22話 ザツに扱うって事はないですよね
カルナ、エリザ、マリアは部屋でサマンサからの報告を聞いていた
カルナは紅茶を飲むのをやめて、テーブルの上にある数枚の紙に少しだけ目を向ける
「王都に帰るのが楽しみなのか、めんどくさいのかわからなくなってきたわね」
「私はめんどくさいに賛成ね」
「それで、サキはどうなってるの?」
「サキ・マドワ侯爵令嬢様は、身を綺麗にされた後にお食事をなされて、お休みになりましたので、挨拶されるのでしたら明日にされた方がよろしいかと思います」
サキの現状をサマンサから聞くと、3人は紅茶を飲んで、一息ついて窓の外を見る
「この中を王都からね」
「同情はしたくなるわね」
「それにしても、途中経過とはいえ、家が潰れていくって、こうなっていくのね」
「手広くやりすぎていた上に、裏切られすぎね」
「王族や教会関係者まで証言してるのね」
「裁判とかする必要あるのかしら」
「サキは追い立てられたか、逃がしてもらったのどちらかしらね」
「恨みか切り捨てか、こちらはどっちもって気がするけどね」
「私達の所まで何しにきたのかしら
いえ、カルナの所に来たのかしらね」
エリザとマリアは紙に書かれた内容をもう一度眺めて、溜息を吐いてから少し笑う
カルナもつられて少し笑ってからサマンサに聞いた
「釣られたヤツの事はいいわ」
「釣ってきた子は何してるのかしら」
「釣ってきたと言うより食い付かれた、かしら」
「その手紙を持って来た人物の相手をセバスと共にしています」
3人は声も表情も変わっていないサマンサを見て、少し笑う
こういう時のサマンサはわかりやすい
きっとめんどくさいヤツがやって来たんだと思って、新作の和菓子を楽しんだ
ライはセバスに言われて準備をしたワゴン押しながら、ノックしてから部屋に入る
一礼してから、セバスの前で椅子に座っている男を見る
ソウジが着ていた和服と同じような物を着て、剣を片腕で抱くようにしながら椅子に座っている
背もそうだが、全体的にデカい
白髪混じりの黒髪を後ろに流して雑に括っていて、無精髭を触りながら入って来たライを少しニヤつきながら見ている
ライはセバスが話しかけている少し後ろでワゴンの上でお茶を用意し始める
「その子は?なかなか面白そうなだな」
「露骨に話題を変えなくても、ライは大丈夫です」
「そういや、ソウジが言っておった青髪の鬼子もライだったか」
「それで、これからどうするつもりですか」
「ハハハッ!ソウジの名が出たら不機嫌になる
祝い事なんだからよ、いいじゃないか
認めてやってんだろ
ああやって、茶器まで屋敷にあるんだからな」
「まったく、話を逸らし始めたら長くなりそうなのも昔と同じですね」
「お互いにそう言える程には長生きしたって事か
おっ!ありがたいな、これは?」
「失礼します、お茶とソウジ様の新作になります」
ライがテーブルにお茶と和菓子を出すと和服の男性は手を合わせてから、ゆっくりと味わう
「アイツもいい味を出すようになったなぁ」
「ホウは今も食べる専門なんですか?」
「そうだな、どうも細かい事は性に合わん
‥‥‥今回の事もな
しかし、仕事としてはやらねばならんからな」
「王都からここに誘導したんですか?」
「最初はそんな気は無かったが
方向的にコッチを向いていたし、ソウジに会いたかったしな
それにお主だったら、良い考えか方法があると思ってな」
「久しぶりに会ったと思ったら、頼るのが前提とは‥‥しかし、今回はあまりにも絡んでいるのが上の方すぎますから」
「‥‥それもそうか
確かに俺も依頼主には会えなかったしな
なんとかならんものか」
ライは和服の男性でホウと呼ばれた人のお茶のおかわりを注ぐと笑顔でホウに礼をされる
ダイフクも出すとおおっ!すまんな、と言いながら、ダイフクを手で掴んで食べる
ライは少し驚くが笑顔でセバスの後ろに控える
「王都での話では、マドワ侯爵が主犯になっているのですね」
「証言や同胞からの裏切り
裁判が始まる前からの狐狩り
前からあった証拠か、でっちあげられた物か
わからなくなってきてるが
全てが悪事を暴くような物ばっかになってると俺らでも聞ける話になってる」
「実際はどうなんですか」
「わからんが、キナ臭そうではあるな」
「そうですね
あまり首を突っ込まない方が良いと思います
今回の件もありますから」
「なんとかならんか?
