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29話 だからハッピーって事はないですよね

笑いがおさまった頃にライは恐る恐る振り返るとユキとウルが手招きをしていた

ダルを見ると笑いながら頷いたので、トボトボとユキとウルの前に立つと頭を撫でられて、飴を口に入れられた


「で?ウチの猟犬がどこまでやったと思って、今日来たんだ

話を聞かねぇ事には、俺らもどこまで喋っていいかわからんからな」

「おい!ダル!

聞いてなかったのか?アーケロン商会のワンちゃんだって言ったんだぞ!」

「やかましい!今は裁判の事が先だ!

この事は、後でゆっくりと話してやるからよ」

「その者はボーゲン公爵家の猟犬だったと?」

「‥‥そのまま動くとなるとややこしいだろう」


シアンはダルの言葉に納得して、再度ライを見る

ユキとウルに撫でられたり、ヨミには抱きしめられたり、逃げようとして、ヨミとミカエルにサンドイッチにされたりして、その様子をカマクがゲラゲラと笑って見ている

シアンはこんな子が?と思うが、ダルに言われた事を思い出して、説明する


「まずはお礼を申し上げます

猟犬が子供達を庇いながら、あのダトスと互角に渡り合ったと聞いています

殺気を振り撒いて気を引いて、私達が近づいてくる事を悟らせなかったとも」


周りの使用人達はざわつくが、レプンが咳払いをすると静かになる

ダルとルドラは真っ赤になって抵抗しているライをチラッと見て、シアンに続きを促す


「人身売買の拠点は移動を繰り返し、ダミーも多かったのですが

年明けから王都を脱出しようとする動きが見られました

元同胞を捕縛し、身の潔白をはらしたいという者の力を借りて探していた時に、殺気を振り撒いてやり合っている者がいるとその者達が走り出し、前述の通り、ダトスを捕縛する事に成功しました

その際には猟犬の姿はなかったのですが

子供達の証言、ホウ、チトリといった手練れの者が話すに猟犬で間違いないとの事でした」

「‥‥まぁ、合ってるな

拠点の中にある物はどこまで知った?」

「全てと言っても過言ではないかと

ダトスがいて安心していたのか‥‥

教会の者が取引の最中でした

目撃者も多数おり、子供達の証言もあります

隠す事もできないでしょう

それに拠点の中からは、我々が今まで隠していた事も知る事ができました

もし、猟犬が証拠の何かを持ち帰っているなら教えて頂きたいと思います」

「ふん、色々と名前が出てきてないのはなんだ?

こうなってもまだ庇う気か?そんな相手に話す事はないな

明日の裁判で俺らから世間に発表してやる!

身内の浄化もできない未熟な奴らとしてな!」


シアンはダルの言葉に黙り込む

少し俯いていくシアンにダルは

どうした?早く吐け!こっちは何も知らんのだ!

と背中に少し汗をかきながら、怒るような尊大な態度でシアンの言葉を待つ

ルドラ、ユキ、ウル、ミカエル、カマクは察しているのだろう

ライが余計な事を喋らないように構いまくっていた


「マンス大司祭が取引をしていました

マドワ侯爵家とは血縁関係がある者です」

「‥‥それだけか?

ここにいる奴らは口が硬い、それに

漏れれば、全員を処理する事になっているから安心するといい」

「そちらにいる猟犬の鼻は本当に敏感ですね

ホウやチトリが言っていたようにうらやましくもあり、恐ろしくもあります

昨日から今日にかけてマンス大司祭を尋問、周辺を調べた結果‥‥‥

オレオ枢機卿と繋がりが深い事が判明しました」

「‥‥まぁ‥‥そんなもんか‥‥

若者をイジメるのはここまでにしとくか

んで、俺らは裁判ではのらりくらりとしとけばいいのか」

「はい、追及や議題にもしないのが、こちらの方針です

今日にでも決着をつけて、近日中に発表できるかと思います」

「‥‥そうか、そうなのか?」

「はい!ダトスを捕まえた事が良かった

アイツは腕を買われて、オレオ枢機卿、マンス大司祭の近辺で目撃されていました

それに、元同胞の不始末という事で苛烈な取り調べが行われて、まだ色々と吐いているそうです」


ダルは横目でライを

何で俺がこんな小娘を騙したみたいな交渉をしなけりゃなんねぇんだよ!っといった感じで睨む

ルドラ、ユキ、ウルが吹き出して、カマクはゲラゲラと大笑いする

ライはダルを見て怯えているが、

後ろから、笑っているミカエルに抱きしめられて、ホラ!笑顔!って言われている

空気が和んだのか、シアンは少し笑顔を見せてからダルとルドラに頭を下げる


「これは私事で申し訳ないが

彼女を‥‥サキをなんとかできないでしょうか」

「おやめください!シアン様!

