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36話 フラグが立ったって事はないですよね

レプンは、夕方過ぎぐらいにアーケロン商会を出て歩いていると、すぐに背後に和服姿の男が2人、距離を置いてレプンの後をついていく

レプンはため息をついて

懐に手を入れると小さな紙を取り出して、背後からついてくる男を顔だけ振り返って見ると、1人が駆け寄ってきて、紙を受け取り、中身を確認してから脇道に入っていった


「チトリに何を渡したんだ」

「アナタ達が欲しがっていた

夜の警備応援依頼ですよ、ホウ」

「そいつはありがたい‥‥で?」

「で?とは?」

「お前はどこに行くんだ?

まさか、独り占めするんじゃなかろうな」


ホウがニヤニヤしながらも俺にも寄越せと言外で言ってくるのに対して

レプンはため息をもう1度ついてから

ホウを呆れたようにみる


「まったく、昔から血の気が多いというか

こういう時の嗅覚は鋭いというか、本当にね」

「ほれみろ、俺にも寄越せ、ケチ臭い」

「‥‥商品の出所は極めて大切な場所からです

なので箱は、おそらくは5回くらいは頑丈な梱包がされていると思われます」

「なるほど、箱は開けていいのか?全部?」

「ええ、商品さえ無事に手に入るなら、箱に用はありません」


ホウはレプンにそう言われて、少し考えてからニヤついてレプンに問いかける


「その箱は猟犬より面白そうか?」

「夜限定の話で言えば、猟犬がジャレつけば

箱はグシャグシャになるくらいですかね」

「なんだ、つまらん

猟犬の方が面白そうとはな」

「気持ちはわかりますが

やめておいた方が良いですよ

アレは1か0ですから」

「そうだな、試したいだけで、命の取り合いをしたいわけじゃないんだが‥‥

まぁ、わかるがな

あの体格では試した瞬間に押し切られる事もあるからな」


ホウは少し残念そうにしながら、レプンと歩いて行く


「して、レプン

お前さん、結婚したらしいの?」

「‥‥誰から?アナタ達には落ち着いてからにしようとしたんですが」

「本当にミズクサイのぉ〜

どうだ?新婚生活は?甘酸っぱいか?」

「これがあるから後にしようとしたんですが

誰からです?」

「ライにハチミツ食わしたら

すぐにゲロりよったぞ‥‥‥

なぁ、レプンよ‥‥」

「‥‥言いたい事はわかります

懐くのは良いんですが、少し飼い慣らされすぎですね」

「まぁ、それもあるが‥‥

本当にスパイだったんか?猟犬は?」

「公爵家の猟犬ですから責任云々は知りません

それに本人はまだスパイをやっているんですから、邪魔してはいけませんよ」


沈む夕日に向かいながら、執事姿の男と和服姿の男が小さく肩を振るわせて、そのうち大きく笑い合いながら歩いて行く



前にもこんな事があったなと思いながら

ライは暗くて寒い森を歩いている

両手で持つ大きな編み込みのカゴバック

肩にかけてある大きめのバケットバック

背中にはリュックを背負っている


とある大きな木まで歩いて行き、木の根元に大きいカゴバックとリュックから取り出したタオルに巻かれた水筒2つ、ハチミツ漬け輪切りレモンが入った瓶、長細い木箱を置いて、また歩き出す

