6話 意味があるって事はないですよね
もしかすると、初めましてでしょうか
ライという名前でとある屋敷で働きながら
スパイ活動等をしている者ですが
今は森の中で立っています
そう、ただ立っているだけでお給金を頂いています
初めての経験ですが、寒いのは季節があるからしょうがないとしまして
立っているだけが、こんなに辛いとは思いませんでした
昨日の事ですが、エリザ様とマリア様が襲撃に遭いました
襲撃自体は事なきを得たんですが
この後は色々と‥‥自己保身に走りまして
相手の要求を呑むに至りまして‥‥
相手は襲撃者じゃありませんよ
エリザ様とマリア様です
この要求の件を密告された事と
おそらくですが、襲撃の際に駄目にしてしまった紅茶やお茶
そして、汚れてしまったメイド服の罰なのでは無いかと思います
帰ってきた際には、結構褒められたんですが、気のせいでしょうか?
バレてませんよね
バレたから、こういう仕打ちを朝から受けているんでしょうか
スパイってバレたら、こんな事をさせられるんでしょうか
すぐに処分されると聞いていたのですが
初めての経験なのでわかりません
あたりが暗くなってきました
雨も降ってきました
トイレに行きたかったのでちょうど良かったのかもしれません
命令はセバス様から足元に円を描かれて
この中から動くなとの事でしたので、仕方ありません
周りの気配を読むとかの余裕が無くなってきました
本当に辛いです
どうすれば良いのでしょうか
わかりませんので、今は次の命令までここにいようかと思います
ですが、隙が出来れば逃げようかと思います
隙があればですが、周りの人の気配が増えていますので、今では無い気がしますので、待機します
初めましてで、よろしいでしょう
セバスチャン・バラクーダと申します
昔は色々な所を渡り歩いていましたが、妻と子供が出来てからはボーゲン公爵様に仕えております
ただの執事でございます
カルナお嬢様が生まれて、しばらくした後に
ボーゲン公爵様の計らいで
私達はカルナ様の屋敷に住む事を許されています
昔から何かと縁があり、その信頼に応えてきた事もあっての高待遇だと自負しております
また屋敷での人事に関しても任されており、ボーゲン公爵様の本邸から引っ張ってきたメイド、執事を配置しているおります
戦闘においても、家事に関しても大変優秀な方達です
しかし私が根っこから執事でない様に
もしかすると良い人材が埋もれているのではと妻のサマンサより進言を貰いましたので、新規のメイドを募集しました
メイドに縛ったのは、とある事情で何人かのメイドが本邸に戻る事となったので
その補充と優秀な人材を探す事でしたが
本音の所では庶民ならば、最悪な事が起きても大丈夫という心があった事は否定致しません
募集に関しては周りから冗談ですよねと言われたが、試験の内容を見て全員が納得というか絶句しておりました
まずは書類審査ですが、全員合格にしました
貴族の御令嬢も混じっておりましたが、最初の3ヶ月間は、馬車馬の様な仕事を与えたので、
3人しか残りませんでした
その後は本試験と題した戦闘を森で行い、合格者は出ないはずでした
相手に用意したのはサマンサが気に入っている者から選出した10名
個々であれば良いのですが、10名ともなれば娘達でも苦戦するレベルの者達です
開始1時間は様子を見る様に言いつけておきましたが、1時間で残り1人となりました
脱落した2人には声をかけて、給金を渡して帰しました
驚いたのは、そこからでした
残り1人を明らかに10名が見失っていた
あたりが暗くなる時間になっても見つけられなかった
そんな時に索敵を行う為、少し離れた1人にペイント弾が当てられた
発射地点を確認し、襲撃をかけた2人を返り討ちにして終了
おそらく2人は誘われたのだろう
森から出てきたのは小柄な子、ライ
書類審査の時にも思ったが、本当に15才なのか?いいところ12才ぐらいだろう
