24話 構ってもらえないって事はないですよね
王都まで10日の予定でガタガタと揺れながら馬車は進んでいた
小さな馬車で、3人だけで進んでいるから、もっと早く着く予定ではある
ライは旅の途中はあまり退屈はしなかった
ホウは博識で、色々な話や独特な和歌という歌を教えてもらったり、あやとりとかいう遊びを教えてもらったりしていた
野営の仕方も詳しくライはホウにくっついて歩いて色々と学んでいった
あまり喋らなくなったサキの世話はあまり苦ではなかった
ワガママが来ないので、逆に色々と世話を焼くと構わないでと言われた
ハクゾーからもらったナイフ?は、ホウ曰くワキザシというものに近いらしい
「流石はハクゾーといった所だ
刃文はヒタツラだな、華やかよの」
持ち手、鞘は黒で統一されていて、刀身は30センチ位、持ち手を含めると50センチぐらいになる
ライはどこに持つのか?とポケットに入れたりして悩んでいるとホウが革紐とかで鞘を器用に縛って腰の後ろ、ワキザシが真横になるように鞘を革紐にに括り付けて腰に巻いてくれた
王都に行った時にベルトを買うまでの代用品として使えという事だったが、正面から見ると横にだいぶ出ているみたいで、ホウは苦笑いしていた
「抜きやすいよう調整するといいぞ
俺らはこういう風に腰に下げるが、ライの使い方を見るにその方がいいだろう」
「はい、だいぶ落ち着きました」
「ハッハッハッ!落ち着くか?
メイド服に刀とな!これも雅というのか」
「難しいです」
「なんとなくわかっていくものだ
焦るな、焦るな!ハッハッハッ!」
途中に2つの街に寄って、サキの様子を見ながら進んでいく
体の方は大丈夫だが、精神的に参っているのか、次の街は王都となるのがわかっているのか、2つ目の街を出た時から完全に塞ぎ込んでしまった
2つ目の街を出て、野営で夕食が終わり、サキが馬車に入って、焚き火を囲ってホウとライが、明後日には着く王都での予定をお茶を飲んで話していると
「どうします?」
「‥‥ほう、ちなみにいくつだ?」
「わかりやすくしているのか、疲れているのかで動きが鈍いです
正面13、その奥に1、右に2、左が2です」
「いつから?」
「左右は2つ目の街に入る前から
正面は野営をする時にいました
近づいてきたので」
「囲まれるか」
「おそらくは」
2人は笑顔でお茶を時折飲んで談笑でもしているように話す
「殺気があるから、使者の類ではないが
話もせんとやり合ったではな
しかし、無礼なヤツらが仕掛けてきたら」
「数で押し込まれます」
「どれぐらいイケる」
「1番近い左を落としてくれるなら、速度勝負ですが右と正面の半分は」
「速攻か」
「か弱いメイドで、油断してくれればもう少しは」
「ハッハッハッ!か弱いかよ!
無理はせんでよい
それよりも俺にも残しておいてくれ」
ライがカップを置くと夜の森に姿が消えていく
それを確認してから、ホウは少しニヤついて腰にある刀に手を置いて歩き出し、不意に森に消えた
ライは使い方を教えてもらったばかりのワキザシを振るう
右の2つを落として正面13の側面に回りながら、銃を左手に持つ
「これがホウ様が言ってた突きと撫で切りかな」
呟きながら、青く光る刀身を見て軽く振り、満足そうに走っていた
正面から来た3人を切り捨てて、まだ息のある4人目にホウは話しかける
「で?主らは何じゃ?」
「お前こそ‥‥誰だ‥‥」
「キレイ堂のホウといえば、冥土の土産になるか」
「あの‥‥殺戮‥‥」
「それは昔の話よ、今は菓子屋キレイ堂店主だ
で?お主は?‥‥事切れたか」
ホウは刀を振って鞘に納めると、馬車の近くにある焚き火の側に腰を下ろす
焚き火にかけた鍋の水が沸いていたので、お湯を急須に移すと地面にゆっくりと置いて刀に手をかける
「すいません、ホウ様
1人案内してきたい人がいるんですが」
視線の先にある森からライが現れたので、ホウは刀から手を離して急須を持ってカップに中身を注ぐ
「すまんな、気配を読むのは得意でなくてな
誰だ?ソイツは?」
「ホウ様を知っている様です
正面を仕留めるのを手伝ってくれた方で
チトリとおっしゃっています」
「同胞だ、案内してくれ」
「はい、失礼します」
再び、ライが姿を消すとホウはお茶を飲もうとしてアツッと言ってから
「闇夜で会いたくないな、アレは」
カップの茶をフーフーして冷ましてから再度飲んでいた
ライはチトリをホウの所まで案内すると、前の街で買った干し肉等を馬車の荷物から取り出して焚き火の所まで持っていくと、抱き合っている2人の男性がいた
「なんと、ここまで来てくれるとはな」
「ホウさんは相変わらず巻き込まれているな
良かったよ、間に合って」
「ああ、助かった
何者かわからんが、相手を間違ったな」
「それについてだが、私はコイツらを追ってここまで来たんだ
どうもホウさん達を狙っていたみたいだ」
「そうか、やってしまってどう言い訳しようか悩んでいたが、それなら仕方ない」
2人は焚き火の側に座ってライがお茶を注いだカップを受け取り、干し肉をつまみながら話している