あまりにもムゴイ仕打ちだと思ってしまってな」
「相変わらず、女子供には甘い人ですね
それならこの依頼を受けなければ良かったでしょう」
「‥‥依頼の内容が途中で何回も変わってな
今は処分して見つからないようにしろとの事だ」
セバスとホウはお互いに溜息を吐く
ライはテーブルにセバスの分もお茶を置いて、ワゴンの上を片付けている
セバスはふとライを見て、少し考えて頷きながらホウに言う
「依頼主はわからず
何回も内容が変わっているのですね」
「なんとかなりそうか」
「話は通してみますが、駄目なら諦めてください」
「ハハッ!持つべきものは頼れる友だな!
いや、もうすぐ親戚‥‥血縁になるのか」
「それはまた別の話です」
セバスは一礼して部屋を出て行ってしまう
ライは笑顔でホウのお茶を注ぐ
「ソウジが世話になったと聞いてる
挨拶が遅れてすまんな、ホウという者だ」
「こちらこそ挨拶が遅れました、ライと言います」
「ソウジがクロッサとの結婚の決め手を作ってくれたと喜んでおってな」
「ソウジ様の腕前が」
「それにしてもクロッサとくっつくとはな
アイツらも小さい時に遊んでおったから幼馴染となるのか
いや、少しだけだったような気がするが、お互いに気に入って会っておったとか
なんか聞いてるか」
「いえ、そんな事を聞い」
「セバスも変わっておらんな
いつもあんな感じか」
「はい」
「しかし、こんな所まで来て茶が飲めるとはな
王都に寄ることがあるなら、ウチの店に行くといい
小さい店なんだが、良い物を置いていると胸を張って言えるような店にしてる」
ライは笑顔で頷いているとセバスが戻ってくる
ホウとライについてくるように言って部屋を出ていき、応接室にホウを案内する
ライはサマンサにお茶の準備をするように言われて、ワゴンを押しながら応接室に入るとカルナ、エリザ、マリアがソファーに座っており、ホウは少し離れた所に椅子に座っている
セバスとサマンサはホウの近くに立っていた
ライがお茶を準備する時も、出す時も無言の空間だったので、少し緊張する
「別に依頼をこなせばいい話ではないの」
「どうしてアナタの意思が関係あるの」
「協力したら私達にも影響するんじゃない」
「そこをなんとかお願いしたい」
カルナ、エリザ、マリアに対してホウが頭を下げる
3人は頭を下げているホウを見ながら紅茶を少し飲んで、剣呑な目付きになる
「あのね、あの子は取り巻きだったとはいえ
私達と険悪だったのは誰もが知っていることよ」
「そうね、学生新聞がばら撒かれて
私達が王都を出て行く時もだいぶ盛り上がったみたいだしね」
「そんな相手を同情だけで助けたらアイツらがなんて言ってくるかわからないのよ」
「相手もまだ学生だけど
王族と教会に目を付けられている私達に相手の元取り巻きで見捨てられた女に慈悲をかけろと」
「カルナの場合は元2個前の婚約者っていうのも付くわね
結構ゴシップになっていたから知っているでしょう
その後の2度目の婚約破棄まで」
「次の王都での学生生活は大人しくしておきたいのよ
お爺様やお婆様に迷惑をかけましたし
それに来年でとりあえずは卒業ですからね」
カルナ、エリザ、マリアは何かを思い出す様に、それでいて淡々と語る
セバス、サマンサ、ホウは知っているのか
何も言えなくなっていた
沈黙が続く中で、ライは初めて聞く情報だが、そんなに知られているなら重要ではないかなと次の紅茶を準備し始める
「では、王都におられる方々に判断して頂くのはいかがでしょう
やはり、問題になりそうなのは彼女がこの地を訪れてしまった事です
その後に所在不明となれば要らぬ疑いをかけられます
しかし、彼女を王都に連れていき
当主様が判断を下されるのであれば
カルナお嬢様への批判等は軽減されましょう」
「さっきも聞いたけど‥‥‥
そうね、それが1番なのかしらね
色々と納得がいかないけど
はぁ、当たって悪かったわ」
