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33話 そんな程度って事はないですよね

馬車を見送りながら、ライは自分がこんなにも卑しいとは思ってもみなかった



あの後、ライは和菓子を買って帰ろうと思って席を立って礼をしたのだが、シアンが一緒にお茶をしてくれるなら、送ってくれると言った

丁寧に断ったのだが、カステラを奢ってくれるとのことだったので、ライは丁寧に‥‥

店内のテーブルでシアンとお茶をする事になっていた


さっきはホウに言われた食べ方だったから、すぐになくなったが、次は少しずつとライはフォークで切り分けて食べる

シアンはその様子を満足気に見ていたが

カステラがなくなって、皿に残った小さなカケラをフォークで、つついているライを見て、ニンマリと笑う


シアンは目の前に置かれたシアン用のカステラを少し大きめに切ってフォークで刺すとライの目の前に差し出す

口を開けて食べようとして

ハッとしてやめるライを見てゾクゾクしながら

シアンは笑顔で頷いてライにカステラを近づける

ライはすぐにカステラが刺さったフォークにまで、かぶりついてポンとフォークを口から抜いて笑顔でカステラをモグモグとしている

シアンは笑いながら、自分の小さくしたカステラをフォークで刺して食べていく


シアンはライにカステラを買ってあげて

荷物を持って、上機嫌のライの手を引いて馬車に乗り込んだ

ライがハッとした時には馬車の扉が外から閉められて、馬車が走り出した時だった


「あなたの飼い主達と交渉しようと思うんだけど、断られるでしょうね、きっと」

「なんの交渉かによると思います」

「あなたの所有権を譲って欲しいっていう交渉だけど、譲るって言ってくれると思う?」

「そんな事はわかりません」


窓が無く、行者と話す小窓があるだけの薄暗い馬車の中でシアンはジッとライを見ていた

ライはなるべくシアンの方を見ずに答える

少し目を合わせた時に背筋が凍るというか

見透かされる様な感じがしたので目を逸らして話すようにしていた


「何も全てとは言ってないのよ

少しだけ会うのを許してもらうのと

あの子達の近況を教えてもらいたいのよ」

「それこそ許されません

そんなまるで‥‥」

「スパイみたいな事かしら」


ライは言い淀んだ事を後悔した

シアンは微笑みながらライを見て話を続ける


「あなたが前に組織とやり取りという言葉に反応したのが気になっていたの

そして、今も何かを隠している」

「別に何もありません」

「‥‥聖女は何かを見る目を持つ

私は真実を見る目を持つとされて

次の聖女になると言われていたのだけどね」

「何を」

「ライちゃんが言ってくれるなら楽なんですけどね」

「何もありません」


横を向いて目を合わせないライにシアンは近づいて抱きしめるようにして近距離で目を合わせる

ライはワキザシに手をかける

それほどに恐怖した


「何も言わなくてもいいわ

怖いわよね、色々とバレるのは‥‥

だから、安らげる場所が欲しくないかしら」

「‥‥そんなのいりません」

「やっぱり何かを隠しているのね

‥‥ふふふ、ごめんなさいね」


ライは押しのけるようにシアンを離すと

シアンは笑顔で謝罪する

ライは再び横を向くが、次の言葉でシアンを見てしまう


「報酬は教会が専売しているハチミツなんてどうかしら」

「ハチミツって教会が売ってるんですか?」

「ふふふ、そうよ

修道院の貴重な収入源なのよね

それを個人に売るっていうのはしてないんだけど

私と偶にお茶してくれるなら報酬として

どうかしらっていうお話」

「‥‥ハチミツを‥‥くれる」

「そうよ

ちょくちょくお茶をするだけで、ハチミツが手に入るのよ」


ハチミツの話題になると

さっきまでの何も読み取れない冷たい目から

何かを欲しがるような、期待するような

そこから作る何かを想像して楽しんでいるような目になる

ライを見るシアンは背中がゾクゾクするのを隠しながら話す


「どうかしら?

