38話 踏み込みが深いって事はないですよね
ライは簡易的な報告をしてから
寮となっている屋敷に帰って、シャワーを浴びてから、2階の朝日が差し込む寝室で布団に包まって横になる
報告をしたサマンサは笑顔で間に合った事を褒めてくれたが、アルマという女性でしたとネックレスを見せて報告したら何かを考えて、‥‥ネックレスを渡して‥‥
ライは疲れていたのか、そこで眠った
朝というには少し遅い時間にモソモソと起き出して、支度をしてからキッチンに向かう
軽い物を食べながら、お茶の準備をしようとキッチンに入るとハチミツ漬けレモンの瓶が3個、ハチミツが入った瓶が1つ置いてあった
ライは二ヘラっと笑い、キッチンに置いてある物を確認してから作業に入った
昼過ぎにライがいる屋敷へカルナ、エリザ、マリアがシアンを連れて訪れて来た
玄関で出迎えると荷物を持った20名程のメイドが2階や1階に散っていく
ライはなになに?っと思っていると挨拶を交わしたカルナ、エリザ、マリア、シアンがライの横を通り抜けながら、頭を撫でて順番に告げる
「今日はここに泊まるから」
「明日のテストまで勉強だからね」
「ライは寝れないわよ」
「私も手伝うからね!ライちゃん!」
玄関から元気よく入って来たスノウがライに駆け寄って来て、後ろから抱きついてくる
「私も!私もぉ!ライの為よ!嬉しいでしょ!」
待って!待ってください!
急にすいません!ライです!
明日の朝にはテストが行われるガイア学園に行かなければなりません
だから、昼からテスト勉強をするのはわかっていた事なんですが‥‥‥
泊まり?聞いてません!
本当に?なんなんですか!
なんでカルナ様、スノウ様
エリザ様、マリア様、それにシアン様まで!
こんなの警備がメチャクチャ凄い事になるじゃないですか!
夜に‥‥深夜にこっそりと抜け出す為に色々と作っていたのに‥‥
ああ!ちょっと!キッチンに入った人達!待って!それはダメ!夜に食べようと思って‥‥なんでもありません
はい、お嬢様方に食べてもらおうと作ってました
はい?作り方?シェフの皆さんに聞きました
聞いてくる?作るの?あの‥‥なんでもありません
絶望が色々と引き連れて来たような
歓迎していないのに、団体で来たような
諦めなければ希望ってありますよね
ない!って言うな!
チャレンジは大切です!
明日の朝まで時間はあるのです!
はい!余計な事は考えてません!
シアン様!ここがわかりません!
スノウ様!抱きついて首あたりに‥‥ちょっと!息がくすぐったいです!
カルナ様‥‥怖いんですが
マリア様?‥‥アーン!美味しいですね!
エリザ様?大好きですよ!ハチミツ!‥‥えっ?ハチミツは言わなくていい?
あの‥‥お嬢様方、怖いです、わかんないです、無理です!もう、無理ですから!
今日、明日には帝国に向かって行きます!
あそこなら、自由が!あるはずです!
はい!シアン様!わかりました!
ありがとうございました!
もう‥‥勉強‥‥やぁら‥‥
ライは机に突っ伏しそうになる
深夜になっても勉強会は続いていた
講師はサマンサ、レプン、フリー、ナガルになっている
クロッサとダイアは脳筋だそうなので、警備の仕事をしているそうだ
と、言われた記憶はあるが、他の記憶がないまま、ライは窓から朝日を見ていた
「どうかな?いけるかな?コレ」
「もう大丈夫」
ライの状態を見て、ナガルとフリーが小声で相談する
レプンも片手で持っていた本をパタンと閉じるとサマンサと頷き合う
サマンサがナガルとフリーに向かって頷くと
「ライちゃ〜ん!休憩だよ〜ん!ご飯食べに行こ!」
「はい、立って、はい、歩く」
「‥‥眠い‥‥眠いよ〜ん」
「あはは!ライちゃ〜ん!口癖が!あはは!」
「はぁ〜い!行くよ〜ん!ライち〜ん!」
「‥‥眠いち〜ん‥‥歩くよ〜ん」
ナガルとフリーが笑いながらライを連れて部屋から出ていくと、サマンサは冷めた紅茶を少し飲んで微笑む
「あそこまですれば、逃げ出す気力も考える力も無いでしょうね」
「そうですね
できればですが、今日、明日は大人しくしてもらいたいものです」
「本当にね
あの子は、ほっとくと色々な所に愛嬌振り撒いて、擦り寄っていくものね」
「‥‥そちらに打診があったと聞きましたが」
「耳が早い事‥‥
帝国の至宝と言われる
アルマ・アコンカグア第二皇女様からは面会を
帝国の太陽と言われる
