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27話 ここがいいって事はないですよね

ライは工房でのやり取りと外が段々と夕暮れになっていくのを交互に見ながら、どうしようかと思っているとシフが周りに声をかけてから、ワキザシを持ってくる


「悪いね

皆んなが興奮しちゃってさ、私もだけど

お義父さんが打つなんて久しぶりだったし

こんなのを見せられちゃうとね」

「いえ、そんな」

「依頼の2本は普段遣いなんだね

任しときな

やる気が出てきたからね」

「お願いします」

「おい、お前は駄目だろう」

「まだ大丈夫だよ

それにこんなモン見せられたんだよ

黙っていられるわけないね」

「本当に無理はしないでください

時間はかかっても全然いいですから」


シフはお腹をさすって、心配するハンゾーとライに笑う

ライはワキザシを受け取ると、ベルトが少しベトついたので、ハンカチを取り出して全体的に拭いていく

ベルトを腰に巻いてワキザシを1度抜き差ししてみて、大丈夫なのを確認してから頭を下げる


「ハクゾー様の件はよろしくお願いします」

「汚くしちまったかい?

悪いことをしたね」

「お気になさらず

使うような事態が起きた時に

滑って落としたでは意味がありませんから」

「‥‥本当にすまないね」

「別に気にしてませんから

では、失礼します」


ドアが閉まって、少し経つと静かにしていた職人達も息を吐く

シフは頭をかいてから、ハンゾーの肩を叩いた


「寒気が走ったよ

なんて子だよ、ホントに」

「怒っていたな

そりゃあ、こんな手でベタベタと触っちまったからな」

「本当に悪い事をしちまったね

子供とはいえ、礼儀を欠いたからね

変な我慢をさせちっまったよ」

「少しの間とはいえ

あんな風に思われる物を作ったのか、親父は」

「やる前から敗北宣言かい?

私も刀は打った事がないから、なんともいえないけどさ」

「いや、俺は得意な物で勝負するぜ」

「そうだね、次は笑顔でここを出て行ってもらうよ、ライちゃん」


シフがヨシっと気合を入れると職人達もおうよ!と答えて作業に戻ると

また工房に鉄を叩く音がいつものように響き始めた



ライは商会までの道を急いでいた

走らないにしても、早歩きで進んでいくが、周りを見ると、もう日は隠れ始めていて、影も長くなっていた

ライはふと止まると地図を出して、商会の方角を確認するとふらっと小道に入って行った


小道に入ると建物は密集していて、道が入り組んでいるけども、建物の上を走れば問題ないと姿勢をできるだけ低くして、走っては飛んで真っ直ぐに進む

目指すは昼にいた大通りの売店なので、商会の方角とは少しズラして進む


ライは走りながら下の通りも見ていく

雑多な作りで入り組んでいるし、行き止まりも多いから迷い込んだらわからなくなるだろう

初めてなのはもちろんだけど、地下もあるんだろうか

気配が前にいた街より格段にわかりづらい

今もそこらかしこに近づきたくないのがいる

そんな気配を頼りに進むと行き止まりに追い詰められるなんて事があるだろうなと思って、足を止める


嫌な気配がする

それはわかるけど、それよりも


「まてや!」

「やっ‥‥だれ‥‥グッ」


見てしまった

ドアが開く音に反応して、そっちを見たのが悪かったのだろうか、あるいは


「はな‥‥せ」

「行きたく‥‥ないの」

「黙れよ、良いところへ連れて行ってやるってんだよ」

「そうだぜ、もしかしたら、良い思いができるかもしれないんだ」

「離して」


ライは話し声がハッキリと聞こえる距離まで近づいて、大人の男性2人が子供3人を蹴って、髪を掴んでいる所を見てしまう

よくある風景なんだろう

誰も出てこないし、男性2人も周りを気にせずに子供を痛めつけている

そんな時、夕日が王都を囲む城壁の向こう側に姿を隠すが、ライは夕日の方を見ていなかった


子供の1人が逃げようとしたのを追いかけようとした男性が上から降ってきた黒い塊に当たって、倒れる


「なにし‥‥‥ゲガッ」


もう1人の男性が笑いながら、声をかけようとして黒い塊から生えた刃物に首を横薙ぎにされて言葉が出なくなり、後ろに倒れる

黒い塊が立ち上がると3人の子供は驚いて、お姉ちゃん!と叫ぶ

ライはもう1度黒い塊に戻りそうになるのを我慢して3人を一瞬見てから、右手にワキザシを持って、男性や子供が出てきたドアの方を見る


「お姉ちゃ‥‥」

「なに‥‥」

「何かあるの」


ライは答えずにドアの方を見ていると黒い短髪で、背はライよりも頭1つ分以上大きく、細身なのに、ガッシリとした体格に和服を着て、刀を右手に持ち、左手で無精髭をいじっている男性が歩いて出てきた


