第19話 あつまれ聖獣の森 9
(人生初の野宿。成功してしまいました)
サラはパッチリと目を覚まし、天井の代わりに広がる青空を見上げて呆然とした。
「スッゴイ、スッキリ……」
前世では赤ん坊の時にすら感じたことがなかったであろうスッキリ感である。
だが野生児感半端ない。
(わたし、アウトドアいけたんだ……)
サラは謎の衝撃でダメージを受けた。
パチパチと目を瞬かせて、冷静に考えてみる。
(いや、この世界ではメリットがある体質に変わったということだから、よいことではあるけれど……現代人としてのプライドがぁ~。わたしのアイデンティティーがぁー)
動揺するサラの横から機嫌のよい声が響く。
『おはよー、サラ。よく眠れたみたいでよかったよ』
隣を見ればモッフモフの黒豹がニコニコしている。
この黒豹は喋るし、愛想がよい。
白ウサギやバンビ、オオカミもモゾモゾしながら目覚めたようだ。
しかも今、サラが寝そべっているのはモッフモフのデカいクマの上である。
なんとファンシーでハッピーな状態だろうか。
低賃金サブスク社畜で目の下にクマを飼っていた状態とも、不誠実なくせに家事と生活費を求めていた夫とも、年上なのにオバサン呼ばわりしてくる夫の不倫相手ともオサラバしたのだ。
(なんという解放感!)
両親は健在だから、早々に死んでしまって親不孝してしまった。
それが心残りかといえばそうでもない。
(何しろ弟万歳、女は引っ込んでろ、って感じの家だったからな。そもそも夫の浮気が原因なのに「世間体がぁ」とか言うような親だもん。老後の面倒なんて、誰がみるかバーカ。生命保険の受取人は両親だから、それで我慢してもらおう)
サラは色んな意味で吹っ切れた。
「おはようございますっ!」
思わずサラはバカデカボイスで朝の挨拶をした。
(あ、今生での初めての『おはようございます』だ!)
『おはよぉ~、サラ』
ピカードのゆったりボイスが上の方から降ってくる。
(ふふふ。朝の挨拶はしたけど、ここから起き上がりたくなーい)
サラはゴロゴロとピカードの毛皮の上を転がった。
頭の上では「びぎゃっ」と鳴きながらオカメちゃんも転がっている。
『えー、なにそれサラ~。ボクもやるぅ~』
クロも毛皮の上をゴロゴロと転がりだした。
『ちょっとぉ~、それ、くすぐったーい』
ピカードのお腹がクフクフ笑った拍子にデコンボコンと大きく揺れた。
サラたちの体もデコンボコンに押し上げられたり、落っこちたりしながら揺れる。
朝の出勤準備もしなくていいし、朝ご飯の心配もいらない。
掃除も、洗濯も、お金の心配もいらない。
上司や同僚の顔色を窺う必要もないし、両親からの仕送りの催促にムカつく必要もないし、夫の機嫌をとる必要も不倫相手の存在に腹を立てる必要もない。
クスクス笑いながらサラは思う。
(最高!)