私も侯爵家の娘です!

こうなってはどうしようもないのは分かっています」

「しかし‥‥」

「いえ、これも罰なのです

こうなって分かったのですが、

あの時、カルナ‥様やエリザ様、マリア様に濡れ衣とも言いがかりとも言える罪を被せてしまった

それが返ってきているだけですから」

「それならば、私もそれ相応の罰を受けねばならないだろう」

「シアン様はあの時、中立で裁く方でした

もし、罰を受けるのならば、聖女を名乗っているあの女です」

「そこまでだ!孫の事を出されると俺も‥‥

いや、ここにいるヤツらがマズイ事になっちまうからな」


ダルが止めるとシアンとサキは周りを見渡す

目を伏せてはいるが、立っている執事とメイドは何か恐ろしい者に見えたし、ルドラやユキ達はレプンが入れている紅茶を冷たい笑顔で飲んでいるように見えた

ライは両手で口を押さえて、飴が出ないようにしながら口の中でコロコロしていた


「申し訳ありません

‥‥そのサキの事をどうかお願いできないでしょうか」

「そうは言ってもな

教会で預かるとかはできねぇのか?」

「このような時で、しかも渦中の家の者です

身内の浄化をする時にこれでは‥‥」


そんな時に騎士の1人が布に包まれた物をシアンに差し出す

シアンはあっと声を出して布を開けていく


「忘れておりました

このタイミングで出すのもどうかと思いますが

これが現場に落ちており、これでダトスの足を撃ったのではないかと

コレの持ち主は猟犬でよろしいでしょうか?」


出てきたのは小さな銃だが、切れ目が入り壊れてしまっている

ライはそれを見ると青ざめて後ろに下がると笑顔のユキとウルに捕獲される


「どうしたの?猟犬ちゃん?

アレは猟犬ちゃんのオモチャかしら?」

「証拠を残すなんて猟犬ちゃんのやる事じゃないわね

誰のかしら?言ってごらんなさい?」


何か考えついたのか、ユキとウルはダルとルドラに目配せをする

ダルとルドラはオッケー、分かったと言った感じですぐにユキとウルに乗っかる事にした

ライは口をモゴモゴとさせながら喋ろうとするが、上手くいかずにレプンを見る


「ほう、ありゃあお前のものだったな、レプン」

「しかしながら」

「言い訳はいいぜ、レプン

お前は昔から自分の手柄を部下にやる癖があったなぁ

だが、今回の1番手柄はレプンで決定だ」

「そうだな!そうなると何が良いか迷うが

お前は、いつも俺らの為になる事を選んじまうからな」

「はい‥‥しかしながら」

「なら、俺らが今困っている事を解決して」

「ああ、しかも祝い事になる!断るわけにはいかねぇよな!」


レプンが困りながら、それでもダルとルドラを言う事を理解したのか止めようとしている

スコーパーはそこまで黙って見ていたが、大声で笑い出して困っているレプンを見る


「ハッハッハッ!覚悟を決めろや!レプン!

お前には俺も親父も、ダルの親父でさえ恩義を感じている

こういうことになっちまったが、いいじゃねぇか

なるようになるもんだ、こういうのは」

「スコーパー‥‥社長!こういう事は」

「なぁ、サキ・マドワだな、まだ」

「はい、スコーパー社長」

「今からよ、サキ・クルーズになっちゃくれねぇか?」

「えっ!」


周りがざわつく中、レプンが上を向いてから、ライを睨みつける

ライは何か喋ろうとして、飴を吹き出しそうになるのを堪えるとユキにもう1つ飴を口に入れられる


「襲撃にあったとも、暗殺されそうだったとも聞いているぜ

辛かったろうが、レプンが夫になるなら、ココの‥‥アーケロン商会の家族って事になる

そうなったら、ボーゲン公爵家も黙っちゃいねぇ

選択肢は無いように見えるが、もし選んでくれるなら、俺の相棒であるレプンの嫁だ!

悪いようにはしないと、このスコーパー・アーケロンが誓うぜ!」

「そんな‥‥私みたいなのを‥‥」

「俺は短気でな、ハイかイイエで答えてくれ!