チトリと名乗った男性は黒髪を綺麗に頭の後ろで纏めて、メガネをかけて、和服を着て細身で優しい男に見えるが、ライの前で見せた動きは獰猛な獣みたいだったので、そのギャップにライは少し驚いていた
ホウは今までの事をチトリに話して、ライを紹介してくれる
「先程はありがとうございました
ライと申します」
「チトリと申します
こちらこそ、いきなりの事で躊躇って出遅れてしまった」
「いえ、正面奥にいるチトリ様とはやり合いたくなかったものですから、先に分断してホウ様の所に誘導しました」
「なに?俺に押し付けたのか?」
「ハッハッハッ!ホウさんは、またスゴイのを連れてきたな」
その後は、片付けて移動する事にした
夜の移動をサキに告げると馬車の中からノックが返ってきたので、チトリも乗ってゆっくりと夜道を移動する
その後は何事も無く王都に到着した
チトリは暇ができたら、キレイ堂に来てくださいと告げて、襲ってきた者が持っていた物を門番に渡し、王都に入っていった
ライは馬車の荷物から大きな紙袋を出してホウの隣に座る
「それは‥‥ハッハッハッ!そうか、そうだわな」
「‥‥そんなに笑わなくてもいいのでは」
「そうムクれるな、うんうん
そうであったな、そんな歳だしな」
「持たされたので、出すだけです」
ライは大きな紙袋から
門番へと書かれた小さな紙袋を取り出して門番に渡す
門番は少し笑いながら、紙袋を受け取って中身を見ると真顔になり、中に入っていた紙を読み、何人かの門番で確認してから、アーケロン商会への道を教えてくれる
門を入って、大通りを真っ直ぐ進むと門番に教えてもらった特徴の建物が見えてくる
ライは周りが珍しくキョロキョロとするとホウはハッハッハッと笑ってライの頭を撫でる
アーケロン商会の前に馬車を停め、ホウを馬車に残して、ライは大きな扉から商会に入る
大きな広間の中央にあるカウンター前に立つとライを見た受付嬢が笑顔で対応してくれる
「アーケロン商会へようこそ
お約束等はありますでしょうか?」
「コレをお願いします」
「‥‥はい、お預かりします
‥‥少々お待ちください、確認してきますので」
「よろしくお願いします」
商会へと書かれた紙袋を受付嬢に渡すと鉄壁の笑顔が崩れかけるが、中身を確認すると真顔になって、2階へと続く階段を登って行った
しばらくすると見た事がある男女が階段を降りて来て、女性の方は少し走り出してライを抱きしめる
「いらっしゃい!ライちゃん!
遠いのに、よく来れたわね!会いに来てくれたの?私に?」
「いえ、その‥‥違います」
「あら?ミ・カ・エ・ル?」
「‥‥ミカエルお姉ちゃんに会いにき‥‥
違う‥‥違いました!」
「あと、もう少しね」
「おいおい!誰にやられたんだ?カルナかエリザかマリアか?
だいぶ躾けられてるじゃないか」
ライはカマクにそう言われて、口をパクパクさせてから、うぅ〜と唸るとミカエルに撫でられる
顔を赤くしながら、紙袋から出したカマク兄様へとミカエルお姉ちゃんへと書かれた紙袋をそれぞれ渡す
「おっ?兄様か‥‥よしよし!
中身はなんだ?カルナからか」
「お姉ちゃんには可愛い双子からの手紙ね」
2人は手紙を読むとライの頭を撫でる
「ハッハッハッ!お使いにはお駄賃をやらんとな!」
「そうね、でもまずは荷物を確認させてもらえるかしら」
「はい、外に馬車が停めてありますので」
「なかなかにメイドも様になっているな!
すまんな!俺は猟犬のイメージが強いのでな」
「そんな事を言っては駄目よ、カマク
スノウが来たら‥‥いえ、いいのかしら」
「‥‥スノウ様もいらっしゃるんですか?」
「後ろにいたりして」
ライがバッと勢いよく振り返るがスノウはいなかった
ミカエルを半眼で睨みながら見ると、笑っているカマクの肩をパンパン叩きながら大笑いしている
「あ〜もう、話が進まないじゃない
時間は有限なんだから、ほら!行くわよ!」
「あまりからかってやるな
気持ちはわからんでもないがな」
「カマク様!ミカエル様!」
2人は笑いながら、1人は顔を真っ赤にして叫びながら、商会の入り口へと歩いていく
周りからはどういう関係?と見られていた
お疲れ様です
ライと申します
王都に着きましたので
お使いのほとんどが終わりました
あとは、お駄賃を‥‥
いえ、違います、欲しいけど違います
カマク様とミカエルお姉ちゃ‥‥様も
相変わらず仲が良くて息ぴったりです
本当にいい事だと思います
コチラに被害が出ている以外は!
周りから変な目で見られてますので
ここらへんにしておきます
それにしても王都は珍しい物が多いです
初めて見る物も多いのですが
チラッと見た値段が高いですね
お駄賃‥‥もらえますよね
でも、無駄遣いすると駄目ですよね
お姉ちゃん達に怒られ
違います!違うんですぅ!
そう!組織でした!
組織に怒られ‥‥るんですかね?
最近、組織が構ってくれないので
お姉ちゃん達にホダサレそうです
‥‥‥
また休みを取るかもしれません




