第2話 社畜OLは結婚したが不倫され離婚!
現代社会において結婚は幸せのゴールなんかじゃない。
人によっては地獄の入り口だ。
「はぁ、酷い目に遭った……」
望月沙羅は、無事に木村沙羅へと戻って役所を後にした。
「離婚してスッキリだわ。仕事も辞めたし。スッキリ、スキッリ」
新卒で入った会社は壮絶なブラック企業だった。
あんな男と結婚してしまったのは、心身ともに疲れていて思考力が鈍っていたせいかもしれない。
沙羅は職場で出会った取引先の望月と恋に落ちて結婚した。
木村沙羅は望月沙羅になった。
ブラック企業の取引先もブラック企業。
忙しいけれど収入はそれに見合わない。
それがブラック企業だ。
望月の収入だけでは生活していくことはできなかったので、沙羅は寿退社できなかった。
それでも2人、力合わせて生きていけたら。
そんな風に思った時期が沙羅にもありました。
共働きだから家事も分担ね、という約束は守られるわけもなく。
沙羅はブラックな労働に加えて2人分の家事によって疲弊していった。
2馬力で働いているというのにお金は貯まらず、沙羅の体には疲労が蓄積していった矢先、旦那の浮気が発覚する。
別のブラック企業で働く女性というのは沙羅と同じだが、浮気相手のほうが若見えの年上だ。
1万歩譲って素直に謝罪するような夫や浮気相手だったら、沙羅だってもう少し穏便にやったかもしれない。
あろうことか、夫も、浮気相手も、開き直って沙羅に「女捨ててる」だの「年寄り」だの罵り始めた。
夫に至っては「結婚したのは慈善事業」とまで言い放った。
沙羅の中で何かがブチッとキレた。
離婚だ、離婚!
即断即決、そこからの動きは早かった。
離婚はスピーディに行われ、元旦那とその浮気に慰謝料請求もした。
「ふふ。心はズタボロだけど貯金は増えたわ」
沙羅は自虐的に笑う。
でもこの程度でめげる沙羅ではない。
それぞれから沙羅の年収よりも高額の慰謝料をもらったのだから、あんなクズたちは忘れるに限る。
「引っ越しは月末までに済ませればいいし。会社は辞めたけど失業手当は出るし。再就職先がすぐに決まらなかったら、当面は派遣でもいいか。貯金増えたし」
懐が温かいと心が冷え切っていてもなんとかなるものだということを、今回のことで沙羅は学んだ。
2人で暮らした部屋へと1人で帰るのは寂しいが、沙羅の足取りは軽い。
「いまどき1回失敗したくらいでめげる必要ないもんねー。できれば再婚して、子どもが欲しいなぁ~」
色々なものから解放された沙羅の心は、未来への希望で満ちていた。
そんな時である。
黄色のボールがポーンポンと跳ねながら現れた。




