39話 すり合わせも大事って事だ
さて、何から語るか
そうだな、俺たちの事を語ったら
そりゃあ、何日もかかるからな
ハッハッハ!どのくらい一緒にいると思ってんだ?ダル!
それもそうか、昔語りを馴染みにしてもな
いい事は無いってか、ルドラ
最近の悩み‥‥いや、ありゃあ‥‥
俺らの経験を持ってしても、意味がわからんものだったしな
孫達には苦労をかけた
‥‥1年くらい前‥いや、事の発端を語ると
もっと前になるか
未来を見通す目を持つものか
最初は疑っていたが
ああまで、当てられちまうとな
水源に、国境線の小競り合い、飢饉
果ては学生のイベントでの事故までな
流石は聖女様って
持ち上げ方も凄かったからな
聖女になったのは、学生になった時か
今思えば、なんだったんだろうな
熱に浮かされていた
今となっては、そう思っちまうな
思わねえか?ルドラよ
ウルセェぞ!ダル
ウチは大損こいちまったんだ
思い出したくもねぇ
確か、去年の今頃だったか
今まで誰も作れなかった
山を切り拓いて作る帝国までの道
聖女様がやるっつうから、間違いは無いってよ
王家、公爵家のガキまで言いやがるから
商人達がこぞって金を借りにきやがった
お前の所は出さなかったな
当たり前だ!孫達をあんな目にあわしたヤツだぞ!
私怨かよ
それもあるって事だ
あんなものができるだなんて思わねえよ
人が通った記録さえ、あんまりねぇんだ
夢物語だったのに
聖女様が言うならできると踏んだのか
案の定、事故のオンパレード
死人が、かなり出た
怪我人はもっと多かった
そして、どれも防げなかったどころか
検討ハズレな事を言う聖女様だったと聞いてるぜ
夏前だったか、やっと諦めたのは
それからはよ
貸した金が返せねえ
次があるから、その時まで待ってくれだ
次か‥‥‥慈善事業だったんだろ
金を払ってから、寄付って聞かされたらしいぜ
詐欺師だのと言っていたが
商人として見抜けねぇのは、三流以下とも言えるからな
それで聖女様は教会のお偉いさんとの
パイプをより太くしちまったってか
その影でどれだけの人間が泣いたか
知ってるよ
私財を投げ打ってでも助けようとしても足らないってな
お前が泣きついてくるなんざ
長い付き合いで初めてだったからな
俺が泣くぐらいはな‥‥
新参者であれ、馴染みであれ
苦楽を共にしたんだ
だか‥‥助けられなかった奴らも大勢いた
そいつらが食い詰めて野盗
もしくは、お前を逆恨みってか
随分と迷惑をかけちまったな、ダル
お前も大変な時だったろう
色んな疑いをかけられた上に
命まで狙われたと聞いたぜ
長い人生の大半、苦楽を共にしたんだ
なんて事ねぇよ、俺はな
孫達が大変な事になっていたのは許せねぇがな
まぁ、その孫達がな
そうだな、その孫達がな
2人は薄暗い部屋で笑い合うとワインの入ったグラスをチンと音が鳴るように合わせる
そこにもう1つのグラスが合わさって、再度音が鳴る
その音はまるで、俺もそうだとも
俺も混ぜろとイラだっているようにも聞こえた
ハッハッハ!ここからだよ!
そうだな!知りたい事はここからだぜ!
焦んなよ!なぁ、ダル!
去年の夏前ぐらいだったかな、ルドラ
そうだな、そんなもんだ
俺がイラだって、しょうがない時に
心配していた孫達からの手紙をウルが楽しそうに読み上げやがったんだ
ユキもそうだった
なんか、面白い事を見つけたような文になっているってな
正直、そこまで気が回らなくなっていたってのもあるが
そこからしょっちゅう来るようになった手紙が楽しみになっちまってな
わかるぜ!
一種の安定剤みたいなモンになっちまってな
ハッハッハ!お前もか?
お互いに孫馬鹿になっちまったな!
お前程じゃねぇよ!ルドラ!
あん?わかったって!
話すから、イラつくのはよせって
まぁ、その孫達の手紙だけでは
かなり脚色されているように見えてな
そうだな
実際に会ったのはクリスマスパーティーで
孫達に会いに行った時だな
それまでは、探りをいれるしかなかったが
レプンの奴が持ってきた報告書を読んでる時にビックリしたが‥‥
セバスとサマンサが送ってきた報告書もな
ハッハッハ!今となっちまっては
なんであんなに疑ってたんだかな!
