6-7.朝陽の戦い
アタシは、見覚えのある天井を見ていた。
「ここは――アタシの部屋、ね」
服装は向こうのメイド服のまま。所々破けている。
ジェシーに巻き付かれていた腕や、足にはアザ。正直かなり痛い。
「戦えないからって、なにも強制送還しなくてもいいのに……」
いや違う――。
「アタシにも、まだ戦いがあるじゃない」
自室のドアを勢い良く開け、1階へと降りて行った。
まずは台所――リフォームしたばかりで、最近のIHなどが搭載されたキッチンだと母が友人に自慢をしていた。
そこに――陰鬱な表情の父と、今にも泣きだしそうな母の姿があった。
「朝陽、お前!」
「どこ行ってたの!? その恰好はなに!?」
せめて第一声くらいは「無事だったのか」とか「心配してたのよ」くらいは言えないのだろうか。
「またそんな恰好で――なんだその傷は。まさか乱暴されたんじゃないだろうな!」
「警察の人も、近所にも迷惑かけて……お母さん、恥ずかしかったのよ!」
少しくらい反省したかと思った自分が愚かだった。
やはりこの両親には、娘に対する愛情なんて――。
「ほんとに……ほんとにお前は!」
父は私の両肩を、記憶よりもずっと細くなった指で掴んだ。
「どれだけ心配を……どれだけ」
「……」
父、これほど背が低かっただろうか――。
顔のシワがこれほど深かっただろうか――。
正面から近くで見た父の泣き顔は――初めて見た。
「あなた、もういいじゃないですか。無事に帰ってきてくれたんですから……」
「――ごめんなさい。お父さん、お母さん」
私も、多分。
まともに2人に謝ったのは、初めてじゃないだろうか。
「でも聞いて、2人共。アタシ、行かなくちゃいけないところがあるの」
「またお前は……」
「心配させてるのは本当ごめんなさい。でもね、今のアタシを必要としてくれている人達がいるの……」
肩を掴んでいた父を手を、握る。
「結局、お父さんとお母さんを騙した事になったけど……アタシは、もっと色んな人に必要とされたいの。見ていて欲しいの」
「……」
「必ずアタシは、2人のところに帰って来るから――それまで、待っていて欲しいの」
「……分かった。でも約束しなさい――次からは、どこに行くかちゃんと言ってから行きなさい」
「うん。行ってくるね、異世界に」
「…………ん?」
そして私は台所を出て――目の前に現れた魔法陣へと飛び込んだのだった。