すぐにカゴバック等は消えて、短く小さい歓声が上がる


ライはさらに歩いて行くと小屋が見えてきたので、小さく呟く


「白狼と灰狼」

「アタリぃ」

「こうも当てられると嫌だなぁ、オイ」


ライの後ろから現れたナガルはライの持っているバケットバックを受け取ってライと並んで歩く

ダイアはライの後ろからリュックを開けて水筒とハチミツ漬けレモンが入った瓶を取り出す


「リーナ様は大丈夫なんですか?」

「ん〜、まぁ、大丈夫かな」

「穴を開けたくなかったし、ちょっと不穏な気配だから猟犬を呼んだんだがなぁ‥‥」

「何か問題でも?」

「なんか、なんともね‥‥動き出さないの」

「まぁ、そこも含めてお茶会だな」


ライ、ナガル、ダイアが喋りながら小屋に入ると椅子に座ったサマンサ、クロッサ、フリーがいた

ナガルがバケットバックを机に置くとクロッサとフリーが厚手の布に包まれた陶器の容れ物を取り出すと、その蓋を開ける

少し湯気が立つぐらいに暖かさを残したグラタンが出てきた


「暖かいのは嬉しい〜よ」

「猟犬ちゃんの宅配はハズレ無し」

「本当にね、重くなかった?」

「途中で置いてきたのは重かったです」


クロッサ、フリー、サマンサと話しながら

ライはリュックから長細い木箱を取り出し開けて、フォークとスプーンを全員に配る

受け取った順にグラタンを食べていった

ライは水筒の中身を机に乗っていたカップの中に注いでおく

しばらく無言でグラタンを食べてから、ハチミツ漬けレモンを片手にカップに注がれた紅茶を飲んで、ライ以外が一息ついて落ち着く


「美味しかった♪」

「猟犬ちゃんの料理は久しぶりぃ〜」

「希望、要望通りで嬉しい♬」

「補給の時間に呼んでよかったわ」

「‥‥‥コレは猟犬が作ったのか?」


ライは頷くと問いかけたダイアが少し考えてから、ライにまた教えてくれとお願いする

縋り付くダイアをかわしながら、ライは紅茶を飲み、レモンを食べているサマンサに聞く


「何が問題なんですか‥‥えっと」

「凶描よ、久しぶりに指令ではなく現場に来たからね

問題というより待機したまま、動かないのよ

何か待ってるのかしら」

「待つ、ですか‥‥んぐっ、美味しいです」

「ふふふ‥‥本当に好物なのね」


サマンサが笑顔でハチミツ漬けレモンを摘んでライの前に出すとライが笑顔で食べるので、面白がりながら、サマンサが説明する


「王都にある、この森は王家が作って

管理は周期毎に各公爵家が行う事になってるっていうのは知っていると思うけど‥‥

今日からボーゲン公爵家の管理になるのに

いきなりこんな事になるって事は何かあると

考えて、今、レプンが探っているのよね」

「手がかりはあるんですか?」

「何か掴んだみたいで、夕方ぐらいにダル様、ルドラ様に許可を頂いて動き出していたわ」

「番犬、骨犬、やめてくださ‥‥美味しいです」


話の途中でクロッサとフリーがハチミツ漬けレモンをライの前に出す

ライが食べると2人は笑い出して、ライの頭を撫でていた

そこからは雑談という名の作戦会議が行われて小1時間経った時にライが目を細めて黙り込む


「たぶんリーナ姉の体調不良はイッカクと‥‥‥猟犬?」

「‥‥森は一般人も入れるんですか、凶描」

「ん?そんなはずはないけど、貴族以上で、しかも許可を取らないと‥‥」


フリーはレモンを食べさせているライが目を細めて黙り込んだので、話しかけるとライはサマンサに問いかけた

ライの問いにサマンサが答えている途中で

サマンサが目を細めると、全員が武器の確認に入り始める


「真っ直ぐに食い破りなさい!猟犬!