こんなのが野にいたのか
年甲斐も無く、試したくなった
サマンサも同じ気持ちだったみたいだ
クロッサとフリーを呼び出して、合格は取り消さないので延長戦をしようと持ちかける
戸惑ってはいたが、やる事となった
本当に驚いた
サマンサとの遠距離同時射撃を2発もかわされた
フリーはともかくとして、夜の森でクロッサ相手に逃げ回りながら、コチラの射撃も避ける
3発目は殺気を乗せたのをサマンサが撃って、私が跳弾で狙う
ハズれた、いや避けられた
天性の感を持つものが、過酷な環境で生き残ってきたのかと思う様な鋭さだ
次もハズされて、コチラの位置を特定しつつある
動きながら撃っているのに時折コチラを向くのだ
次はわざとハズした
娘達が捕えやすいように
私達夫婦が計8発、いや10発をハズした
初めての経験だった
すぐに背後関係を洗い出した
当然の真っ黒
今回の募集もこういう事がある可能性も考えていたが、まさか正面切って馬鹿正直に現れるとは思っていなかった
どんな組織かを子供達に調べさしたら
簡単に本部まで見つかった
小さい組織だったが、仕事を選ばずにやってみたいなので、色々な所にちょっかいを出していた
そこらへんに協力を仰いだら抵抗もほとんど無く一夜にして壊滅した
ライほどの手練れを持っている組織だからと思い、サマンサや子供達も行かせたのだが、拍子抜けだった
協力を仰いだ所にもライの存在は伏せた
ライがスパイである事を知っているのは私とサマンサだけだ
他は子供にすら教えなかった
その理由はサマンサが処分するには惜しいと言い出したからだ
加えてカルナお嬢様が落ち込んでいる時に笑わせて、なおかつお気に入りになってしまったからもある
私は反対した
惜しいのは同意するが、それでコチラに被害が出たらどうすると問いかけると
では試したらいいとサマンサは言い放った
ライが使っている組織との連絡手段を観察して割り出した
やはり未熟な組織だった
何度もライが疑問や苦言を呈するぐらいに昔ながらの方法が使われている
紅茶を教えるとすぐにモノにした上に
文句がつけようがない程に上達して個人の好みまで把握し出した
そんな時に組織からの連絡と称して
粉薬を渡して暗殺指令を出した
もちろん粉薬といっても、ただの栄養剤をすりつぶした物ですが
カルナお嬢様、エリザお嬢様、マリアお嬢様に紅茶を出させたり、我々に夜のお菓子や紅茶を出させたりしたが、粉薬を混ぜ込むといったそんな素振り一切見せなかった
期日を過ぎた時にサマンサは上機嫌になったが、私が最後の試験をしたいと言った
もうこれっきりにすると約束もして
前日にエリザお嬢様とマリアお嬢様の命を守るというお手柄をあげたのに行うのは心が痛みますが、こういうのは早い方が良い
朝に森に呼び出して足元に円を描いて中に立つように言う
昼か遅くとも夕方にはトイレか倒れ込むと思われるので、身体的に逃げれなくしてから
スパイという事をわかっていたとバラしてスパイをやめてここで働かないかというつもりです
少し幼稚ですが、ケジメとシツケは大事だと思われます
特に他の組織で飼われていた者にはキチンとしなければなりません
しかし、屋敷の者達が様子を見に行っていますが、ライは立ち続けているそうです
もう日が変わる頃ですし、雨が酷くなってきましたね
早く根を上げてくれないと体が壊れますよ
もう充分でしょうか?いえ、シツケは大切です
また、サマンサが抗議にやってきました
シツケとは難しいものです
余談ですが、性別を知った時にサマンサがオトコノコ!って喜んでいました
私は性別を知ってから、ライを見て性別の事がよぎると複雑な気持ちになると言うのに
そういえば昔、息子へ言っていた男の子っていう発音と、ライの事をオトコノコって言う発音が違うような気がしますが、記憶違いでしょうか?
歳を重ねると昔のことがアヤフヤになって、まったく嫌ですね




