第14話 あつまれ聖獣の森 4
サラは近くにきたクロの仲間の聖獣たちを見上げた。
(可愛い~ふわふわ~デカいけどぉ~)
脳内には陽気で可愛いメロディーが流れている。
聖獣たちのサイズは、幼児だったら泣くサイズだ。
実際、サラの肩に乗っているオカメちゃんは、聖獣たちを見て固まっている。
ガシッと肩に食い込む爪が痛い。
(でも飛んで逃げて行かないところを見ると、オカメちゃんもココにいるつもりみたい。ならいっか)
サラは呑気に考える。
なんといってもサラには女神さまの加護があるのだ。
相手が悪魔や魔獣ならともかく、聖獣ならば怖くない。
(クロは元いた世界の黒豹サイズだったから聖獣がデカいイメージなかったよぉ。あ、でもクロは子どもだって言ってたっけ。もっと大きくなるのかなぁ。ウサギさんでもグリズリーサイズかぁ~。あーでもでも怖いより、触りたい欲が勝ってるぅ~。白いモフモフ~)
ぽわぁ~んと聖獣たちを眺めているサラに、クロが仲間の紹介を始めた。
『サラにボクのお友達を紹介するね。このウサギ型の聖獣はシローネって言うんだ。鹿はバーンズ。銀色のオオカミはシルヴィだよ。一番体の大きいのはクマのピカード。みんなぁ~。この子はサラだよ。よろしくね』
「サラでーす。よろしくおねがいします~」
クロの隣で、サラは座ったままチョコンと頭を下げた。
(はっ! いけない。今は3歳児の体だけど、わたしには木村沙羅として生きた29年の記憶もある。なのに座ったまま挨拶とか。ないわっ。ダメだわっ。これからお世話になるであろう聖獣さんたちに対して失礼でしょ⁉)
サラは慌てて立ち上がると、改めてペコリと頭を下げる。
肩にとまっているオカメちゃんも、固まったままピョコンと一緒に頭を下げる形となった。
『うむ。礼儀正しい子じゃな』
鹿のバーンズが落ち着いた口調で言った。
(挨拶しなおし正解! 鹿さんは小鹿ちゃんみたいな感じなのに。見た目が小鹿ちゃんなだけで、中身は大人みたい。体も大きいし、中身は大人でも、見た目が小鹿ちゃんだから可愛い。撫でたい。乗ってみたい)
『そうでしょ、バーンズ。サラはよい子なの』
クロはニコニコして言うが、座り直したサラの頭の中は煩悩で爆発しそうだった。
『そうよねぇ~。女神さまは好みがウルサイもん。こんなに加護がついてるお気に入りなら、よい子なのは当然でしょ』
『そうだね、シローネ』
ツンとした雰囲気で話す白ウサギにも、クロはニコニコしながら答えている。
(よい子なのはクロのほうっ! わたしはモフモフたちを愛でたくて、愛でたくて、仕方ないっ! 白ウサギちゃんはツンツンしてるなぁ。反抗期の女の子っぽい雰囲気。ツンデレちゃんだといいなぁ~。デレてくれるといいなぁ~。撫でたいなぁ~)
シローネは赤い瞳でキッと睨むようにサラのことを見ている。
(うっわ。目力つよ~い。無理~。わたし無理~)
サラは強い視線に耐えかねて、目をそらした。
視線を逸らした先では、銀色のオオカミがサラを見ていた。
『ん、よろしく』
「こちらこそよろしくおねがいします」
銀色オオカミのシルヴィは無口なタイプのようだ。
(睨んだり、吠えたりされたりしたわけでもないのに迫力が……)
そのせいかシルヴィにはサラの撫でたい欲は爆裂しなかった。
オカメちゃんは相変わらずサラの肩で固まっている。
その時だ。
地響きのような音がして、地が揺れた。
「ふわっ⁉」
サラが驚いて見た先には、山のようなクマがいた。
毛皮の色は薄茶色だ。
『ハハハッ。相変わらずピカードのお腹の音は豪快だね』
『ホント下品』
クロは無邪気に笑っているが、シローネは心底嫌そうに顔をしかめている。
『ん、そろそろ飯にするか。サラもお腹が空いただろう?』
見た目小鹿なバーンズが大人らしく提案した。
「言われてみれば、そうかも」
(バタバタしてて、ご飯どころじゃなかったから……)
サラは自分のお腹を見た。
オカメちゃんもサラのお腹を覗き込んでいる。
『じゃご飯にしよー。森のなかに色々あるから、好きなものを選べるよ』
「あ、ご飯なら女神さまが持たせてくれたから」
サラがそう言いながら無限収納庫をパカッと開けると『おおー』と聖獣たちが唸るように声を上げた。




