8話 命が軽いって事はないですよね
ライは目の前にある木箱に何が入っているかを予想していた
りんごかな?バナナかなぁ?
いや、季節を考えるんだったら‥‥なんだろう?
長い時間こうしてる気がするけど、まぁ2時間くらいかな
両隣から抱きついて泣いたり、寝たり、泣いたり、抱きしめてきたりしている2人が落ち着くのをひたすら待っている
気持ちはわかるが、ライとしては一刻も早くここを逃げ出したかった
個人的にもだが、さっきの男達は受取人がここに来ると言っていた
時間に正確なら、おそらく1時間後にここへ来る
ライがどうしようかと悩んでいると
右側のエリザがギュッと抱きしめてくる
次は左側のマリアがギュッとしてくる
ちょっと苦しいけど我慢する
すると両側から笑い声が聞こえ始める
「色々とありがと」
「ホントに助かった」
「御無事でなによりです」
「流石に怖かった」
「マジでビビった」
「御無事でなによりです」
「聞いてるの?」
「生意気なんですけど」
「いつも通りでなによりです」
「いつもこんな風に聞こえてんの?」
「ライちゃんってば、適当に言ってるでしょ」
エリザとマリアの言う事に
ライは適当にリズムをつけて答える
エリザとマリアはクスクスと笑い出して、ライも笑顔で2人を見る
「でさ、ライちゃんはなんでここにいるの?」
「助けに来てくれたでいいのかな?」
ライは笑顔で固まる
この質問がきてしまった
ライが答えられないでいると、エリザとマリアは子どもみたいな無邪気な笑顔でライの頬を摘む
「わかってる
お姉ちゃんが恋しかったのよね」
「どっちのお姉ちゃんがいいの?
両方は駄目!許されないから」
「‥‥カルナ様に仕えふえっ」
「それも許されない」
「ここでそれを選ぶんだ‥‥ふぅ〜ん」
「ひぃえ、ひょの」
「いいのかしら?そのカルナ様に」
「バラシちゃっても?」
ライは答えている最中に頬を引っ張られて変な声を上げてしまう
選択をミスったようで、エリザとマリアの目が紅く光り始める
ライは馬車での事を思い出して身震いするが、すぐに半目になり、2人の拘束を解いて立ち上がる
エリザとマリアはなになに?って感じでライを見ている
「何か来たようです」
「何かって何?」
「味方?敵?勝てる?」
「とりあえず行ってみましょう」
ライは2人の手を引っ張って立たせる
ライは倉庫の入り口の方へ歩いて行くと、2人は毛布を肩からかけたままで、ライの肩を掴んでついて行く
倉庫内は壁の天井近くがガラス張りになっている所があるので、月明かりで足元は見える
スタスタと歩いて倉庫入り口の鉄扉まであと少しの所まで来るとライは立ち止まって両手を上げる
鉄扉が開いて5人入ってくる
その内2人は見た事ある背の高い男だ
「お前はナニモンだ!お嬢様をコッチに渡せ!」
ライから見て1番左端にいる男が叫んでくる
マジかーいとライは思っていると
5人並びの真ん中にいる男性が溜息をついて
「この状況で、その言葉選びねぇ‥‥
お嬢様があんな風に頼ってらっしゃるのを見て?悪態?攫われたのに?
部下が失礼しました
先日はお嬢様や部下の命を救って頂き
ありがとうございます
そして、今日もお嬢様を救って頂き
重ねてお礼申し上げます」
「イザナがここにいるって事は、そう思っても良いのかしら?」
「はい、滞りなく終わりました」
「じゃあ、その端のもついでにお願いします」
「かしこまりました」
イザナと呼ばれた男性はライに頭を下げてお礼を言って、エリザとマリアに答えていく
ライはイザナの方に向かって礼をすると、イザナは少し微笑んだ後にすぐ隣の男に何か言う
隣の男はライに悪態をついた怯えている男を扉の向こうに連れて歩いて行った
ライが何か言う前に叫び声と銃声が鉄扉の向こう側で響いた
ライはさっき選択ミスらなかったっけと考えた後に、明日は我が身と思い身震いをしながらイザナに向かって話しかける
「失礼をしました
ライと申します
後ろの事務所のような所に亡骸がございますので、ご確認をお願いします
あと、寒く埃っぽい所に長くいましたので、お嬢様方に清潔な物と暖かい飲み物をよろしくお願いします」
と言うが、イザナもエリザもマリアも動かない
3人とも微笑んでライを見ている
誰も動かないので、ライが動こうとするとエリザとマリアの肩を掴んでいる力が強くなる
ライが冷や汗をかき始めるくらいにイザナが煙草を取り出して火をつける
その時に顔が少し見える、年配で短めの髭を生やした男性だ
「申し訳ありません
色々として頂いているのにお待たせしてしまい
実は、ライちゃんを見つけたら追って欲しいと依頼を受けてましてね‥‥
少し変じゃありませんか?