「いい気迫だ、鬼子の類か

バレちまうとはな」

「別に見逃してくれるなら」

「そうは言ってもな

2人やられてるし、待つのも飽きたんでな

暇つぶしに遊んでいけや」

「‥‥‥王都で待っているんですか?」

「あん?探りか?

そうだなぁ、そういう命令でな

どうだ?どっかの土産になりそうか?」

「やりとりは直接でしたね」

「こうなっちまえば、そうなるわな」


ライは体を急に右にズラすと、元いた所に刀が振り下ろされる

ワキザシを男性の首元に刺そうとするのをやめて後ろに飛ぶとパン!パン!の音と共にライは吹っ飛んでいくが空中で一回転回って、滑りながら着地する


「痛!いてぇな!なんだそれは!

珍しい物持ってんな!鬼子!」

「これでも護身用だそうです」


男性はライが刺そうとした瞬間に蹴ったのだが

ライは後ろに飛んで、蹴ってきた男性の左足に押し当てるような形で、レプンからもらった護身用の銃を撃った


「踏ん張りが効かんが

まぁ、これぐらいがちょうどいいか

試しただけなのに手痛いな、鬼子よ」

「強がりですか、ダサいですね」

「‥‥‥先程から大した殺気だ

怒気か、怯えか、いずれにせよやるには惜しい鬼子だな」

「やってから言ったらどうですかね」


ライの頭上から刀が振り下ろされる

回避が間に合わない速度な為に、ワキザシを刀に合わせるが、ライは弾かれる様に後ろに吹き飛んだ

男性は両手で持った刀を地面ギリギリで止めて、ライが吹き飛んだ方向を見ている

3人の子供が座り込んでいる横の建物と建物の隙間に吹き飛んで、入っていった

男性はあの間に?とあたりが暗くなっている中で目を凝らすと、建物の間から何かが飛んでくる

反射的に刀で弾くと小さな拳銃だった

男性は目の端で右上から飛んでくるライを見つけて、ワキザシに刀を当てるが、足の踏ん張りが効かずに後ろの建物の方へ数歩よろめく


「ハッハッハッ!やるなぁ!鬼子!

暇つぶしに潰されそうッ‥‥なっガ」

「抑えろ!暴れるな!」

「口を縛れ!」

「刀を奪え!」


男性がライに向かって楽しそうに喋っていると

後ろの建物と建物の間から和服姿の男性と軽装備の騎士が計5人飛び出してきて喋っていた男性を押し倒して縛り上げていく

次に建物の間からメガネをかけた優男が出てきて、子供達を見ると上を見ていたので釣られて上を見ると黒い塊が薄暗くなっている空に消えていった


「アレはもう追えんよ」

「ホウさんでもですか?」

「あんなにわかりやすく殺気を振り撒いて

気を引いた上に呼んでくれたんだ

もういいだろうよ

それに、今からはアッチの時間だからな

試しに追ってみるかチトリ、止めはせんぞ」

「いえ、今はコッチを優先します

行くぞ!お前ら!抵抗するなら斬り伏せろ!」


チトリが声を上げて開いているドアに駆け込むと10人程の和服の男性が続く

騎士が子供に駆け寄っていくのをホウは見ながら騎士に押さえつけられて倒れている男性に声をかける


「年貢の納めどきだ、ダトス

お前さんはやり過ぎた上に‥‥

あんなものまで飯のタネにしちまった

元同胞とはいえ、鬼には情けもかけれねぇよ」


口を縛られているダトスは何も言えずにウゥと唸っている

ホウの横を腰までの白髪で鎧を着ている女性が通り過ぎていく

女性は3人の興奮している子供に近寄っていくと、しゃがんで話しかける


「大丈夫?あなた達は‥‥」

「お姉ちゃん!久しぶり!」

「大丈夫だよ!ご飯ありがとう!」

「いつもご飯をありがとう!