デナリ・アコンカグア第一皇太子様からは公爵家へお礼と面会を
それぞれ申し込まれているわね」
「それは直接?それとも王家を介して?」
「問題の発生源が王家と教会認定の聖女なんですから、デナリ・アコンカグア第一皇太子様からは王家を介しての事になったわ
昨日からパラル・ボーゲン公爵閣下が‥‥
いえ、全員が呼び出されているわよ」
「こちらもそのようなものです
お互い警備が楽になったのはいい事ですが
逃がすなと厳命されて、ここに派遣されました」
レプンの言葉にサマンサはクスクスと笑うが、すぐに呆れたようにため息を吐く
「それよりもアルマ・アコンカグア第二皇女様からの面会がねぇ‥‥」
「お察ししますよ
おそらく相手も調べたんでしょうね」
「はぁ〜‥‥
本当に若いって良いわねぇって事にしとくわ」
「おや?孫ができそうだから引退宣言ですか?」
「若い嫁をもらってから、
発言も行動も若くなってる人よりマシです」
「おや‥‥ヤブヘビでしたね」
レプンが肩をすくめると2人は笑い合い、朝日が差し込む部屋の中で、お互いの近況と昔話をする
ライはシャワーを浴びて、着替えてからベッドに座って寝ようとしたら
クロッサとダイアが部屋に突撃してきて、服装を直されながら、食堂に連れて行かれる
朝御飯をエリザとマリアに両側から食べさせてもらって、サマンサ達に見送られて足早に馬車に乗り込む
「ふふふ、可愛いわね」
「カルナ‥‥代わってよ」
「嫌よ、シアンは他の事をして起こしそうだから
それにテストを受けないのについて来ないでよ」
「ほっぺにキスぐらいは普通でしょ
それに、たまには母校訪問もいいじゃない」
「どういう普通よ」
馬車に座った途端にライが寝たので、隣に座っていたカルナが膝に誘導すると、なんの抵抗もなくパタンと膝の上に倒れ込む
ライの髪を撫でながら気分よくカルナがシアンと言い合っていると、カルナがライの頭に顔を寄せて鼻をスンスンさせてから、対面に座って微笑んでいるエリザとマリアを睨む
「なぁに?カルナ」
「なんでしょうね?カルナ」
「‥‥アナタ達と同じ匂いだわ」
「そう?カルナ」
「てか、今さら」
「マーキングっていうのかしら
こういうのは卑怯よ」
「いいじゃないの、商会のワンちゃんだもの」
「いいでしょう〜、カルナ」
「くっ!コレだから商人の家系は嫌なのよ」
「教会のワンちゃんでもあるから良いわよね」
シアンはそう言って、カルナの膝で気持ちよく眠るライに顔を近づけて頬にチュ!と音を立ててキスをする
カルナ、エリザ、マリアは声を出しそうになるが、ライを見てグッと我慢する
「スノウといい、アンタ達といい
ライは私のものなのよ
諦めなさいよ」
カルナは膝で眠るライを上から抱きしめるようにして3人に言う
カルナはライに近づいた事によって、またライの匂いを吸ってしまい、ニヤニヤしているエリザ、マリアを睨む
「エリザ、マリア‥‥私にもこのシャンプーとか石鹸をよこしなさい」
「いいけど、ライをね」
「いいんだけど、ライをもっと貸して欲しい」
「そんな条件が」
「じゃあ、ムリ」
「そういえば、ミカエルお姉様とスノウちゃんも同じのを使っているのよね」
「‥‥私のをライに」
「それも、ムリ」
「ライには、この先コレを使ってもらうって契約してるから」
「‥‥わかったわよ」
「やった!じゃあ、スノウちゃんが言ってた通りに」
「そうね!ライが住んでる屋敷に連泊確定ね」
「私はもう許可をもらっているから、住み込むからね」
エリザ、マリア、シアンはそう言ってキャイキャイと小声で、はしゃぎだす
カルナは呆気に取られたように3人を見ていたが、ハッと我に返って、ライを見る
「なんでアンタは‥‥私のものなのに
そこら中に愛想を‥‥シッポを振るのよ
アンタ達も!そこまで許して無いわよ!」
カルナが大きな声を出したので、エリザ、マリア、シアンが口の前に指を立てて、シーっとしてから、全員でライを見る
寝息を立てて寝ているライを見て、全員がホッと息を吐く
「なんで、住むとか連泊とかの話が出てくるのよ」
「私はもう増えて欲しくないのよ、カルナ」
「私もこれ以上はいらないと思うの、カルナ」
「私もね、だから見張らないっておかない、カルナ」
3人は真剣な眼差しでカルナを見る
カルナは少し悩んで、思い当たることがあったのか頷こうとして、ハッとなる
「だぁかぁらぁ!
