41話 永遠の幸福って事はないわよね
どうしてこうなったんだろう
幼い頃から決められていた婚約を破棄された
どうしてこうなんだろう
私がした事はひとつも無いのに
また私のせいにされてしまった
どうしてそうなるのよ
生まれた時から一緒だった姉妹のように育った友を巻き込んでしまった
聖女に言われた事は何もやっていない
‥‥いえ、そうね
使用人につらく当たった事はある
感情的になってしまったと謝罪する事もあったそれでもやめた子はいないのに
行方不明になった子がいると言われた
何故かそうかもしれないと思ってしまった
黙っていると
いえ、呆気に取られていると好き放題に言われた
所詮は決められた婚約
オマエは俺を大事にしない
寂しい時に聖女様は寄り添ってくれた
オマエは愛を知らない可哀想な奴だ
そうだ!オマエには試練を与えてやる
昔から俺らもにツラくあたっていた
次世代を担うもの達
同世代の公爵家跡取り達にも
帝国の太陽と称される方にも
そう言われた
そうなのかもしれないと思ってしまった
幼馴染の中で唯一
姉妹のような友が庇ってくれた
だが、友も馬鹿にされた
もういい、ありがとうと友に告げて
その場にいる人達に謝罪をしてその場を
クリスマスパーティ会場を後にした
辺境へ行く時に
逃げるのか卑怯者め!
いや、もっと酷い言葉でもなじられた
一緒に行く事になった友もなじられた
惨めだった
本当に惨めだった!
3人で泣きもした!
なんで!なんで!って
何度も何度も繰り返した
追い討ちをかけられた気がする
婚約者をあてがわれた
王族の落ちこぼれと言われる男
調べれば調べるほどに怖気が走るけど
国王からの推薦だから断れそうもなかった
どうでもよかった
なんでもよかった
そんな気持ちでいたら
その男が辺境まで押しかけてきた
屋敷に併設されている倉庫で
押し倒され、襲われる寸前にお兄様が入ってきて、止めてくれた
別にどうでもよかったのに
お兄様が青い髪のメイドに聞いたら
おそらくあそこじゃないですか
と言われたから駆けつけてきたと言っていた
もうなんでもよかった
また婚約破棄になった
数日間引きこもった時に
不意に窓から外を見た
落ちたら楽になれるだろうか
そんな事しか頭になかったと思う
窓から見える花壇に私の好きな花が見えた
夏前まで咲く蒼い花
綺麗な花が咲くけども最後は落ちる
花が落ちたら夏の始まり
ちょっと前まで花壇いっぱいに咲いていたのに
もう咲いていない
見えるのは、あと1つだけ
それも落ちる
あれが落ちたら
私も終わりでいいよねと思いながら
窓を開けて覚悟する
蒼い花は地に落ちなかった
ちょうど落ちた先に小さな青い髪の頭が見える
覚悟した時に吸った息を
笑いながら全部吐いてしまう
アンタ!誰!‥‥駄目!触んないで!
落とさないで!お願いだから!
今日1日乗っけたまま仕事をしなさい!
笑ってる私を見ていたメイドにそう言った
私の側に呼んで1日中見張っていた
無理な命令もしたと思う
ペンが落ちたから、素早く拾いなさい
部屋を飛び回りなさい
座って立ちなさい!もっと早く!
他にもっと色々と言ったけど
メイドの頭から蒼い花は落ちなかった
その日最後の命令は
その椅子に座って
私が起きるまでそこにいなさい
お願いだから
なんか久しぶりにゆっくりと寝て
昼前くらいに起きるとメイドは私が最後に見た姿勢のまま椅子に座っていた
メイドは私が起きた事に気付くと
蒼い花を私の手の上に落ちるように器用に頭を下げてきた
手の上にある蒼い花を見て、呆然とする私に
また何かあればお呼びください
そう言って部屋を出て行こうとする
慌てて呼び止めようとするけど
名前もわからない事に気付いた
そのまま礼をして、ドアを開けて出ていく青い髪のメイドを見送った
すぐにサマンサを呼ぶと
ドアの外にセバスと待機していた
あれは誰?あんなメイドいた?
そんな事を聞いたと思う
2人は難しい顔をしながら
名前はライ
おそらくは偽名です
それ以上の事はお待ちください
背後関係は綺麗に洗いましたので
一応、大丈夫と申しておきます
なんなのよ
ライっていうのね
私は終わろうと思ったのよ
なんで、邪魔するのよ
1日に何度も呼びつけて
何かと命令をする
そつなくこなすのが
腹が立つ時もあるけど
反抗もせずに大人しく静かに命令を聞く
すぐに友‥‥腐れ縁の双子に嗅ぎつけられた
この2人も婚約破棄や失恋をしているから
ヤバそうとは思ったけど
メイドをおちょくって気を紛らわしたいとか
変な気の紛らわし方とは思ったけど
3人でなんとなく‥‥夢中になっていった
寒くなってきた時期に双子の命が狙われた
次の日、学校で会った時にサラッと言われた
それとライを欲しいとも言われた
その時は冗談で終わったんだけど
その次の日に会った時は本気で
しかもしつこく言われた
なんでも誘拐‥‥?
誘拐!?された!のはいいの?
下卑た男に汚される前にライに助けてもらった
でも、ライにおちょくられて、心を汚された?どういう事?
は?あげるわけないでしょ!
え?お爺様に言う?ちょっと待ってよ!
たかがメイドよ!だったら寄越せ?
嫌よ!あれは私のモノなの!
屋敷に帰ったらライは体調不良で寝ていると言われた
なんかムカつくわねと思っていたら
セバスとサマンサから報告を受けた
意味がわからなかったけど
詳しく聞いたら、ライはスパイだったけど
今はスパイと思っているとの事だった
訳がわからなくなったけど
どこに雇われたの?王族?教会?