「炊き出しを貰いにくる子達ね

この頃は行けなくてごめんなさい」

「うん!でも今日は違うお姉ちゃんにもらったの!」

「バサバサックルッとするお姉ちゃん!」

「高い所から助けに降りてきてくれたの!」

「私じゃなくて‥‥誰かしら?それは」

「わかんないけど、商会の‥‥」

「そう!アーケロン商会のマークがバサバサに入ってた!」

「あとね!あとね!背中にね!」


そこで3人の子供は笑いながら声を揃えて言い切る

それを聞いた直後に女性は、後ろから我慢しきれず咳き込む様な笑い声を聞く


「「「可愛いワンちゃんのマーク!!」」」


女性は首を傾げるしかなかった




ライはアーケロン商会の建物前で立ち尽くしていた

あの後、建物の上に置いておいたマフラーとケープを回収して、大通りに急いで行ったが、店が閉まっていた

暗がりの中、どうしようか

でも、帰らないといけないよねと考えながら

トボトボと帰っていると暗くなって周りの印象が変わったのか、少し迷ってしまう

夕飯の匂いがするぐらいにやっと商会に辿り着くも正面の扉は閉まっていた


「なんだ?どうした?入らないのか?」

「‥‥カマク様」


後ろから声をかけられて気づく

カマクに気づかなかったのは、知った人の気配がわかる様になって、嫌な気配でなければ警戒しない様になってきたからである


「どこから入るんですか?」

「カマクだ!帰ったぞ!」


カマクが怒鳴り声を上げると、すぐに正面の扉が開けられる

中には執事とメイドが並んでおり、しばらくして2階からはミカエルが降りてくる


「遅れて申し訳ありません」

「あら?時間を守れなかったから

カマクを味方につけて帰ってきたの?」

「そう言ってやるな!

初めての王都で興奮して、帰り道がわからなかったんだろう!さぁ!飯にしよう!」

「まぁ、カマクったら甘いんだから、こういう事はちゃんとしないと」

「ヤンチャなくらいがちょうどいいんだ!

こういうのはな!」

「もう!カマクったら!」



甘い雰囲気で誤魔化せました

カマク様とミカエル様は将来の話をしながら

ご飯を食べていました

カマク様とミカエル様のお子様ですから

ヤンチャではすまないような気がします

が!今はそんな時ではありません!

ワンちゃんです!ちっっがぁう!

ライちゃんです!


聞いてください

部屋でシャワー浴びて

着ていたメイド服を片付けようと思ったら

背中につけられた生地の背中あたりに

目がバツになった犬の刺繍が‥‥

今、考えるのはこれじゃないのに‥‥


メイド服をハンガーにかけてクローゼットにしまおうとすると同じ様なメイド服が何枚もかかっていました

というか、それしかありませんでした

他の刺繍?見ない方が良いと思います

明日は普通のメイド服を探す事から始まりそうです


あ!護身用の‥‥

レプン様は優しい方だと思います

時折、厳しいと聞いています

でも、優しい方だと聞いています

何かが持たない気がします


本当に考える事は

組織があんな事をしていた事です

あの男が王都で待っていた人なんでしょうか

でも、やり取りの事を出すと襲いかかってきました

命のやり取りをするという事はクビなんでしょうか

切り捨てられたという事でしょうか

本当にそうなんでしょうか

どうしようかと悩んで悩んで

いつの間にかアーケロン商会に帰ってきました

えっ?なんですか?キソウホンノウって


もう悩みたくありませんので、寝ます!

そうだ!寝る前にワキザシの手入れをします

今日もありが‥‥‥これなに‥‥

刃が‥‥欠けて‥‥

こんなの知られたら‥‥

スノウお姉ちゃんに怒ら‥‥


明日はいい事がありますように!

スノウ様には会いませんように!

公爵家に行きたくなぁい!

ここがいいのぉ!


でも、待ってください

組織がここに来たら、美味しいご飯も、フカフカのベッドも‥違いますね

色々とバレてしまいますね

冷静になって考えるとそうなります

じゃあ、これは今日までって事ですか‥‥

はぁ、もうどうにでもしてください!

一旦寝ます!おやすみなさい!

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