悪い条件では無いと思うわよ

それに、あの子達の先の予定とかは言う必要はないわ

ただ、こうだった、ああだったとかを話しながら、2、3日に1回お茶をするだけ」

「それなら‥‥ハチミツってどのくらいですか」

「大量には無理だけど、必要な分は用意できるわよ

ウチに大量に余っているのもあるし」

「じゃあ、このくらいとか」


ライは両手で水を掬うようにする

シアンが笑顔で頷くとライは不安気にシアンを見上げていた顔が一気に笑顔になる

シアンはライを撫でると、教会へ寄って行くように誘うが、我に帰ったライがここでいいので下ろして欲しいと言った為、馬車を停める


「じゃあ、日取りは公爵家に連絡するからね

ライちゃん‥‥ううん、3つ首ちゃん」


ライは馬車を見送りながら、何を言ったと考えた

ハチミツはもらいたいし、甘い物は食べたい

歯は磨くので、2日に‥‥いや3日に1回なら別にいいよね

そんな事を考えていると後ろから抱きしめられる


「隙ありぃ〜!ライちゃ〜ん!」

「油断しすぎだろうが!」


黒いコート、ファー付きのフードを被った女性がライの背後から抱きつき、フードが脱げて白くてフワフワの髪が出てくる

女性は笑顔を浮かべてライに頬擦りをする

もう1人の女性はお揃いのコートで、フードを被らずにストレートで灰色の長い髪をおさげにして、ライに怒鳴っている


「ナガルさん、ダイアさんもまた来たんですか」

「または酷いと思うなぁ、思うの!」

「いいだろうが、後輩を迎えに来てやったんだ」

「そう言う事にしておきます」


ライは2人に言うと歩き出す

ナガルはライを抱きしめるのをやめて横に並んで歩く

反対側にはダイアが並んで、ライを挟んで3人は歩いて行く

ナガルとダイアはライより頭1つ以上背が高いので、凹の形となる


「あのさ、あのね、甘い匂いがするんだけど」

「迎えに来たから、食べさせてくれ」

「いやですね!コレは勝ち取った物です」

「珍しい、珍しく抵抗する」

「‥‥夜の休憩にも出ないのか」

「まぁ、少しなら」


ナガルとダイアはよし!っと喜ぶ

ライは呆れているとナガルとダイアはライを笑顔で撫でたり、抱きしめたりしながら話してくる


「いくつ」

「どこで」

「4つ、菓子屋前で6つ」

「あたぁりぃ〜」

「隠してたのにな」

「そっちは」

「明日の夜」

「レプンの旦那が出てくる量だ」

「大仕事」

「かなり」

「ちなみに同じ班」

「どこを」

「森」

「全般」

「広くないですか」


ライがむ〜っとしているとナガルとダイアは少し驚いた顔になる

そこからは他愛もない話になり、屋敷の門まで来るとライは足を止める


「‥‥知ってましたね」

「ホント?ホントに知らなかったの?」

「マジかよ、菓子屋に行ってたのは

この為だと思ってたのによ」

「どうしよう」

「もうさ、もうね、知らなかったで行こう!」

「そうだな!情報は手に入れたし

なんとかいけるだろ!」


門から3人は屋敷の方へ歩いて行く

屋敷が見えてくると玄関の所に馬車が何台も止まって、荷物を下ろしている

周りの執事、メイドを騎士達は笑顔で手伝っている

あれだったら早く終わるだろう

ライは屋敷の前で方向を変えようとするが

ナガルとダイアに肩を掴まれる


「離してください

アッチの屋敷に帰ります」

「スゴイね、スッゴクね、手を振ってるの」

「笑顔で振ってる‥‥初めて見たな‥‥」

「ホントに!逃して!お願いだから!」

「これで、ここで逃したら、3人から全員いじめられるの」

「大丈夫だ!見た目は上機嫌だ!近づきたくないくらいの殺気があるくらいで問題はない!明日の夜には‥‥来てくれるよな」

「だから!来て欲しいなら!連れてくな!」


ライは和菓子が入った紙袋を大事そうに持って、抵抗するがナガルとダイアに連れていかれる

カルナ、エリザ、マリアが笑顔でライについてくるように言って、3人の後をライはしょんぼりしながらついて行く


「かなり、結構、久しぶり!クー!フー!リーちゃん!

それとね、あとね!結婚おめでとう!」

「クロッサ!フリー!リーナの姉御!