ライは私のものって言ってんでしょうがぁ!」
エリザ、マリア、シアンは笑いながら、再び口の前に指を立てる
馬車が止まり、カルナ達がライを起こして馬車を降りる
ライが目をこすりながら、フラフラとするのをシアンが後ろから抱きしめながら歩いてガイア学園の門を入ると全員が立ち止まる
「‥‥どうしたんですか」
ライは4人の顔を見てから、向かう先のガイア学園校舎の方を見ると、5段ぐらいの階段があり、その階段の上に騎士を引き連れた女性が立っていた
女性は白いドレスの上に、白いポンチョ、水色の髪を綺麗にまとめ上げて、頭はティアラで飾られている
ライは女性の顔を見て、目が覚め、冷や汗が出てくる
「おはようございます
今はボーゲン公爵家の猟犬様」
「‥‥お‥おはようございます
アルマ様ですか」
「うん!そうよ!
名前を聞かせてもらってもいいでしょうか」
「ライと申しまッ‥‥ムグッ」
ライはシアンからキツめに抱きしめられて、エリザとマリアに手で口を塞がれる
カルナがライの前に立つが、アルマは階段をゆっくりと降りて、降りきると駆け足になって、カルナを避けて、シアンから奪うようにしてライに抱きつく
「ライ様!私と帝国に来てください!
絶対に後悔はさせません!」
「あ‥‥え‥‥」
「運命って信じますよね、ライ様!
私は、この運命なら喜んで受け入れます!」
「あの‥‥アルマ様」
「アルマって呼んでください、ライ様」
「離れなさいよ」
「ライを離して」
「ライはコッチ」
「ライちゃん‥‥まさか本当に関わったの?」
頭1つ以上大きいアルマに抱きつかれ、振り回されて、呆気に取られているライをカルナ、エリザ、マリアが引き剥がして、アルマから距離を取るように抱きしめる
シアンはライを見て口をワナワナとさせて、驚いて呟く
アルマはライを奪われて、拗ねたように口を尖らせていると騎士達がアルマに近寄ってくる
「先日はお世話になりました、ライ様
助けて頂いた騎士も無事で、礼をしたいと申しております」
「いえ、あの時はそういうものなので、全然いいと思います」
「ハッハッハ!そうは言ってもマカも礼を言いたいと申しておりまして
我らのワガママで申し訳ないが、礼を受け取ってください、ライ様」
「いや、あのライ様っていうのは」
「その事に関してですが‥‥
これから王城に向かって頂いてもよろしいでしょうか?」
騎士からの言葉にカルナ、エリザ、マリア、シアンはウッと言った感じの顔になる
「これからテストがあるので」
「ライはテストを受けないと」
「時間がないからね」
「さっ、行きましょうか」
「ライ様は王家より正式に呼ばれています
私達と向かいますので、皆さんはテストをどうぞ」
戸惑うライを連れて行こうとするカルナ達にアルマは笑顔でそう告げる
ライを連れて行こうとした4人は立ち止まるとアルマの方を振り返ると
アルマが近寄ってきて、ライの手を握りると、顔を真っ赤にしながら告げる
「さっ!ライ様!行きましょう!」
「では、ライ様、アルマ様
あちらに馬車を用意していますので」
何も言えないカルナ達を置いて、戸惑うライの手をゆっくりと引きながら、騎士の誘導でアルマは歩き出す
「私も行くわ
いいでしょう、別に」
「申し訳ありません
ライ様のみをお迎えにあがりましたので」
シアンが、ついて行こうとすると騎士の1人に立ち塞がられる
カルナ達はそれ以上何もできずにライを見送った
「まさか、ライ‥‥」
「帝国にも‥‥」
「これって、なんなの」
「ここまで愛されていると怖くなるわね」
年貢の納め時というものがあるそうです
ライと申します
ライ様ってなんでしょうか
ここまでくると調子に乗ってもいいかなって
思いますよね、思いませんか?
まぁ、乗ったところで
やりたい事があるかといえば‥‥
あまり思いつきませんし
1回失敗しただけで全てが終わりそうです
いえ、違いますね
終わらされそうです
それほどの人達が周りに集まっています
それにしても‥‥ライ様ですか
王城ですか、連行ですか?
悪い事は‥‥しましたかね?
いや、でも‥‥やっぱりいいです
こういった時は
自白を強要されるんでしょうか
何かしたわけではないと思うんですが
確かに隠したい事はあります
という事は認めるまで永遠に拷問が続くんでしょうか
痛いのは嫌なのでいっそのこと、全てを吐き出しましょうか
といっても、組織の事やスパイ活動の事で吐き出せる事なんてないんです
信じてもらえないと思うんですが、本当なんですよ
嘘をついてるように聞こえますよね
私もそう聞こえます
どうしたら良いのでしょう
‥‥本当に眠い
‥‥いい匂いがします
いいんですか?って!
危なかった!知らない人達に囲まれてるんです
緊張感を持って‥‥
だから!寝てません!寝ません!
‥‥はい‥‥起きてます
目を閉じてるだけで‥‥
起きてますよ〜ん
クスクス‥‥やっと寝ましたね
もうすぐ王城ですけど
‥‥ライ様
私の運命の人




