32話 夢中にって事はない!です!‥‥ウマ‥‥
レプンが結婚した3日後にライはボーゲン公爵家の屋敷に移っていった
使用人の部屋として案内された所に行ったのだが
そこは部屋ではなく本邸から離れた2階建ての屋敷だった
ライは案内されて中に入って説明を聞くが、本当に使用人が使っていいのかと思うくらいに広かった
1階には広い玄関とキッチン、大きいお風呂、応接室と執務室がある
2階には広い部屋が6つあり、どれでも使っていい上に、掃除も毎日来てくれるという
途中で失礼します
こういうやり方は久しぶりです
ライと申します
この屋敷は、
現当主であるパラル・ボーゲン公爵閣下
が若い時に使っていた物だそうです
それを綺麗にしてくださりまして
私が1人で使っていいそうです
動揺ですか?してましたよ
していたんですが
もう10日経ちましたからね、慣れました
お風呂も準備してくれるし、掃除もしてくれるし、買い物もしてくれるし‥‥
何もさせてくれません
あ‥昼の体力作りと夜の訓練は参加してます
せめて、毎日作るお菓子を食べてもらおうと作って渡したり、夜警備の方に紅茶とお菓子を渡しています
なぜかユキ様やスノウ様から苦情が入りました
カルナ様が近日中に帰って来られるので、その時にお茶会を開くのでお菓子等を用意してもらうと言われました
速攻でシェフに泣きつきました
初めて交わす会話がこんなので申し訳なかったのですが、相談に乗ってもらいました
シェフは私が作ったお菓子を食べて事があるようで、色々なアドバイスと信用ができる所から買うのも手だと言われたので買いに行く事にします
今の現状を要約するとするとこんな感じです
‥‥‥
どういう扱いなんでしょうね?
毎日、どうしたら良いか悩んでいます
‥‥‥
そうですね、できる事‥‥
なんで!屋敷に住んでるんですか?
公爵家の敷地に?メイドが?他の使用人は寮とか!屋敷の住み込みなのに?なんで!
忘れてた!スパイだし!スパイなの!
価値がバグってませんか?
そうですよね?動揺してました
一生懸命にメイド活動を頑張りたいと思います
では、皆様ごきげんよう!
間違いです!失礼します!
少し雪が降る中、ライは王都の東に向かって歩いていた
ボーゲン公爵家の屋敷は、王都のほぼ中心、王城に近い所に建っていた
ライの目的地であるキレイ堂は王都の東側
簡単に東と言ってもメチャクチャ遠いとライは思う
公爵家へ食物を仕入れていた馬車の1台が東側の市場に帰る時に乗せてもらい、その後は地図を頼りに歩いている
ライはロングスカートのメイド服に膝まである白いポンチョと青のマフラーをしている
例によって、スノウから借りた物で前の物は回収されていった
ワキザシはルドラに見せた日に研ぎ直しに出してくれて、次の日には返ってきたので、慣れる為に毎日ベルトを巻いて腰の後ろにくるようにつけている
メイド服の背後にはワキザシを隠す為の布が付いている
もうなんか色々と刺繍されているので
膝までのポンチョを借りて隠している
ついでにワキザシも隠しやすいので便利に着ている
ライは今日は4つ?かなと思いながら歩く
何回か外出した事はあるが、絶対に屋敷から尾行がついてくる
帰ったら、何人かを聞かれるので覚えておくが、最近は難易度が上がっている気がする
ん〜、やっぱり6つか
また来てるのか、暇なのかな
地図を片手にキレイ堂が見える所まで来る
広い通りで東門の近くに大きい建物が建っている
他の建物と造りが違う為に実際より大きく見えるし、目立っている様に思う
建物の入り口の上には右から読むのかキレイ堂と書かれた大きな看板がかけてある
中で食べるスペースもあり、15脚程のテーブルがあり、ほぼ満席状態だった
ライは体に付いている雪を振り落としていると黒髪を首の後ろでまとめて、和服を着ている細身の男性に声をかけられた
「もし、あなたはライ様とおっしゃるのでは?」
「そうですが、あなたは‥‥」
「突然の事、失礼しました
キレイ堂の者で、センタと申します
ソウジより手紙で特徴を聞いていましたので
声をかけさしてもらいました」
「そうだったんですか、ライと申します
ソウジ様には和菓子でお世話になっておりました」
「こちらこそお世話になった様で
ソウジとは義兄弟の仲でして
いや、その前に中へどうぞ
チトリさんやホウさんも会いたがっていましたよ」
「では失礼します」
「ようこそ、キレイ堂へ」
センタがドアを開けてライを店に入れてくれる
店内は暖かく、ライはマフラーを外して折り畳んで腕にかけて持つ
「おお!ライではないか!元気だったか!」
「ホウ様もお元気そうでなによ」
「よく来てくれた!
色々と言いたい事もあったんだ」
「相変わらずでなに」
「おい!チトリ!
