7話 こういう考えがゲスいって事はないですよね
あたりが明るくなり始めたので、
ライは着ているメイド服が凍りついてるのを見ていた
雨にも打たれたし全身も凍りついているかもしれない
歯がカチカチと鳴るのを止められないし
体が震えるのも止められない
気分が悪いのはお腹が減り過ぎているからか
それとも立ちすぎているからか
あまり物事を考えたくない
昔の方が酷かったとか思い出してしまうから
スッと前に誰かが立つのがわかった
ライは顔をゆっくりと上げるとそこにはセバスが立っていた
「休んで明日に私の所まで来なさい」
セバスがそう言うとライはガクッと座り込んで息を荒くする
セバスは手を伸ばそうとするが、やめて屋敷の方に戻っていく
ライは足をさすってから木に寄りかかってゆっくりと立ち上がって、ヨロヨロと歩き出す
周りで見ている者達はセバスから倒れた時だけ手を貸してもいいと厳命されている為に見守っているだけだった
ライは寮に入ると風呂場に行って、シャワーでぬるま湯を着の身着のまま浴びる
段々と熱くしていきながら服を脱いでいく
両隣のシャワーも使って浴びながら座り込む
ただボッーと頭を壁につけたまま浴び続けて1時間くらいして、立ち上がってシャワーを止める
汚れたメイド服や下着はそのままに、タオルで頭と体をゆっくりとよく拭いてから、着替えてキッチンに向かう
そこらへんにある物を食べて、飲んでお腹いっぱいになったら自室に入ってベッドの上で毛布と掛け布団にくるまって丸くなる
熱にうなされたんだろう
すごくダルいが昼過ぎぐらいに目を覚ます
頑丈な体が恨めしい
ライは体をゆっくりと動かして動作を確認するとキッチンに行って、適当に食べて飲むと
「よし、逃げよう」
と呟くと、自室に入って軽く体を動かす
ダルくはあるが動いているうちになんとかなるだろう
今日中にここから出来るだけ離れてから寝れる所を探して、明日か明後日にはもっと離れよう
組織がどこにあるかわからないが、なんとか探し当てるしかない
売店とかで聞いてみたいが、もうバレているからどうしようもない
自室で持っていく物を漁るけど碌なものはない
持っている服はほとんど無く、冬に着ていたら違和感がありすぎるためにメイド服を着て、ダッフルコートを羽織る
刃渡15センチ程のナイフを2本とベッドの下にあるお金をポケットに入れる
ハンカチを2枚持ってキッチンに行って、適当に食べ物を包んでポケット入れる
ライは寮を普通に出ると街に向かって歩き出す
やがて、門が見えてきて、門を越えて外に出るとライの姿は見えなくなった
屋敷にある執事長室から外を見るとちょうど夕陽が沈んだ所だった
セバスは先程受けた報告を思い出してため息を吐く
ライの足取りを追えなくなったとの事だ
今日の夜ぐらいまでマトモに動けないハズだという予想はハズレてしまった
サマンサとフリーも焦って追跡したが、屋敷の周辺をウロウロしている痕跡はあったが、どこに向かったかは、わからないとの事だ
優秀なのは厄介ですねとセバスは思う
今からアレを捕捉するのは難しい
惜しい事をしました
サマンサに怒られるのはなんとかするとしても
カルナお嬢様がどれほどになるかはわかりません
一緒に学校に通うのを楽しみにしていましたからね
セバスはもう一度ため息を深く吐いていると
街の方を見て難しい顔をする
「それこそ、ややこしいのが来ましたね」
セバスは執事長室から出て足早に玄関に向かった
夕方前に街へ着くと港までの急行馬車があり、料金を払って乗り込んだ
港に着いたら似たようなデカい倉庫がたくさんあったので見て回るが、船が止まっている所から少し離れた倉庫を選んで倉庫の中に入る
ここで一晩過ごす事を決めて荷物を見ていると荷物の至る所に毛布が何枚もかけてるのを見つけたので、数枚拝借する
倉庫の奥の方には窓が何枚かあるプレハブ小屋のような事務所があり、そのあたりは風があまり無くて良さげだったので、出来るだけ人目に付かないような場所に木箱を並べて毛布を敷いて横になる
ライは良い寝床を見つけたと思った
毛布は少し埃っぽいが体に巻き付けると寒くない
半目になってライは動かなくなる
外で寝る時はこうやって寝る
そこまで敏感なわけでは無いが、人の気配や物音ですぐに起きれるように
明日は船に密航して‥‥‥
ライはすぐに眠った
1時間くらいだと思うが、人の気配で目を覚ますと倉庫の入り口が開くデカい物音にビックリする
「大人しくしやがれ!」
「早く閉めろ!」
扉から六つ入ってきたとライはゆっくりと物陰に移動する
扉が閉まる音が響いて、ライの方に人が歩いてくる
目的はこの事務所だろうと思いながら動かずにいるとドカドカと4人の男が2つ麻袋を担いで事務所に入っていき、明かりをつける
急に明るくなったので、目を細めながら見る
布袋に入れられているのは人だろう
男達は事務所の床に麻袋を置いて話しかける
「ここまで来たんだ大人しくしろ」
麻袋が動かない事を確認するとヨシっと言ってそれぞれ椅子や机に座る
「何人やられた?」
「わからねぇが、ほとんどだ
オトリで別れた奴らは多分ダメだ」
「チッ!引き取りの奴らは本当にここに来るのか」
「そういう話だ
日が変わった頃に来る手筈になっている」
「金はどれだけもらえそうだ」
「望んだ額を用意してくれるそうだ」
「前金も良かったし、期待できるぜ!」
そんなにベラベラと喋らなくてもと思いながら
ライは物陰で毛布を体に巻き付けて聞いていた
「まだ時間はあるよなぁ」
「おいおい、俺も混ぜろよ」
「仕方ねぇな」
そう言いながら、男達は麻袋を取る
ライは麻袋から出てきた女性を見て驚いた
「武器商人の娘はどんな味かな」
「後、どのくらいだ?」
「おそらくは3時間ぐらいはあるぜ」
よりにもよって、エリザとマリアだった
なんで攫われてるんですか?
