第26話 聖獣の森・住宅展示場内覧会 2
サラは女神にもらった家を見て回ったが、住宅慣れしていない聖獣たちから飛び出る質問は意表をついてきてびっくりする。
『サラ。この四本足の物はなんだ?』
「ん、それは椅子だよ、バーンズ」
『このフカフカのヤツは、なぁに?』
「ん、それはクッションだね、ピカード」
小さな家なのに説明することが沢山あって、サラはびっくり疲れしそうだった。
『これが天井で、これが床』
クロは上を見たり、下を見たりしている。
目をキラキラさせていて、とても楽しそうだ。
『あー、この階段っていうの、楽しい~』
白ウサギのシローネは、階段をピョンピョン上ったり下りたりしている。
蹴込み板がない風通しのよいタイプの階段なので、シローネが隙間から落ちたりしないか、サラは冷や冷やしながら見ていた。
そうこうしているうちに、窓の外が暗くなり、屋根を叩く小さな音と湿った空気の匂いがしてきた。
サラと聖獣たちが、わいのわいのと内覧会をしているうちに雨が降りだしたのだ。
「凄い、クロの天気予報当たった」
『へへへっ。褒められちゃった』
サラが掃き出し窓の大きなガラス越しに空を見上げて驚きの声を上げると、クロは照れたように笑った。
(窓を開ける前でよかった。慌てて窓を閉めて回る必要がないもん)
サラは雨を眺めながら思った。
だが前世で29歳まで生きた人間として、新築物件で空気の入れ替えに気が回らなかったのは、いかかなものだろうか。
(大丈夫、大丈夫。ここは聖獣の森だもん。元いた世界とは違うしぃ~)
そこはさりげなく無視することにサラは決めた。
『でも、これじゃ森へ行けないね。サラを案内したかったのに』
クロが残念そうに言った。
本当は内覧会が終わったら、森へ行く予定だったのだ。
「晴れたら案内してよ。森は逃げないから」
『フフフ。そうだね、森は逃げないね。面白い言い方するよね、サラは。じゃ、晴れたら案内するね』
「うん。楽しみにしてる~」
サラとクロが窓の外を眺めながらワチャワチャしていると、グウゥゥゥゥゥゥゥという大きな音が家中に響いた。
振り返るとピカードが、無垢材を使った床に、へにょんと座り込んでいた。
『お腹空いた』
ピカードはそう言いながら潤んだ瞳で憐れっぽくサラを見ている。
サラは部屋の真ん中にある大きなテーブルを見た。
体のサイズを小さくしている聖獣たちが皆座れるだけのスペースがある。
サラはちらっとキッチンへと視線を向けた。
アイランドキッチンは使われない。
これはサラの勘だが、多分当たる。
無限に補充されて、皿に盛りつけられた状態のごちそうが出てくる便利アイテムがあるのに、自分で料理なんてするか?
いや、しない。
(でもサラはまだ3歳児だし。大きくなったら料理したい気分になるかもしれない)
いや、ならない。
サラは無言で無限収納庫を開けた。