結婚おめでとうだ!先を越されちまったな!」

「ナガルとダイアも元気そうね」

「ナガル!ダイア!久しぶり!

ナガルの喋り方、懐かしく感じるし!」

「ナー、ダイ‥‥エヘヘ、ありがとう」

「久しぶりに厄介な娘達が揃ったわね

忙しくなりそうだから‥‥あら?ライは?連れていかれたの?」


ナガル、ダイア、リーナ、クロッサ、フリーが挨拶を交わすとサマンサが周りを見渡しながら5人に混ざる


「先に帰ったヤツが報告してるから、聞いてるんじゃないか、ライの事」

「あんまし、あんまり教会と関わらない方がいいと思うけどなぁ〜」

「えっ?あの子はまた何したの?」

「サマンサさん達はまだ聞いてないのか?」

「じゃあね、じゃあさ、後でお茶しながら話そう!ちょっと長くなるから」

「‥‥あの子は‥‥ちょっと目を離すとコレなんだから」


ナガルとダイアが楽しそうに馬車の荷物を持って屋敷に入って行く

サマンサは笑顔で頭を抑えながら

リーナ、クロッサ、フリーは興味津々に荷物を持って屋敷に入っていった



お疲れ様です

ライと申します


ナガルさんは言葉は優しいですが目付きが鋭い

ダイアさんは言葉はキツいですが優しそうな顔

‥‥ギャップ萌えを狙っているんだそうです

わかりません

2人とも幼馴染で心に決めた男性はいるそうですが、踏み込んで来てくれないとか、踏み込むのはコッチからだと負けだとか

相手との間合いの話をしていました


うん?本題がわからない?

そうですね

屋敷に入った後の話ですか?

話だけで良いでしょうか

でないと長くなります

それに記憶が曖昧で

同じ事を何回も言わされた記憶があるのです

覚えている事だけ言いますね


カルナ様にしてもらえる全ては最高の喜び

エリザ様に抱きしめられるのは最高の喜び

マリア様にナデてもらえるのは最高の喜び

スノウ様に貰える全てのモノは最高の喜び


さて、自我はどこへ行きましたでしょうか

そこらへんの道端に落ちていないものか

探してきますので、ちょっと草むらに入って

あっ‥‥鎖を引っ張らないでください!

ちょっと教会に‥‥草むらに自我が生えてないかを確認してくるだけですから


状況ですか?

ユキ様、ウル様、ウル様、ヨミ様、ミカエル様に色々と話してもらった時に

何故か教会の話になり

昼のシアン様の話になり

何故かお茶した話になり

ハチミツの話になり

何故かスパイの話になっていました

話してもらっていたのに

いつの間にか話している事が多くなりました‥‥不思議ですね


スパイの話をした時には爆笑されて

笑顔で撫でられまくりました

はて?スパイって言うとなんで笑うんですか

だって、ココを調べて報告するんですよ

公爵家のメイドとしては許せません

だって、内部の裏切り者‥‥です!私がね!

忘れてたわけではないんです!

なんでどうしてですか

そのぐらいならいいって!

そんな事をしたら、ハチミツを貰えるじゃないですか!


‥‥いいの?いいかな?ホントに?マジで?

じゃ‥じゃあ、ハチミツを使ったパンケーキとか、クッキーとか‥

えっ!リンゴとかイチゴと一緒に?

私達の分も一緒に?贅沢ですし、ハチミツが足らないような‥‥

量を倍で請求するんですか

シアン様も呼べばもっと出してもらえる?

スパイの報告を目の前でするんですか

だからと言うわけではないんですが

好奇心と勇気を持って聞いてみました


‥‥もし‥‥もしなんですが

私が本当にスパイだったら

どうするんですか?


言った瞬間に大爆笑されました

カルナ様、エリザ様、マリア様、スノウ様に順に抱きしめられて

段々と柔らかくなってきたとか

スパイならもっと知らなきゃならないとか

お姉ちゃん達の何を知りたいとか

私だけのスパイとして雇ってあげるとか


どっちなんですか

もうバレたのか、まだバレていないのか‥‥

まだじゃない!まだじゃないです!

すでにバレているのかです!

後の事はわかりません

ただハチミツは最高の喜びです

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