19話 ハシャいでるって事はないですよね
忙しく年末が過ぎていき、新しい年が来た
王都で新年を祝うパーティーに参加する為や挨拶周りの為にアーケロン商会が開催したパーティーに参加していた者達は、王都に旅立って行った
ライは王都がそんなに遠くないのかと思っていたが、馬車でも10日はかかると聞いて間に合うのかと思っていたが、急ぎの用事がない限りは王族の方達も新年はゆっくりと休むらしい
遠方や雪が深い所から来る者達に配慮した形で新年を祝う大きなパーティーがあるのは、年が明けた月の半ばぐらいに開かれる
それまでは親族同士や王都に集まって久しぶりに会った者同士でパーティーを開くのが通例となっていた
カルナが住む屋敷の近くで懇意にしている貴族は王都に行っている
なので、新年の挨拶に来るわけでも行くわけでもない
外は雪がチラついており、屋敷から街に続く道は雪掻きがされているが、他は積もって白い景色を作り出している
外は寒く、用事もない
そうなるとカルナ、エリザ、マリアは屋敷に引きこもっている
「暇ね」
「暇よね」
「暇だわ」
ライはシェフから分けてもらったイチゴでジャムを作って、紅茶に添えて出したり、今朝作ったショートケーキを出したりしていた
カルナ達の言葉に聞き耳を立てながらワゴンの上を整えていく
「こうなるんだったら、王都について行けば良かったかしら」
「行っても、新年を祝うパーティーでアイツらと会うだけ」
「また勝ち誇ったアイツらの顔を見るのは学校が始まってからで充分」
「それだったら、パーティーに行かないってのもありなんじゃないかしら」
「それもいいけど」
「なんか負けた気がしない?」
良かったとライは思う
会話の内容は良くないけど、コッチに
「安心したかしら」
「そうね、この頃わかりやすいわね」
「なんかわかってきたのよね」
「‥‥そのような事は」
「反応したって事は」
「ライちゃんに言ってたかしらね」
「何を安心したのかしら」
暇な時は、からかわれる事が多い
最近はそうでも無くなったが、年末は酷かった
使用人が忙しいのはわかるけど、ライは1人で3人とミカエル、スノウを相手にしていた
1回だけユキとウルが来た時はレプンがいたから良かったけど、それでもお姉ちゃん呼びを強制されたり、セバスやサマンサのモノマネをさせられたり、飴を食べさせられたり、スノウとの出会いを再現させられたり
その上で、紅茶やお菓子の品評会を始め、レプンからコレは好み別れるとか、もっと落ち着いて淹れたらより良くなるとか
ライはどこに向かっているのかわからなくなっていった
「何か考えてるわね、いえ、隠してるのかしら」
「楽になったら、ライちゃん」
「出して欲しいな、マリアお姉ちゃんからのお願いは聞けるよね」
「いえ、お出ししても良いか迷っています」
「いいわよ」
「出して」
「早く」
「少し外します」
「ベルがあるじゃないの」
「そういえば鳴らした事なかったね」
「鳴らせばいいのよ」
ライはワゴンに乗っているベルを鳴らす
すぐにドアがノックされて、サマンサが入ってくる
これがわかっているから、鳴らしたくなかった
ドアの向こうには大体サマンサが待機している
確かに先輩を扱うのは気が引けるけど、ずっとドアの向こうにいるなら助けてくれても?