ライが来てるぞ!早く出てこい!」
「ハイハイ、毎度毎度騒がしい事です
ようこそいらっしゃいました、ライさん」
「チトリさんもお元気そうでなによりです」
厨房の方から出てきた口の周りが白くなっているホウが、厨房の奥に向かって叫ぶとチトリが出てきてライに挨拶をしてくれる
ホウが叫んだので、店内の客席から注目を浴びてしまった為にセンタが店の奥へと案内してくれる
「ここは土間と言われるスペースです
よければ、こちらの椅子をお使いください
もし、そちらに上がられるなら靴を脱いで頂ければと思います」
「いえ、こちらの椅子で大丈夫です」
「もうすぐ、ホウさんとチトリさんもいらっしゃると‥‥どうした?こら!挨拶をしなさい」
「こんにちは‥‥まぁまぁ」
土間から1段上がった所の柱の影から小さい顔を3つ出して見ていた子供達が逃げ出したので、センタが怒るがライは笑顔で手を振る
ホウとチトリが来たので、センタが全員にお茶を出す
「この前は世話になりました」
「本当に世話になった
アイツは逃げ足が速い上に、腕が立つので
苦労しておったからな」
「その話はこのぐらいでお願いします」
「そうですね、暗い話はやめておきましょう」
「そうだな、どう取り繕ってもそうなるわな
して、今日はどっちの用で来た?猟犬か?ライか?」
「あれはやめてください
公爵家の人達ですから、揉めたら酷い事になりますよ
‥‥なんか血の気が多くないですか?」
「そうですね、ホウさんはいつまで経っても落ち着きませんから」
「いや、待て!また出遅れたらかなわんと思って‥‥
いや、これが血の気が多いって事になるのか」
ホウが演技かかった仕草で言うと4人は笑い合う
少しお茶を飲むとセンタが和菓子を出してくれる
「となると、ライさんでご来店ですか」
「はい、もうすぐソウジ様のお客様がこちらにいらっしゃると言う事で買いに来ました」
「‥‥ここの物を出してくださると」
「まだ、コッチに来て日が浅いものですし、
ソウジ様のオススメで、信頼のおける店はココしか知りませんから」
「なんと、ありがとうございます」
「ハッハッハッ!腕の見せ所だな!チトリ!センタ!」
チトリとセンタが頭を下げてくるので
ライはこちらこそよろしくお願いしますと頭を下げる
チトリはセンタに言って色々と見繕ってくるように言うと、そこからは他愛無い会話をする
「じゃあ、ソウジ様はホウ様の息子さんで
センタ様はホウ様の娘婿となるのですか?」
「そうよ、菓子の腕もアッチの腕も俺が鍛え上げたからな」
「ホウさんは食べていただけでしょうに
‥‥お客様ですね、毎度の事ながら仰々しい事です」
「お得意様ですか?」
「そうさな、裏も表もといった所よ」
ホウが言うと3人ともお茶の入ったカップを置いて、しばらく無言でいるとセンタが女性を伴ってやってくる
「これはこれはシアン様
ようこそいらっしゃいました」
「あら?今日は珍しい客がいるわね
この前は世話になったわね、ライ」
「こちらこそお世話になりました」
チトリとライが立ち上がって挨拶すると、白のロングコートを着たシアンが笑顔で手を振ってくる
前回会った時は騎士の鎧を着ていたので、凛々しく見えたが、今日は砕けた態度に見えるとライは思った
チトリが椅子を引くと礼を言ってシアンが座る
シアンが立ったままのライに座る様に促したのでライもテーブルを挟んで対面に座った
「今日は何用ですかな」
「報告だけ、後は私用でお茶ね」
「と言う事は」
「ええ、あなた達の繋がりは無いという事で無罪放免ね」
「ありがとうございます」
「ついでに言うと異例の速さだけど、マドワ侯爵家の取り潰しが決定
領地はボーゲン公爵家の統治へと変わるそうよ」
「‥‥それはまた‥‥
こんな所で喋らん方が良いのでは」
「あら?ここより安全な場所はないわ
なにせ殺戮、悪辣、ワンちゃ‥‥3つ首ちゃんが揃っているんだもの」
ライはホウとシアンが喋っている内容に、ん?と思ってホウとチトリを見ると2人もライを見て、ん?といった感じで見ている
シアンは3人を見て楽しそうに笑う
「ふふ、お互いを知らなかったのね
ホウが殺戮、チトリが悪辣」
「あれは若気の至りだな」
「だだ命令を遂行しただけなんですがね」
「そして、ライ‥ちゃんは、教会の3つ首ちゃん」
「初耳ですし、誤解を招きますので、やめてください」
「これも若気の至りかな」
「ただ命令を遂行しただけなのに不憫な」
「ホウ様!チトリ様!仲間に引き込もうとしないでください!」
ライ以外が笑い合う
ふとホウがセンタの持っている盆の上にある菓子を見て考えてから、皿に乗った菓子を取る
「まぁまぁ、これでも食べて落ち着くといい」
「これは何ですか?ケーキ?」
「カステラという菓子でな
ハチミツをたっぷりと使ってある」
「ハチミツですか?」
「そうだ
食べ方は‥‥そう食べるんじゃない
こうカブッといけ」
チトリ、センタ、シアンが何かを期待する目をして、ホウに教えてもらった通りに紙に包んだカステラを手に持ってかぶりつくライを見ている
「どうだ?美味いか?」
「‥‥うん!美味しい!」
「ハッハッハッ!やっぱ!好物だったか!」
ライが笑顔で答えるとホウ、チトリ、センタは快活に笑うが、シアンはジッとライを見ながら、ぁあぁあ可愛いと呻いていた
すいません!
今だけは邪魔しないでください!
カステラ‥‥ハチミツ!うんまっ!




