第25話 聖獣の森・住宅展示場内覧会 1
丸太。レンガ。煙突に三角の屋根。
玄関への上がり口には三段程度の石階段。
大きなウッドデッキには、椅子代わりのブランコがある。
(おおお! 北欧風のログハウス! いや、ログハウス風の家? そもそもログハウスってなんだっけ?)
サラは関係ない所で混乱しつつ、初めて手に入れたマイホームをキラキラと輝く瞳でみあげていた。
自然と手を握り込み、胸の前あたりでブンブンと振っている。
隣ではクロが尻尾を振っているが、サラには振れる尻尾がないので仕方ない。
オカメちゃんでさえ羽繕いの終わりには尾っぽをプルンと振るのだ。
尻尾のないサラがブンブンと両手を拳にして胸の前でブンブン振るくらいのことは許してほしい。
『わーニンゲンの家だー。凄いねー』
クロの感動ポイントも微妙にズレているが、聖獣なので問題はない。
「これで雨露凌げる!」
3歳児にしては言葉のチョイスが渋いサラへの突っ込みもない。
ここは聖獣の森。
サラの周りには人間はいないので誰も突っ込むことはなかった。
それよりも彼らには気になることがある。
『ねーねー。ニンゲンの家って、中はどうなってるの?』
『あー、ワタシも気になるー』
ワクワクするクロにつられるように、ほかの聖獣たちも興味津々といった様子で大きくなった小さな家を見つめている。
家の外壁は丸太だ。
ナチュラルな色合いが森の色とマッチしている。
ところどころに使われている赤っぽいレンガも、くすんだ赤の屋根も、自然の色と馴染みがよい。
窓もガラスがはまっているタイプだ。
(これは中も期待できるのでは?)
サラは勢いよく右手を空に突き上げて宣言する。
「では内覧会を始めますっ! 聖獣の皆さまは、わたしの後ろへ一列になってついてきてくださいっ」
短い指をキチンと揃えた右手を腕ごと真っ直ぐに上げた3歳児の銀髪の頭の上では、オカメちゃんが「ぴぎゃっ」と鳴く。
背筋を伸ばして元気よく先陣を切るサラの後ろからは、聖獣たちがゾロゾロと続いた。
大きくなった小さな家の入口は、少し大きめではあるがニンゲンの家サイズの玄関だ。
聖獣には少し狭い。
(あ、これだとピカードとかは入ってこられない?)
ちょっと不安になったサラが玄関の前で止まって後ろを見ると、遠近感のバグるような光景が広がっていた。
「あれ? サイズが……」
『ん、ボクたち聖獣は体の大きさを自由に変えられるんだ。草原は広いから本来のサイズだったの。あとね。聖力や魔力がなくなってくると勝手に体が縮んだりするよ』
「そうなんだ。なら大丈夫だね」
クロの説明にホッと息を吐いたサラは、改めて正面に向き直り、玄関を開けた。
「わぁ……」
サラの前には匠の技で作られた、壁や床、天井や階段がバーンと広がっている。
「すごっ……木の香りがたまらない」
『ん? 森のほうが木の香りは……』
と言いながらサラの後ろから入ってきたクロもピキリと固まる。
『え⁉ ナニコレ、ナニコレー⁉』
白ウサギのシローネも、感嘆の声を上げながら呆然としている。
『おお。削りだした木の香りが気持ちいいな』
クロが床でぴょんぴょん跳ねながら聞く。
『ねーねーサラ。コレなんていうの?』
「床」
『上にあるのは?』
「天井」
『この段々になってるのは?』
「階段。お、二階にベッドがある」
『えー、ベッドってなにー?』
クロが【どちて坊や】化して興味津々に色々と聞いてくる。
普段ならしつこく感じる質問攻撃も、サラ自身がとても興奮しているので気にならない。
ほかの聖獣たちも、自分では質問しないが興味深そうにサラの答えを聞いていた。
だだっ広いリビングにはデカい机に沢山の椅子。
アイランドキッチン付きだから料理も可能だ。
バルコニーに隣接している掃き出し窓には大きなガラスがはまっていて、外が良く見える。
開放的な作りのログハウスだが、レースのカーテンはもちろん、厚手の遮光カーテンもついているから必要に応じて使い分けることが出来そうだ。
室内のデザインはもちろん、照明も、ファブリックも、家具も全てが可愛くて快適そうなものが揃っていた。
「女神さま、ナイスセンス!」
サラは女神を褒め称えながら、キョロキョロと新居の確認作業を進めた。