白狼、灰狼は隊を引き連れて猟犬の後を喰い漁って、猟犬を追わさない事」

「白狼隊!出るよ!猟犬!待って!待ってよ!」

「灰狼隊!出るぞ!猟犬‥‥ハヤッ!」


サマンサが言い終わる前にレモンを咥えたライが消える

ナガルとダイアは小屋のドアを拳銃の持ち手で叩いて合図しながら出ていき、ライの後を追う

風が吹いていないのに、小屋周りの木々が少し揺れて、すぐに静かになった

その後をサマンサ、クロッサ、フリーは小屋を出て歩き出す


「‥‥本当に鋭いわね」

「ね!お母さんより早く気付くなんて意味わかんないよ」

「アレはもう獣並み」

「コッチは義理の息子が役に立つわね

愚息はリーナの件でとっちめないと」

「え!ソウジが来てんの?」

「リーナ姉はもう少ししないとわかんないけど

お母さんはおばあちゃん」

「‥‥アンタ達もオバさんになるのよ

‥‥抜かりなくやりなさい、番犬、骨犬」

「こっわ!ちょっと骨犬!煽んないでよ!」

「老猫でありぃ、凶描が本気ィイタっ!ごめんって!若猫様!」


サマンサに頭を叩かれてフリーが謝ると3人の姿が、夜の暗い森に溶け込んで消えて、周りの木々が少しだけ揺れた



王都の西側にある建物の一室で男性が壁を背に左手を上げて座り込んでいる

上げている左手は腕に2本、手のひらに1本のナイフで壁に縫い止められていた

男は荒い息をしながら自分の折られた両足を見て、原型を留めていない右手を動かし、顔をしかめてから、部屋の隅で震えて座っている若い男を見る

ため息をついてから、顔を上げるとナイフを右手に持って、姿勢良く立つレプンと目が合う


「黒狂が‥‥ご苦労なこった」

「こんな若造に踊らされるとはアナタらしくもない

まぁ、大体は知っていますし、アナタとそこの若造が会っている時点でわかっていますが‥‥

知っている事を吐いてくれたら、早く楽になれますよ」

「ちっ‥‥だが、お前が釣れた時点で成功とも言えるか」


男が薄ら笑いを浮かべると、3人がいる部屋に右手で刀を持って肩に担いだホウが入ってくる


「まだ、終わらしてないのか?黒狂

‥‥ほう、珍しいのが居たな

王都に帰ってきてたとはな‥‥たしか別名は‥」

「双頭の蛇ですね

片割れがいませんでしたが、それもまぁいいでしょう」

「面白くないな、本当に」

「‥‥殺戮まで来てやがったのか

くっくっ‥‥ゲホッゲホッ」


男はホウを見て、少し笑い咳き込む

ホウはレプンを見て肩をすくめてから、部屋の隅で震えている男を見て、呆れたように、ゆっくりとため息を吐く


「こんなもんとはな

この先、この国も思いやられそうだな」

「若者に期待して、育てるのも先達の役割‥‥

とはいえ、口だけの男にはそうなるのもわかります」

「で?双頭の片割れよ

冥土に行く前に置き土産はあるか」


ホウはそう言うと壁に腕を縫い止められている男の首に刀をあてる


「ハッハッハ!もういいか

もうすぐ森に帝国の至宝が入る

ソイツが森で行方不明になったら、警備をしている公爵家はどうなるかな‥‥

そして、向こうの本隊には片割れがいるからな

お前らがコッチにいるなら、成功する確率が上がるってもんだ‥‥ゲホッゲホッ」


咳き込みながら、薄ら笑いを浮かべる男を見ていたレプンとホウは顔を見合わせて笑い合う

男は笑い合うレプンとホウを見て、首をかしげて、イラついたように言う


「‥‥何がおかしいってんだ‥‥お前ら」

「これは失礼しました

おかしくて笑っていたのでは無くてですね

そうですね、例えばここに、全盛期の私がいたとして

今の時間に森へと入る事を命令されたら確実に断ります」

「人生の最後を飾りたいというなら、話は別だが‥‥

森で何かを成したいと、そう思うなら‥‥まず無理だろうな」

「どういう事だ」

「‥‥錆びつきましたね、寂しい事です

昔のアナタなら‥‥いえ、やめましょう

それよりも、帝国の至宝を森へ誘導したのは」

「そこの若造が惚れとる聖女で間違いないか」


ホウが顎で部屋の隅で震えている男の方をしゃくりながら、刀を持つ手に力を込める