猿ぐつわをされて、足は縛られて、手も後ろで縛られている
男達はマリアのスカートを捲り上げるとエリザが、んっーーっと抗議するのをゲラゲラ笑って見ている
マリアは震えて泣いて声も出ていない
「可愛いそうに!声も出ないか?
じゃあ、おじさんが優しくしてやろう」
「おいおい!抜け駆けかよ」
マリアの足を縛っている縄を切って、男がズボンを下ろしてから、マリアの両足を広げると
事務所の明かりが消えて、天井をぶち抜いて何かが入って来る
エリザとマリアには何か投げつけられて視界が遮られた
男達は叫ぶが、すぐに声が少なくなり静かになる
ライは両手に持ったナイフを振ると壁に血が飛ぶ
4つは消した、後はどうしよう
ライは考えもなく突っ込んだ事を後悔していた
今は逃げている最中で、痕跡を残したく無いのに、やってしまった
毛布はかけて視界を遮っているから大丈夫だよねと思っていると2人が漏らしている事に気づいて、ますますどこかへ行こうと事務所から出ようとすると
「ふぁいあぁー、えぇ、ふぁいあぁー」
「えいはぁー」
お互いを呼び合っているんだろう
震えながら呼んでいる
ライはコツコツと足音を鳴らして2人に近づいて行くと
「んいーー!」
「あぁーー!」
と、叫び出し毛布を被った状態でモゾモゾと暴れ始めたので、ライは少し顔を赤らめて、覚悟を決めて話しかける
「エリザお姉ちゃん!マリアお姉ちゃん!
落ち着いて!ライだよ!」
2人ともピタッと動きを止める
「へぁ?」
「ほんほぉ?」
「毛布取るよ」
ライは毛布を取って男達の遺体に被せる
「猿ぐつわと手も自由にするから」
2人は呆然としながらもライから目を離さなかった
ライが猿ぐつわと手を縛っていた縄を切ると
2人はライに抱きついて泣き始めた
「いや、わかる‥‥わかりますけど
ここを離れませんか?
そっちの荷物の陰でも良いので」
2人はライの肩あたりに埋めた顔を何度も上下に動かしてから、号泣しだす
ライは2人を促して物陰に移動する
その際に毛布を何枚か拝借して手頃な木箱にかけて2人に座るように促す
2人はライをグイグイと引っ張って毛布をかけた木箱に座らせて両隣から抱きしめる
顔はライの首元に埋めて泣いている
ライは毛布を2人の足元や肩にかけると2人が泣き止むまでずっと待つ事にした
えっと、あーっとお待ちください
大丈夫なんでしょうか
この先どこに向かうのか不安になっていたら
なぁんで、会ってしまうんですか
ていうか、手練れの護衛がいましたよね
屋敷に行った時にコチラをジッと見つめていましたけど、たぶん2人だと思うんです
いや、3人かな?
それよりも早く逃げないと
せっかく振り切ったのに、次に補足されると逃げ切るのは難しい
たぶん、大丈夫ですよね
アーケロン商会の護衛が来るだけなので
この2人を引き渡して、屋敷に帰るとか言って、姿くらまして‥‥
船旅は諦めましょう
ここにいた事がバレますので、船を調査されたら海の上では逃げ場がないです
しかし、お嬢様を攫われるって
アーケロン商会が雇っている方達はどうなんでしょうか
オトリを使ったような事を言っていたので、オトリに引っかかったとかで見失ったとか?
でしたらマヌケもいい所です
プロなんでそんな事はないでしょう
まぁ仮に失敗だとしたら、失敗した後のリカバリーが大切なんでしょうが、この時間になっても来ないという事は‥‥お嬢様方の状態は酷かったでしょうね
コチラの状況も
なんとかしたいんですが‥‥が?
ふふふっ‥‥目の前にある木箱には何が入っているんでしょうね
もうなんでもいいし、誰でも良いので
教えてくれると助かります