聞いてもハッキリとしなかった
聞いた事も無い小さな組織
いつからあったのか
どこが運営していたのかわからないらしい
ただ簡単に乗っ取れたと言っていた
そして、メイドなのにオトコノコだとサマンサが力強く言い切っていた
‥‥え?男なの?ライが?
へぇ〜‥‥そうなの‥‥そうなんだ‥‥
ふぅん‥‥ライがね‥‥
なんかこの時は、買った物に嬉しいおまけがついていたような感覚だった
この事はクリスマスパーティの時あたりに双子も知る事になっていた
そして、あのスノウの態度!
助けてもらったとはいえ、チョロすぎよ!
だから、ライは私のって言ってるでしょ!
は?せめて、半分ちょい?ふざけないで!
カケラも渡さないわよ!
久々に姉妹喧嘩をした気がする
夜のお茶会の時に双子のお爺様がライを呼ぶ
ライが出て行ったドアをなんとなく見ていると
双子やスノウまで見ていた
それを見ていたミカエルに笑われた
オモチャを取られた子供みたいな反応しないの
あなた達は大人と言っても‥‥
まぁ、安心したわ
無事な笑顔が見れて、本当に
ミカエルは涙を拭っていたけど
それは笑いすぎた涙よね
誤魔化さないで欲しいわ‥‥でも、ありがとう
なに?スノウ!しつこいって言ってるでしょ!
ひっぱたくわよ!本当にもう‥‥可笑しいんだから
年末、お爺様やお婆様が王都に帰る前日に家族でお茶会を開いた
私と双子は何度も撫でられたり、抱きしめられたりした
無事でよかった、元気になってよかったと来年が楽しみだと言われた
ライの話になると双子やスノウがうるさかったが、全員が驚いた事が2つあった
まず、双子のお爺様がライの価値を見誤っていたと言った
本当に驚いた
私は商人として自信に満ち溢れている姿しか知らなかったから
こんな歳だが、まだまだ勉強不足だぜ
少し畏まって、そう言った双子のお爺様を見て本当に驚いた
2つ目は、双子とスノウがライをどうにかできないかと相談してきた事だった
どうにかとは?と聞かれると
私達の婚約者として育てたい
駄目なら愛人にしたい
双子とスノウが頷き合いながら真剣にそう言った
私は猛反対した
だって、ライはずっと私の側にいる!
ライは私のモノなんだから!
お爺様やお婆様にこだわる理由を聞かれた
全部話した
終わらそうとした事
ライが邪魔して終われなかった事
ライが出してくれる紅茶が美味しい事
なんでも真剣に考えてくれるのが嬉しい事
おちょくるのは楽しいけど、嫌われるような事はしたくない事
他の女に尻尾振るのはムカつく事
優しすぎるからしょうがないけどムカつく事
あの時の蒼い花を押し花にして持っている事
寝る前に眺めて落ち着く事
私に笑ってくれるのはいいけど
他の女に笑うのはムカつく事
最初あたりは真剣に聞いていたのに
話終わった時に双子とスノウ以外に爆笑された
双子は頷きながら
わかるわかるよと言ってくれた後に
カルナ!それが恋なんだよ!
カルナ!乙女だね!私達もそうだけど!
スノウに至っては
カルナお姉様もライが初恋なんだ!
私もなの!だから、ライが欲しいの!
‥‥‥‥‥は?‥‥はぁ〜!
ちが!顔が赤いのは部屋が暑いから!
ライは私のモノで‥‥これは‥‥違うし‥‥
なんなのよ!あんなどこにでも尻尾振る駄犬なんて!そんなに欲しけりゃ‥‥
嫌だ!絶対に!絶対にあげない!
ライは私のものよ!
散々おちょくられてた
ミカエルなんて
そうね
納得する男がいないなら
育てるしかないわね、いい男を
‥‥まぁ、惚れた方が負けっていう事もあるけど
知らない‥‥知らないわよ!
こんな気持ち!初めてなんだからわかるわけないでしょうが!
そのムカつく原因が王都に旅立って行った
見送ったら、泣きそうだからやめておく
双子も同じで屋敷の2階から見送った
3人でなんか笑いながら泣いた
こんなに寂しさを感じる事があるなんて
王都で会った時は
手紙の事を忘れて、教会の女にまで尻尾を振ってる事にムカついたけど
顔見たら、怒る事ができなかった
なんか‥‥そう‥‥そんな感じで
双子もそんな感じだったけど
ライを抱きしめていた
羨ましい‥‥くない
勉強の合間に夜の警備に行って帰ってきたら
勉強させて次の日も勉強させて
フラフラにしたら
膝の上で寝てくれた
ヤバ!めっちゃ可愛い!
やっと、私だけに懐いてくれた気がする
は?‥‥何?この匂い‥‥
他の女の匂いがするなんて
‥‥まぁ、双子だから許すけど
おぉい!キスすんな!
ほっぺは許すけど、口は私が1番にすんの!
‥‥えっ?すんの?私が?
学園に着いたら
帝国の至宝がいた
ライを見ている
悪い予感がするけど‥‥
まさか‥‥でも、いつ?
あの夜の警備に出た時?
なんでアンタはいつもいつも
隙あらば、どこにでも尻尾を振るのよ!
ちょっとライをどうする気!
連れてかないでよ!私のよ!
なんでライもちょっと嬉しそうなのよ!
試験を受けなくていい事がうれしいのよね!
その女に連れて行かれる事が嬉しいとか言ってみなさい!
かじりついてやるんだから!