まったくだ!
本当にこうなってから、言える事だけどな
ハッハッハ!
ルドラは、初めて会った時に売ってくれと
言っていたが、譲らなくて良かったぜ!
本当に惜しい事をしたな
孫達の手紙を読む分には、詐欺師が商品を買って欲しくて言う悪辣な嘘に見えちまってな
本物を見たらアレだろ
あっさり引き下がっちまうよ
最初は‥‥確か‥‥
公爵家の猟犬か
その前に
公爵家に送り込まれたスパイってのがあるだろう
それを聞いてたから、引き下がったんだぜ
あ‥‥ブッ!ハッハッハ!
ハッハッハ!笑ってやるな!
2人が笑いながら、テーブルに置いてあるグラスを持ち、ワインを飲んでからまた笑う
2人と同じ様にテーブルについている口髭を蓄えた男性は、ワインを飲んでから、少し咳払いをして2人の会話が進む様に促す
すまん、すまん
いくら非公式でも不敬罪にあたっちまうな
お前は笑い事かもしれんが
俺は商人だぜ
‥‥クリスマスパーティーでは
カマクとミカエル、それにスノウが世話になった
ああ、それにマドワ元公爵家の紋章を見つけてくれたしな
アレはデカかった
後は、防衛にあたった本隊が抜かれる様な奴等を生け捕りにしてたとも聞いてる
そこから得た情報で隠れてたデケェ賞金首まで掘り当ててちまったからな
それだけでも懐が潤ったってのによ
なんで、それ以上が入ってきちまうやら
予想なんてできなかったぜ
先日の裁判での賠償金と迷惑料と口止め料か
コッチは新たな領地までもらっちまったんだぞ
人手が足りねぇって、俺まで引っ張り出しやがるし
ったく、隠居してたってのによ
ふん!勝手に隠居なんかさせるかよ!働け!
コッチは、金がわんさと入ってきて、救済をし終わったのに、前より金が余ったからって
新しい事を始めようとして、人手が足りないと働かせられてんだ
カマクを返してくれ
人手が欲しい
馬鹿野郎!そのカマクが子供ができたって
張り切りまくってんだ!
どうにかしろよ!
この老骨にムチ打ちやがって
コッチもだぜ
まったく、忙しいったら
ありゃしねぇぜ
忙しいといえばよ
慈善事業に手を出したのか、ルドラ
‥‥商会のワンちゃんがよ
孤児に恵んで、悪漢から助けたって話が
尾ひれや背びれをつけて広まっちまってな
それで、倉庫で余っていた服や売れ残った食料をレプン夫婦主導で配ってるわけだ
教会の3つ首っていう名前まで広まってるってな
そういう名前の和菓子まで出るらしいぜ
まぁ、試作品は美味かったな
色々と話しちまったが
そんなヤツなんだよ
お前さんが知りたがっているヤツは
俺もダルも
こんな嘘みてぇなヤツに騙されてる最中なんだ
いや、俺らだけじゃねぇか
そうだ!孫達は特に騙されちまってる!
だが、それがいいらしいんだ
困ったことにな
もし、こっからの話が聞きたいってんなら
ああ、聞きたいって事なら
騙されてみないか
ライってヤツに
話聞いても、実際に会ってみても
嘘みてぇなヤツだかな
だが‥‥なんつーか
男の俺らが使うのもなんだが
ハッハッハ!わかるぜ!
男が使うのも、使われるのも
ためらう言葉だわな
でもまぁ、可愛いヤツなんだよ
そうだ、可愛いヤツなんだよ、なんかな
ユキやウルが言うにはオトコノコだっけか
おい!ダル!
そこまでにしとけ
そこから先は対価と約束をもらわねぇとな
どうだ?馴染みだからよ
今なら安くしとくぜ
ブッ!ハッハッハ!おいおい!
それは商売人である俺のセリフだろ!
お前が言うと詐欺師みたいじゃないか
だが、どうだ?一緒に騙されちゃみないか?
男性は口髭を触り、ニヤける口を隠しながら
たった一言告げる
あい、わかった
3人の男達は互いに笑い合い肩を叩き合って
次の段取りを話し合う
ああでもない、こうでもない
そういえばあったな合言葉がとか
ハチミツが好きなんだとか
そのうち夜は更け、3人の話題は若い時の思い出話へと変わっていった