もし、ハイなら、恩義あるレプン・クルーズの嫁さんだ!このルドラ・アーケロンも誓ってやろうじゃないか!」

「‥‥ハイ、ありがとうございます」


サキが言った瞬間に執事とメイドから歓声があがり、ユキとウル、ミカエルは笑顔で拍手している

カマクはライの背中をバンバンと叩いて

ライは口から飴が出ないように必死になっていた

ヨミは呆気に取られているが、真っ直ぐに立って、ライを睨みつけているレプンに近づいて行って、肩を叩いて小声で言う


「可愛いお嫁さんを大事にするのよ」

「‥‥‥」

「あら?照れちゃって可愛い所も残ってるじゃない?黒抂ちゃん」

「昔馴染みに言われると寒気が走りますね」

「盛大に祝ってあげるわよ

今年中、遅くとも来年の初めには子供も抱かせてね」

「‥‥私が父親?冗談も」

「念願でしょ、楽しみにしてるからね」


ヨミはレプンにウィンクを見せて、シアンに提案をする


「シアン様は結婚を取り仕切る事はできますか?」

「はい‥‥そうですね!やってしまいましょうか!」

「あの‥シアン様」

「あの‥ヨミ‥様」

「あら?息ピッタリね

夫婦になるには今しかないと思うけど‥‥ハイ!ライちゃん!」


ライはヨミから振られて頷いてしまう

周りから笑い声が出ているが、ライは飴を飲み込んでしまいそうになり、苦しそうにしていた


その後は、応接間が結婚式場となり、多数の執事やメイドが駆けつけてサキを着飾って、レプンも着替えさせられる

シアンと騎士によって誓いの言葉が交わされて、誓いのキスで怖気付くレプンと覚悟を決めて目を瞑るサキを見て笑いが起こる


「さっさとやれ!レプン!

花嫁は覚悟決まってんだ!待たせんな!」

「そうだぜ!この後、色々とやんなきゃならねぇ事があるんだ!俺らの時間を削るなって、よく部下に怒ってんだろうが!」

「みんなぁ!レプンが照れてるわよー!」

「あのレプンが男らしくねぇな!オイ!」

「わっわっわっ!いったぁ!」

「さすが!レプンだ!腹が決まったな!」


ダル、ルドラ、ヨミ、スコーパー、ミカエル、カマクに急かされるようにレプンが誓いのキスをすると盛大に拍手と歓声が起こる

キスが終わり、抱き合っているサキとレプンは見つめあっている


「流れでそうなったとはいえ、アナタを生涯守り抜くと誓います」

「はい、レプン様」

「レプンでお願いします

サキ、良い夫婦となりましょう」

「はい!レプン!」


ライは口の中にある飴が小さくなってきたし、皆んなが祝い事に集中している隙に壁際をコソコソと入り口に向かってゆっくり歩いていた

入ってくるメイドと入れ替わりで外に出ようとして、肩を捕まえられる


「どこに行こうってのかしら?ワンちゃん?」

「ヨミ様‥‥

その‥‥お茶を‥‥お持ちしようと」

「こんな祝い事の最中に?

それにワンちゃんには聞かなきゃならない事が沢山あるのよ」

「いや‥‥外の空気を‥‥」

「レプン!猟犬に言いたい事はない?」


飴が口から出ないように途切れ途切れ喋るライはチラッとヨミを見ると目が怪しく、紅く光りながらライを見て、ニヤついたと思ったら、レプンに聞く

レプンはライを笑顔で見て


「あの銃は高かったので、それぐらいはココで働いてください

わかりましたか?猟犬」

「‥‥はい‥‥レプン様」

「違うでしょ‥‥‥‥なのよ」

「いや!いやです!」

「味方は必要よね」

「‥‥‥‥」

「ヨミ様、あまり甘やかしてはいけませんよ

ライもあまりヨミ様の言う事を真剣に受けてはいけません、ライ?」


ヨミはニヤニヤしながらレプンを見て、横で目を伏せているライの背中をパンっと叩く


「はい!レプンパパン!」



どうですか?

どうですかね?

アットホームな職場らしいです

皆さんはレプンパパンに結婚等の祝い事を祝ってもらった人ばかりで

レプンパパンが結婚しない事や、祝わせてくれない事を心配していたそうです


レプンパパンは子供を見せると顔には出さないそうですが、デレデレになるそうなので、良いお父さんになりそうとの事です

サキママとは年齢が離れていますが

それはこれからの喜びと困難の大きさに比べれば、対した問題ではないとシアン様や騎士様がおっしゃっていました


アットホームですね

アットホームかぁ

‥‥‥

もういいですよね

ライです

ああ、はいはい、ライちゃんですよ


もうここからどうなるってんですか?

関係あります?スパイって?

バレたくはないって

アットホームなら許されるんじゃないですか

もうさ、もう本当にさ!


‥‥でも、ですね

身内の浄化って厳しいんでしょうか

元同胞への苛烈な尋問ってなんでしょう

えっ‥‥でも、ボーゲン公爵家のメイドですし

アーケロン商会のアットホームは違うんじゃ‥‥


スパイの立ち位置って難しいですね

ちょっと飴ちゃんを貰ってきます

んぅ〜

美味しいですね

何か忘れてないって

もうね、美味しいです!

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