いや、酷い事になりそうだからいいですとライは思う
「どうしたの?」
「実は、お茶と和菓子を持って来ようかと」
「いいわね、取ってくるわよ」
ライが何か言う前にサマンサは一礼して出ていく
しばらくするとサマンサがワゴンに急須とお湯、お菓子を乗せて入ってくる
「コレは何かしらね」
「黒が白に包まれてる」
「初めて見るわね」
「ダイフクという物らしいです
街にある店で買った物ですから
出すのを迷っていました
よければ、感想を聞かせていただければと思います」
「それにそれは?」
「お茶っていうヤツよね」
「ハクゾーさんの所で貰ってたわね」
「はい、こちらも合わせて感想を頂ければと思います」
サマンサが一口サイズに切られたダイフクが乗った皿を3人の前に並べて、ライは話しながら、お茶を注いだカップを置いていく
3人の感想としては
和菓子はこれからも出して良いけど、飲み物は紅茶で良いとの事だった
「あとは何を隠しているの」
「そうね、この頃は浮かれてる」
「楽しみにしているかな」
サマンサは横を向いて少し咳込む
紅茶を飲みながら、残ったダイフクを楽しみながら3人はライを見ている
ライはサマンサを見るが、バレたアナタが悪いわねといった感じで、しれっとしている
「何もございません」
「サマンサ」
「昼から工房に行くそうです」
ライはサマンサ様!と抗議しようとしたがやめてカルナ、エリザ、マリアの方を見るとライを見て驚いてから、笑い出す
「新しいオモチャは無くしたら駄目よ」
「壊れたら、お姉ちゃんが買ってあげるわね」
「ちゃんとお手入れもしてから片付けるのよ」
「し、知りません!」
「ほら、拗ねないでね」
「オモチャがそんなに楽しみだったのね」
「買ったら、お姉ちゃんが見てあげるからね」
「サマンサ様!」
もはや、日常の風景になりつつある光景を見ながら、サマンサは声を出さずに笑っていた
ライはコートを着て、マフラーを巻いて雪が静かに振る道を街へと歩いていた
前のコートはスノウが持っていき、マフラーは団地で血溜まりに浸かっていると思う
スノウにコートの話をすると、色は似てるけど全く別物が渡された
渡される時に
私のお気に入りだから毎日着る事、マフラーもあげるけど、今度会った時に交換するわね
交換される意味がわからないけど、受け取らない訳にもいかないので受け取った
めっちゃ暖かいし、サラサラしてる
門の所で立ち止まって、少し待つと屋敷の方からクロッサとフリーが歩いてきた
「待った?ライちゃん」
「さっき着いた所です」
「頭に雪積もってる」
フリーに頭の雪を払われながらライは歩き出す
クロッサとフリーがライに並んで、街へと3人並んで歩いていく
「ライちゃんってば浮かれすぎだよ」
「楽しみだもんね」
「そんなに浮かれてません」
「うっそだぁ〜、歩いてる時とかわかりやすいよ」
「なんか普通に見えるけど、周りに音符とかハートとか出てる」
「エッ!なんで?そんなの出てないです!」
「めっちゃ出てる」
「むしろ今、めっちゃ出てる」
「出てません!出してません!」
「そっち歩いてみ?」
「そうそう、駆け回ったらわかる」
「雪の音だし!そんなの出てないです!」
3人はそんなやり取りをしながら、街への除雪された道を歩いていった
そんなにわかりやすいんでしょうか
それにしてもどんなのがあるんでしょうか
暖かいコートとマフラーですね
どんな風にしてもらうんでしょうか
このコートは高いらしです
できれば、持ち運びが楽な形がいいな
マフラーもサラサラしてて
工房に行くそうですが、どこにあるんでしょう
暖かいです
ん?
んん?
わかりやすくしている訳ではありません
スパイとして顔に出るとか命取りです
でも、楽しみです
ちゃんと誤魔化していますよ
昨日は夜遅くに寝る事ができました
それまでは今日の事を考えていただけです
年末に聞いてから、あと何日だっけとか
早く今日の昼が来いなんて思ってません
なんかスゴイの欲しいな
えへへ、楽しみです
違いました!
そんなにわかりやすいですかね
そんなわかりやすいスパイがいるなんて
‥‥バレたら、もらえなくなりますよね
それは嫌です!
バレてても、もらうまでは待ってください!
そのあとでちゃんとスパイしますから!




