第22話 あつまれ聖獣の森 11
食後はダラダラと過ごすにかぎる。
サラはオカメちゃんを銀髪の上に乗せて、ピカードの腹の上をゴロゴロしていた。
「ゴーロゴロゴロ。ゴーロゴロゴロ」
効果音も自前でつけてみる。
両手両足を伸ばしても余裕でゴロゴロできるピカードの腹の上は優秀だ。
人をダメにするソファの上をゆくかもしれない。
サラは29歳まで人間の女性として生きた前世を半ば忘れ始めていた。
(大人のプライドがなに? 楽しければいいのよ。楽しければ。今のわたしはサラちゃん3歳なんだから!)
ゴロゴロと転がるサラの銀髪に絶妙な足運びで付いてくるオカメちゃん。
波乗りならぬサラ乗りである。
(よく飛んで行かないなぁ。潰さないように気を付けなきゃ)
サラなりにオカメちゃんに気を使いつつ、ゴロゴロ転がることを止められない。
(だって楽しいんだもん)
ピカードからも苦情は出ない。
時折、くすぐったそうに笑うだけだ。
(おだやかなクマさん。クマのピカさん。このサイズのぬいぐるみが入る家、日本にはめったにないよねぇ。入るとしたら、体育館とか?)
などと埒もないことを考えながら、ついでに横で寝そべっているクロもモフる。
ぬいぐるみのように抱っこしたいところだが、サラの体は3歳児のソレで、クロの体は成獣の黒豹に近い。
中身は綿ではなく、しっかりとした何かが詰まっていて重い。
とてもサラに抱えられるようなサイズでも重さでもないので、仕方なく小さな手を黒い毛皮に差し込んでモフモフと撫でている。
時折、クロの上もゴロゴロと転がりながら通り過ぎてみたりしているが、怒られもしないのでなんとなく乗っかったりしている。
ちょうどサラがクロの背中あたりにゴロゴロと転がっていった時に、クロがムクリとピカードの腹上で起き上がった。
コロコロとクロの背中から転がり落ちたサラだが、落ちた先はピカードの毛皮の上なので痛くはない。
サラがクロを見上げると、黒豹は空に鼻を向けてクンクンと動かしていた。
「どうかした?」
『サラ。今夜あたり、雨が降るかも……』
「あっ、それはマズイッ!」
サラはガバリと起き上がった。
「家をどうにかしないと!」
高い所からピカードが呑気に言う。
『サラァ~。雨が降っても、森の中ならそんなに濡れないよぉ?』
『そうだよ、サラ。森へ行こう』
クロも森を推薦している。
『木の下なら水滴はそんなに落ちてこないし、なんならボクたちの間に潜り込んでいればいいよ』
クロの提案にサラの心は少し揺れた。
(森の中でモフモフたちと雨宿り。なんてファンタジック。それってどんな童話?)
ふわふわとした気分になったサラだったが、すぐに冷静になってスンとした表情になった。
インドア派としては、雨の中の野宿はちょっと超えたくないハードルだ。
「やっぱ無理。家建てる」
サラはゴロゴロっと転がってピカードの腹から下りると、家を建てるべく女神から与えられた無限収納庫をゴソゴソと漁り始めた。