レプンも右手に持っているナイフを握りなおす


「もう間にあわねぇよ、お前らがどんな手を使おうがな

聖女とか言う奴がいう事には

どんなに言い訳したとしてもボーゲン公爵家の責任問題になるとの事だったぜ

それにしても、アレが聖女か‥‥王家も認定した教会もヤキがまわっちま‥‥グッ」

「アナタに言われる筋合いはありませんね」

「まったくだ」


ほぼ同時にレプンがナイフを男の首に刺し、ホウが男の首にあてた刀を引いた

ホウは刀を振って鞘に納めると、ホウが入ってきた入り口に向かって頷く

すると、入り口から騎士の格好をしたシアンと男性3人が入って来た


「これが事の顛末をまとめた物です

詳細はダル・ボーゲン公爵、パラル・ボーゲン公爵閣下、ルドラ・アーケロン会長がお知りです」


レプンは懐から出した封筒を差し出すと男性の1人が礼をして両手で受け取り、懐に納めてから、部屋の隅で震えている男性を騎士の姿をした男性3人で支えて部屋を出ていく


「本当に情けない事です

なんでこんな事になってしまったのか」

「どこをどうすればこういう考えになるのか

そんな事を考えるだけ無駄ですね

所詮は愚者の」

「追い詰められていると勝手に考えている者を読み取るのは至難の技よ

それよりも後手に回らんようにな」

「そうですね、しかし、対処というのは‥‥

どうかなされたんですか?」


シアンは何かを思い出すように項垂れるとレプンとホウがそれぞれに語る

シアンは言葉を続けようとして顔を上げると

レプンとホウが何か楽しい事があったかのように、ニヤついているのが気になって聞いてみる


「いえ、森で事が起こるというのが気になりましてね」

「はぁ‥‥またしても、出遅れたか‥‥

レプンが行くから、ハズレ無しと思っていたのになぁ」

「そうは言っても、楽しそうに見えますが」

「そう見えますか?シアン様

ホウ、楽しそうに見えるらしいので

やめなさい、その顔を」

「それなら、レプンもやめたらどうだ‥‥

しかし、またこれでアイツが絡んだらと思うと

‥‥‥ブッ!ハッハッハ!」

「クックックッ!ハッハッハ!」


シアンは2人が大声で笑い出したので、困惑していたが、2人を見て思い当たる事があったのか、声を上げる


「まさか!ライちゃんがまた?」

「クックックッ!そのライちゃんがまた!

かもしれませんね」

「いや!たぶんくるな!ハッハッハ!

こりゃあ、何かに愛されとるな!」

「ふふふ、本当にそうなったら、そうかもしれませんね」


3人は笑い合い、思い通りにいかなかった時に拗ねるような顔をする人物を思い描きながら、歩いて部屋から出て行った



ライちゃんのぉ〜!3分クッキング!

ではなくて!

ライの夜間警備へデリバリーサービス!

寒さと仕事に耐えるアナタに

温もりと美味しさを!


ん?そうですね

そうですよねぇ!


ライと申します

別に本業が上手くいかないからといって

転職した訳ではありませんし

拗ねている訳でもありません


このままでいいわけでもないと思います

ですが、どうしたらいいのかもわかりません

自分を見失ったみたいですので

探しに行くのもいいかもしれません


スパイって‥‥なんでしたっけ?

なんでスパイをするんでしたっけ?

‥‥‥‥

はっ!そうでした!

勉強をしないと!良い点を取るとご褒美!

ちゃうの!もう!違うって!

自分がわからなくなりましたので

これが終わったら、旅に出ます!


どれが終わったらかですって?

本当は試験が嫌なんじゃないかって?

‥‥鋭すぎると良い事はありませんよ

明日には出ないと間に合わないので、急ぎます

そこまでは従順にしておいて、油断を誘って

‥‥アナタ達の期待には添えません!

絶対!ずぇったいにぃ!テストは嫌!

だからじゃないけど、逃げます!

本気で!本気なんだからね!


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