アーケロン商会においては益しか無い人を追って欲しいなどと
タイミングもお嬢様方が連れ去られた後の話でした
どうも商会に属していると、こういう知りたがりの精神が根付いちまってね‥‥おっといけません
まぁ、こうなった後なら大体は想像がつくんですが、今なら本人に直接聞けるんですよね
ライちゃんは何をしたんです」
ライはイザナの言葉にどう答えれば逃げれるかを必死に考えた
笑顔で取り繕いながら色々と考えるが
上手い言い訳が思いつかない
何か適当に喋ろうかと思うが、イザナ、エリザ、マリアはすぐに見抜きそうな気がした
ライは少し天井を見上げてから、息を吐いてから、イザナの方を向いて頭を下げる
「どうしたんですか?
‥‥あぁ、なるほど、時間切れって事ですかい
ライちゃんはスゴイですね」
「どうしたの?」
「何かわかりましたか?」
「いえいえ、ご登場ですよ」
イザナが煙草をゆっくり吸って吐いていると鉄扉をノックされる
イザナが少し横に避けるとセバスと男性が入ってくる
「失礼します」
「失礼します
御無事でなによりです
エリザお嬢様、マリアお嬢様」
ライは震えが止まらなくなっていた
これだけのメンツが揃ってしまった以上は
逃げるのは絶対に無理
加えて両肩を握られていて、動きは制限されている
それに裏口があったのか、殺気はないけど後ろから狙われている気がする
「どうしました?
顔を上げなさい、ライ」
セバスに言われてライが顔を上げると微笑んでいるセバス
その隣に前に見た筋肉質でタンクトップの男性、今は執事服を着て、髪はオールバックで清潔感あふれる好青年が立っていた
口から少し血が出ているのは何故だろう
「エリザお嬢様、マリアお嬢様
説明させて頂いてよろしいでしょうか?」
「納得できるのなら」
「苛立ちがおさまるなら」
こうしてセバスは起こった事に対しての説明を行なっていった
詰みました
逃げれません
あー‥‥詰みました
ここから助かる道ってありますかね
言葉使いをミスっただけで処理するような人達が目の前にいらっしゃいます
本当に早く逃げればよかったです
セバス様が今から罪名と罪状を読み上げてくれるそうです
エリザ様とマリア様が肩を持っていますので、本当に罪人みたいですね
いや、違うって事では無いですよ
おそらくは罪人になるんでしょうけど
拷問とかあるんでしょうか、あるでしょうね
持っていた粉薬でも飲めればよかったんですが、雨の中で立っていた時に駄目になっていました
発見されたら、終わりだと思って肌身離さず持っていたのが仇になりました
できれば、痛いのは嫌です
知っている事はないのですけど、何か喋るまで終わらないでしょうね
あー、今度アップルパイでも作ってみましょうか
まぁ、バナナでジュースでも作ってみるのも‥‥食べたいなぁ、飲みたいなぁ
それと補足ですが
カルナ様、エリザ様、マリア様は
全員お嬢様とお呼びしていたら
お嬢様は要らない
名前で呼べばいいと言われました
何度か抵抗しましたし、セバス様とサマンサ様にも相談しましたが
使用人の抵抗とは虚しいものだと知りました
その時と同じことです
虚しい事に無事詰みましたよね?




