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2話 不穏な事は呟いてないですよね

ケーキは外気を利用して冷めるのを待つだけとなり、紅茶のカップを準備しているとライはふとキッチンから玄関ホールに続く廊下の方を見る

気のせいではない

この違和感はおそらくどちらかが来た事になる

気配がない事に違和感を感じるようになった

敏感になったのか、元々人がいるのだから気配を感じないってことはないのだが

周囲に溶け込むのが上手いとか

こちらが周囲の気配に慣れていないから溶け込まれるとわからないとか

まぁ、とにかくセバス様かサマンサ様が来られているという事になる


「こんばんは、ライ」

「ライちゃ〜ん!来ちゃった!」

「いらっしゃいませ、サマンサ様、クロッサさん‥‥と‥‥カルナ様?」


ライは作業の手を止めて挨拶をして入ってきた人物に挨拶を返すと、黒髪を綺麗に頭の上でまとめ、メガネをかけたロングスカートのメイド服を着たサマンサの後ろからカルナがヒョコっと顔を出す


「やっぱ、わかんなかったかぁ」

「まだまだね、ライ」

「こんなお茶会を隠しているなんてライは意地悪ね」

「いや、こんな時間に大丈夫でしょうか」


黒髪でメガネは、かけていないが顔立ちがサマンサとソックリなメイド服姿のクロッサがケラケラと笑いながらライを指差すと、サマンサがイタズラ成功とばかりに微笑む

戸惑っているライにはカルナが頬を膨らませながら頭1つ分くらい背の低いライに怒っている

カルナとクロッサ、サマンサは身長が同じくらいで170前後ある

なので、ライが小さく見えてしまう


「たまにはいいじゃない

こんな時間にケーキを食べても」

「あのサマンサ様?」

「お母さんはコッチのが素に近いよ」

「今日は何を作ったの?」

「チーズケーキを作りました」

「あらま、フリーが悔しがるわね

先に食べられたって」

「めっちゃ自慢してやろっと」

「ズルいわ!みんなでライと楽しくやってたのね!」

「あのカルナ様?」


ライが戸惑うとサマンサ、クロッサ、カルナは笑いながら席に着く

慌ててライが席を引こうとするとカルナが手で制して自分で椅子を引いて座る


「ライのケーキは毎回楽しみなのよね

腕前がメキメキと上がっているもの」

「そそ、こんな短期間でお母さんが認めたんだもん、スゴイよ」

「私にも成長過程を楽しませて欲しかったわ」

「そんな事ありませんから」


話しながら、ライは紅茶の準備をして茶葉を熱湯で踊らせる

食器の用意をしながら決められた動きをするようにテキパキと動いて、ケーキの方に動こうとして動きを止め、ポットの方に手を伸ばして3人に紅茶を淹れ出す


「時間通りにするわね

あの人が文句を言わないはずよ」

「私は、いまだに言われるのにズルいなぁ」


サマンサが褒めると、クロッサが少し拗ねてライを見る

カルナが微笑んでいるとライが3人の前に置かれたソーサーにカップを置いていく


「紅茶は満点ね」

「ケーキだ」

「楽しみだわ」

「なんか緊張します」


冷やしてあった場所から1人分専用の食器に入れられたケーキを取り出して3人の前に置く

3人は黙ってフォークで切り取った一口目を食べて、目を瞑って味わい、紅茶を飲んでからライを見る


「コレも合格ね

レパートリーとして昼にも出していいわよ」

「最近は夜勤するとコレがあるから頑張れる気がするなぁなんて」


サマンサが二口目を取りながらライに微笑むと

クロッサがとろけたように二口目を味わってニシシっと笑う

カルナはフルフルと震えてライを睨んでから


「こんなのがあるなら私を1番に呼んで!

っていうか、ズルいわ!ズルいわよ!

