表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境王女の「勇者召喚」活用術 ~王女様、それは勇者様の無駄遣いでは?~  作者: 夢野又座/ゆめのマタグラ
第5幕 王女様は婚約破棄したい・前

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/29

5-2.婚約破棄しか勝たん


 それからいくつのかの雑談を交え、ギルベルト侯爵はウキウキした気分でお帰りになった。

 その後、アイラは自室で慟哭した。

 

「おっさんが婚約者とか、嫌すぎだわッ!」


 侯爵が帰宅し、日々の公務を終えてから自室に戻ったアイラは、ふかふかのベッドに寝っ転がりながら叫んだ。


「聞いてたでしょリーシャ! 私が最低でも9歳の時……場合に寄っちゃ、もっと前に一目惚れしたとか!」

「はい。おめでとうございます」


 一切の感情を感じさせない抑揚のない言葉で、アイラを祝福する。


「マジでキモい。あっ、日本じゃ本気の事をマジ、気持ち悪い事をキモいって言うらしいわよ」

「マジでございますか」

『良かったじゃねーか。侯爵の息子とか、じゃじゃ馬の嬢ちゃんにはもったいないんじゃねーのか?』


 ケラケラと笑う様にソロは宙を舞う。

 

「絶対イヤー!」

「しかし国王様が認めになり、アイラ様も侯爵様にお断りしなかったですよね」

「……お父様が認めてるからタチが悪いのよ! 私の意見なんかハナから無視よ無視」


 しかも相手は、王家にとっても恩人とも言えるギルベルト侯爵家。無下に断れる訳もない。

 せめて国王が反対してくれれば、それに乗れた訳だが――アイラに選択権は無いようだ。

 

「結婚式のブーケトスは、ぜひわたくしの方へ投げて下さい」

「結婚とかしたら、もう絶対自由に動けないじゃない!」


 魔術を使えない事になっている王女が、夜な夜な怪しい本を使って魔術で召喚をしていると知られれば――どんな混乱が起きるだろうか。


『でもどうすんだよ。侯爵様はウッキウキで王都に帰ったぞ』

「それよ」

『どれだ』


 アイラは腕組みをしながら、部屋の中をウロウロとする。

 

「侯爵様が王都に戻るまで1週間。いや、少し他の領地の様子を見てくるとおっしゃってたから2週間ほどかしら……まだ時間はあるわ」

『何をする気だ』

「こうなったら……全力で婚約破棄になるように動かせて頂くわ。ふっふっふっ」


 ◇

 

「はい第1回、どうたら婚約破棄して貰えるか考えましょうの会。パチパチパチ――」

「パチ、パチ、パチ」


 いつものように呼ばれた佐々木と藤花。

 2人とも帰宅中だったのか、制服姿のままだ。


「――それで、婚約破棄したいから知恵を貸せと」

「た、確かにそれは理不尽過ぎますね!」


 2人に事情を話した。


「まずはリーシャを送り込んで暗殺を考えたんだけど――」

「いきなり物騒だなオイ」

「侯爵様の御屋敷ともなれば警備は厳重です。わたしでも侵入にはいささか時間が掛かりますし、そもそもアイラ様のお傍を長期に渡り離れれば、必ず怪しまれます。そして、仮に成功してもアイラ様が真っ先に疑われます」

「リーシャが元暗殺者だって割と有名だし」

「知ってんだ」

「な、なんでリーシャさんは暗殺者を辞めて、メイドさんやってるんですか?」

「それは――」

「私が5か6歳くらいの頃、リーシャが暗殺しに来たのよ」

「ぶっ」

「えぇ!?」


 2人共、目を白黒させながらリーシャを見る。

 張本人は「別に……」みたいな顔をしているが。

 

「で、それを私が返り討ちにしてやったの」

「それもすげーな」

「あの頃のわたしは、まだ未熟でした。でも安心して下さい。今なら勝てます」


 グッと拳を握り宣言するリーシャが、どこまで本気なのか誰にも分からない。

 

「そういう問題か?」

「で、その時。お父様にお願いして、専属メイドにして貰ったの」

「許可する父親も父親だな」

「まぁリーシャに頼んだのは王族かその側近の誰かだろうし、あえて傍に暗殺者を置くとか逆に歓迎するわよ」


 さらっととんでもない事を口走るアイラ。


「な、なんか壮絶ですね……」

「ちなみにリーシャさんは知ってるのかよ、誰が依頼したとか」

「全くこれっぽっちも。すべて秘匿のまま暗殺ギルドに依頼されましたし、そんな王族を狙った暗殺をやらされるなんて大砲の砲弾扱いです」

「鉄砲玉か?」

「別にそこはどうでも良いわ。ともかく! オーランになんとか婚約を諦めさせたいのよ」


 しばらく皆が悩んだ後――おずおずと手が上がった。


「はい……」

「はいトウカ」


 自信無さげに手を組みながら、ソワソワしつつ発言する。


「こう……色仕掛けで、他の子に惚れて貰うとか……」

「残念だけど仮に惚れさせたとしても、その子は妾になるだけね。王族と貴族の婚約なんて、恋愛感情なんかでやらないの。メンツの問題なのよ」


 しょぼんとする藤花。


「はい」

「はいササキ」

「メンツの問題なら、その息子の評判を下げるってのは?」

「ふむ……具体的には?」

「えー……夜な夜な道端でしょんべんしてるとか、裸でうろついているとか嘘の噂を流すとか……」

「ボツね。侯爵家の信用と信頼は国民の間に根深く浸透してるわ。その噂流す工作ってのは時間もいるし、信憑性が無い噂なんか広まる事無く終わるわよ」

「そういうアイラはどうなんだ。なんか案無いのかよ」

「無いから、こうして相談してるんじゃない」

「開き直るんじゃねーよ」


『なんだいなんだい。3人寄っても大した案がでねーじゃねーか』


「うるさいわね。大魔導師様には、何か妙案でもあるっての?」

『あるぜ』

「マジで?」

『マジだマジ。今、嬢ちゃんが言ったように信憑性の無い噂は広がらねぇ。証拠は何も無いからな』

「ええ」

『だったらその証拠そのものを、国民の前で突き付けりゃいい』

「……つまり?」

『昔から上流階級の人間なんざ、民に言えない秘密の1つや2つ抱えてるもんだ』

「たしかに」

「じー」


 佐々木と藤花の視線がアイラに刺さる。


『それを証拠として抑える。方法は――』

「そうだスマホ! これなら写真撮る機能も動画もいけるし……いざとなったら前に通販サイトで見た、ペン型とかボタン型の隠しカメラも用意して……」

「じー」

「い、いや別に俺が使ってる訳じゃないからな! エロサイト見てたらそんな広告が――あ、いや、その」

「……不潔です」


 年下の女の子に軽蔑のまなざしで見られ、落ち込む佐々木。

 

「早く行動に移すわよ。もしギルベルト侯爵が戻れば、問題を起こしたとしても握り潰されるわ――」


 アイラは威勢よく立ち上がり、どこかを指差す。


「さぁ――行くわよ、みんな!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