」


 グッタリしてきたサラを、ピカードが軽く加えて自分の背中に向かって投げたのだ。


『ボクの背中に乗ってけばいいよ』

「ありがとう、ピカード」


 モケモケの上は温かく手柔らかくて最高だ。

 オマケに歩かなくても森が近付いてくる。


「最高っ!」

『うふふ。喜んでくれて何より』


 ピカードの背中でご機嫌のサラに『次はボクが乗せてあげる』とクロが言えば、『大きくなった時なら乗せてあげてもいいわよ』とシローネが言う。

 バーンズが『私にも乗ってくれていいぞ、サラ』といえば、その隣でシルヴィが頷いた。


「ありがとう、皆。疲れちゃった時にはお願いするね」


(皆やさしー)


 サラはモフモフの背中に乗りながら、ご機嫌で聖獣の森へと入っていった。

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