みんなでこんなことやってたなんて!」

「しかし、ご夕飯の後にもデザートは‥‥」

「じゃあ、明日からライが担当だから」

「いや、シェフのデザートも‥‥」

「担当なの!」


カルナとライのやり取りを見ながらサマンサは三口目を食べて、ウットリとする


「洋酒を使っているのね

いい塩梅だわ、邪魔していない」

「エッ!どこに?」

「サマンサ様のだけですよ使ったの」


クロッサは驚いて、チーズケーキの残りを一気に食べるが、ライに否定されてムッとムクれる

カルナは顔を真っ赤にしながらウッ〜と唸っている


「子供にはわからないそうよ

美味しいわぁ〜」


サマンサは満足そうに呟いて最後の一切れを食べてしまう



「じゃあ、次も楽しみにしているわね」

「明日からだからね」


サマンサとカルナはそう言って本邸に帰って行った

ライは頭を下げて見送り、扉が閉まって少ししてから頭を上げる

隣でニヤニヤしているクロッサが肘でライを突きながら


「気付いてんでしょ、手伝ってよ」

「時間外ですし、セバス様とフリーさんを迎える準備をしないといけませんので」

「お父さんとフーもこのままだと遅れるよ」

「クロッサさんなら大丈夫です」

「この前、取り逃した事があってさぁ〜

怒られんの嫌なの!四つだけじゃん」


2人はキッチンに入って、クロッサは椅子に座って、ライは食器を確認しながら話していたが

クロッサが四つと言ったので、ライは首を傾げながら、テーブルにある食器を新しきものに変えていく


「5つですよ、後方におそらく問題が起きたら逃げるのが1ついます」

「ほぉ〜ら!手伝ってよ!」


あれっ?とライは思うが、顔には出さないでおく

けどまぁ、今から行けば森から出る前にやれそうだとも思う

ため息を吐いてからクロッサを見て


「四つはお任せしますよ

森からこちら側に出てくる前にお願いします

後片付けが大変になるので」

「お任せ、そっちはちゃんと生け捕ってよ

情報持ってそうなんだからね」

「そういう感はいいんですよね

ヘマしないでくださいよ、番犬さん」

「生け捕らないなら、夜の縄張りでヘマなんてしないわよ

そっちこそヘマしないでよ、猟犬ちゃん」


軽口を叩きながら一通りの準備を整えたライはキッチンコンロの火を落として姿を消す


「やる気だね

気の毒になぁ、顔も知らない暗殺者さん」


言葉が響いた頃にはキッチンに誰もいなくなっていた



サマンサは曇っていて月が出ていない真っ暗な森を歩いていた

屋敷は半径1キロ程は丁寧に整備された道と造園があるのだが、街とは反対の方角にはちょっとした森があり、山がある

結構大きな森だから、訓練とかにはもってこいなのだが、良からぬ輩はここを通って屋敷に来る

単純よねっと思いながら、木の根が生えて歩きにくそうな所を明かりもなくスルスルと進んでいくと木を背中にあくびをしながら立っているクロッサと会う


「四つだけ?」


あたりには黒ずくめの人達が血を流して倒れている

サマンサは横目でそれらを見ながらクロッサに問いかける


「あと1つは猟犬ちゃんが行ってる」

「そう、なら‥‥」

「噂をすればかなぁ」


あたりに微かな笛の音が聞こえたので、2人は同じ方向を向いて歩き出す


「猟犬ちゃんにしては時間かかったなぁ」

「‥‥クロッサ、サボったわね」

「えっ!1つだし、生け捕りは私がやるとね

ほらっ!やりすぎるから」

「はぁ〜、1つじゃないわよ

その後方に馬が用意されてるから

その見張りを含めると3つよ」

「えっでも、猟犬ちゃんが‥‥1つって」

「カマかけられたのよ

あの子急いでなかった?」


クロッサが頷いたのを見て、もう一度ため息を吐く


「先に馬の見張りを押さえに行ったのよ

多分、アナタがヤリ切る前に」

「‥‥やるぅ〜、猟犬ちゃん!」

「後で旦那から折檻と訓練よ」

「ヤダヤダ!ねぇ、ヤダよ!お母さん!」

「私じゃないだけマシでしょ」

「‥‥ハイ、マム」

「おそらくは旦那とフリーの時間には間に合うわね」


サマンサ達から少し離れた所の木々が少し揺らいで人影が飛び出してはサマンサ達が進む方に消えていく

懐から出した懐中時計を見て頷きながら

サマンサは隣で涙目のクロッサを呆れながら見て


「旦那がライちゃんのケーキと紅茶で上機嫌になってる事を祈る事ね」

「絶対大丈夫だよね、美味しかったもん」

「まぁ、違う方に上機嫌になったら知らないけどね」

「張り切るダディは見たくないよぉ」


サマンサはそんな様子のクロッサから視線を外して、曇っている夜の空を見上げる


「ホントに惜しいわね」


そう呟くと元気のないクロッサの肩を叩いて歩いていく


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