「いえ、こちらの無理な要求を聞いていただいただけでも」
セバスはカルナに向かって深々と一礼をする
ホウも少しホッとした様な顔で頭を下げてから、少しハッとした表情になる
「そうなると、事情をどう説明したらいい
俺だけではどこにも話が通じなさそうだ
セバスが付いてきてくれるのか?」
「私とサマンサはお嬢様専属です
それにお嬢様方が王都に行く来月の半ばあたりでは裁判が始まってしまい、良い話もできないでしょう
しかし、護衛の騎士たちが来る予定を早めることも出来ません
道の整備も兼ねていますから」
「おいおい、どうすれば良い
少数で王都に向かうのは良いが
着いてからどこも相手にしてくれない
確認するから待って欲しいでは
それこそ来月まで待った方が早かったなんて事になってしまうぞ」
「書状は私達が書くわよ
後はアッチにいる人によく知ってもらっている人を‥‥」
カルナがそう言いかけて紅茶を飲む手を止める
エリザとマリアも動きを止めて、3人はワゴンの上を何かいい事でも考えているのか笑顔で片付けているライをジッと見る
ライは視線を感じたので、んっ?と言った感じで、振り向くと全員がライを見ていた
「ライはお使いがちゃんとできるかしら?」
「馬車は商会から‥‥エリザお姉ちゃんが出したあげる
小さいけどしっかりした物よ」
「お姉ちゃん達が行くまでにしっかりと準備しておく事
特にお茶会の準備はね」
「えっと、えっ?」
「あら?最近買ったオモチャの事でも考えて聞いてなかったのかしらね
他に買いたい物があるのなら
お使いのお駄賃ぐらいあげるよ」
「違うオモチャを王都で買ってきたらいいわ」
「悪い人に騙されない様に
ちゃんとしたお店への紹介状も持たしてあげる」
「いや、待ってください」
「ライ、返事は?」
「ライちゃんはお姉ちゃん達の言う事聞けるでしょ」
「ライちゃんはできるよね?」
「‥‥いや‥その」
「ライ」
「ライちゃん」
「ライちゃんはできるでしょ」
「はい、できます」
「‥‥」
「‥‥」
「‥‥」
「うん!できるんだからね!
カルナお姉ちゃん!
エリザお姉ちゃん!
マリアお姉ちゃん!」
少しためらいながら、顔を赤くして言うライを見てカルナ、エリザ、マリア、サマンサが満足そうに頷く
ホウはセバスとライを交互に見て驚くが、セバスは笑顔で頷いてから、ホウに告げる
「安心してください、日常ですから」
お使いが決まりました
ライです
良いんですかね
スパイが移動する時って‥‥
そういえば、王都で待つって
この事を?って言う事はホウ様が?スパイ仲間?
そんな訳ありませんね
セバス様の昔馴染みだそうですから、あり得ませんね
にしても、連れ出してほしいとは言いましたが、早すぎるし、遠すぎません?
ホウ様と言えば
人の話を聞いていない様な感じがします
目の前にいても獣の様な感じ
満足している時は襲ってこないでしょうが
何かが足らないとか不機嫌とかで襲いかかってきそうです
ですが、女子供には優しい人なんだそうです
女?子供?まぁいいでしょう
王都はやっぱり遠いんでしょうか
エリザお姉ちゃんが馬車を貸してくれるって言ってたし、マリアお姉ちゃんからは商会御用達の紹介状、カルナお姉ちゃんはお駄賃っていくらくれるのかな
美味しい食べ物とかないかなぁ
なんか遠くまで行って良いのがなかったら
いやだなぁ
王都サイトって言えば、広さとかどのくらいでしょうか
1日で‥‥
なんて言ってました
いえ、違います!
ここでまでお姉ちゃん呼びとか無いです!
忘れてください!
なんです?なんですか?躾って?いや!嫌です!
オモチャに喜んで
街で落ちてる要らない物拾ってきて
お駄賃と美味しい食べ物に釣られるって‥‥
違う!違うの!違うんですの!
せめて、スパイだって言ってください!
スパイにだって人権はあります
駄犬?わんちゃん?
配慮してください




