第17話 あつまれ聖獣の森 7
聖獣とは何だ?
サラはちっさい額にシワを寄せ、周りの状況を眺めた。
クロとピカードはハンバーグに夢中だし、デカい白ウサギはエビのカクテルやスモークサーモンの乗った小洒落たサラダを上品に食している。
オッサンくさい小鹿ちゃんは、カラスミとキャベツのパスタが気に入ったようだ。
銀色オオカミは黙々とステーキを食べている。
オカメちゃんに至っては、両方の翼で抱えるようにして雑穀入りのおにぎりを食べ始めた。
梅干しが気に入ったようで、酸っぱい顔の小休止を入れながらガツガツと食べている。
聖獣たちの食欲につられて、サラもパクパクと食べ続けている。
3歳児の食欲なのか、前世に食べそびれてた分を取り戻そうとしているのか分からないが、サラ自身がビビるほど食べ続けている。
ハンバーグにカレーライス、鶏のから揚げやトンカツ、ステーキも、エビのカクテルも、サーモンや伊勢海老も美味しいのは美味しい。
(吸い込まれるように食べ物が自分の体に消えていくな?)
3歳児の小さな体に入るのが不思議な量を食べ続けているのに、次の食べ物を口に運ぶとやっぱり美味しい。
(満腹という概念が、この世界にはないのか?)
サラは疑問に思った。
疑問は色々とあるが、今現在気になっているのは――――
「聖獣に禁忌はないのか?」
『禁忌?』
クロが聞いてきたので、サラは答えた。
「わたしが元いた世界では宗教上の理由で食べられない物があったりしたから、聖なるものである聖獣も「不殺生」の思想があって、肉食は避けるのかと思った」
『ん~、あんまり考えたことない』
クロはハンバーグを口に運びながら答えた。
「そうなんだ」
『あー。循環システムが人間のシステムとは、ちょっと違うからかもしれない』
オッサンくさい小鹿ちゃんであるバーンズが説明する。
『この世界はサラがいた世界とは違って、魔法で動いてる。浄化魔法が良い例だ。聖獣の森ではトイレの概念がないくらいなんだ』
「え? どうなってんの⁉」
驚くサラにクロが説明する。
『浄化魔法をかけた時に、体のなかの不要な物も循環システムに飛んでっちゃうんだよ。だから食べた物は消化されて、必要なエネルギーを使い終わったら、勝手に循環システムの方へいっちゃうの』
「え? はっ?」
サラは首を傾げた。
『魔法の循環システムだ。こっちの世界でも人間たちは食べ物を作るのに土を使って色々しているようだが。ここ聖獣の森では我らの意識しないところで動いている。だから我々は、すぐに食べられる食料しか知らないし、トイレにも行かない』
「えっ? う、うん」
(なんかよく分からないが、便利なシステム採用ってこと? 女神さまぁ~。聖獣の世界、元社畜OLで不倫されちゃうようなタイプのわたしには、ついていくの大変かもしれなーい)
サラは混乱しながらトマトとモッツァレラチーズのカプレーゼを口の中に突っ込んだ。
『それはそうとサラ。無限収納庫は開けっ放しでいいのかい?』
「ふぁ?」
バーンズに聞かれたことの意図が分からず、サラは間抜けな声を出した。
『無限収納庫を開けっ放しにしていると、聖力も使いっぱなしになるから、かなり消耗すると思うのだが?』
「ふぁぁぁぁぁぁっっっ⁉」
(ちょっと待って? もしかしてさっきから食べ続けているのって、聖力の消耗が激しいから⁉)
『え? サラは聖力も、魔力もいっぱいあるから平気なんじゃなくて?』
『クロ。いくら聖力が沢山あっても無駄遣いしていいわけじゃないだろ? それに私が見た所、聖力はたっぷりあるが魔力はそれほどでもないぞ? 浄化魔法が使えるくらいじゃないかな』
デカい白ウサギが驚いて声を上げる。
『え⁉ それじゃマズイじゃないっ。魔力が枯渇したら、浄化魔法が使えなくなっちゃうわ。精霊の森にはトイレなんてないわよ?』
「あっぁっぁっあーーーーーーっ⁉」
シローネに言われて最悪の事態を招きかねないことに気付いたサラは大きな声を上げた。
(マズイ! トイレがないのはマズイ! 体のなかの不要な物が処理できないのは、マズイ―!!!)
サラは大急ぎで無限収納庫を閉じた。




