15話 これが叶ったって事はないですよね
団地の1階の男性達がいた部屋
おそらくは、なんらかの拠点だった所の床に男性が3人、血溜まりの中に倒れていた
ライは血溜まりを避けながら、机の引き出しや床に散らばった物をナイフの先で開けたりめくったりして見ている
3階にいた男達も、ここにいた男達も酔っていた
深くではないとはいえ、眠気を誘い、感覚を鈍らせる程度は飲んでいた
抵抗はあったが、それほどでもなかったので今に至るが
ライは着ているコートを見ながら、ため息を吐く
なんか情報を聞き出そうと最後の1人を生かそうとしたのが間違いだった
何も聞き出せなかったけど
聞こうとして、息の荒い倒れている男の近くに寄った際に暴れたので、血が撒き散らさてコートに血が飛んでしまった
叫ばれたりしたりもしたので、かなり焦ったが、男を黙らせる
少し離れて見ていても誰も来なかったので、再度現場に戻って何かないかな?と探していた
迂闊だったと思う
なんでまた現場に戻って、ここに留まったのか
元々は植木鉢を15個調べたら、アーケロン邸に行く予定だったのだ
ライは音で気付いた
部屋に血の匂いが充満していたとか
見慣れない建物が密集して立っていたとか
色々とあるけど、音で気付いた時には遅かった
馬車が勢いよく走る音、音が近づいてくるのが早い
一直線にライの方に向かってくる
今、建物から出ても、最悪姿を見られる
できれば、このまま通過するか、手前で曲がって欲しかった
馬車は急に減速して、ライがいる建物の前で勢いよく止まる
ライは馬車が止まっている方とは違う方向、裏手側から出ようとして足を止める
「放して!放してよ!」
「いいから出ろ!」
「お前も早く来い!」
嫌な予感しかしないし、なんかデジャヴですし、そんなに捕まる事があるのだろうかと思って、急に怖気がくる
会いたくない!
ライがそう思うような存在がコッチを見て、直線的に向かってくる
捕捉された
コチラを完全にわかっていて威嚇している
周りに人がいないのが災いした
それに多分、まだ来る
ライはコートを脱いで丸めると両手にナイフを持って、手で挟み込む様な形で丸めたコートを持つ
「なんなんだよ!アレは!聞いてねぇぞ!」
「私と姉様にこんなことして!兄様が絶対許さないから!」
「うる‥‥来やがったぞ!オメェら!オイ!聞いてるか!今から来る奴を殺せ!」
馬車に1つ、コッチに向かってくるのが4つ
叫んでくれたので、この部屋を目指しているのがわかる
ライは少し姿勢を低くして、ドアの無い入り口から入ってくるのを待つ
最初の2人が入ってきて、すぐにもう2人が入る時にコートを入り口の上に投げる
「おい‥‥なにガッ」
「どうしでッガ」
最初の2人、女性の首に後ろから腕を回して部屋に入ってきた男性の首にナイフを突き立てて捻るとナイフが折れる
次に女性の首襟を掴んで入ってきた男性の首に両手でナイフを押し込む
青色のドレスを着た女性は血溜まりでよろけるが壁が近かった為に転ばずにすむが
黄色のドレスを着た女性は首襟を掴まれていたので、倒れ込む男性に振り回され、背中から血溜まりに倒れ込みそうになる
「大丈夫ですか」
倒れ込みそうになる女性の背中にコートを広げて
ライは笑顔で床に倒れ込む前に女性を持ち上げていないお姫様抱っこの様に受け止めていた
女性2人は薄暗い部屋の中でライを見つめていた
「あなたは?」
「‥‥えっ‥えっ?」
青色のドレスをきた女性にライは微笑んで、黄色のドレスを着た女性を立たせる
黄色のドレスを着た女性はライを見つめていたが、ライは入り口の方に少し歩いて、持っていたナイフを入り口の方に放り投げる
床に落ちたナイフが根元から折れながら入り口の向こうの廊下へと転がる
「カルナ・ボーゲン公爵令嬢様お付きの使用人
ライと申します」
ライが頭を入り口の方に頭を下げて声を上げる
「えっええ!」
「嘘!なんで?」
青色のドレスを着た女性が驚きの声を、黄色のドレスを着た女性はコートを肩から羽織りながら驚いている
「それに嘘はないだろうな
お前の別名、上の者の名は?」
「猟犬、セバスチャン・バラクーダ様もしくは
サマンサ・バラクーダ様です」
「へぇ〜、お前がそうか
お前の縄張りではやり合いたくないな」
部屋の入り口から剣を右手、銃を左手に持ち
銀髪を後ろで束ねた細身の男性が入ってきた
着ている白いスーツの所々に返り血を付けている
ライは頭を下げたままジッとしている
男性は青色のドレスを着た女性の方を向いて
「楽しかったか?ミカエル」
「最後にサプライズまであって、楽しかったわ!カマク」
「ハッハッハッ!俺も驚いた!ベット以外で、久しぶりに聞いたぜ!お前の叫び声を!」
「あら?こんな所でする話かしら?」
「わかったって、お前はどうだった?楽しかったか?スノウ」
カマクとミカエルは血溜まりの上で抱きしめ合い、カマクはスノウの方を見ると、ライを見つめながら、ゆっくりと頭を下げたままのライに近づいていく
「ライって言うの?頭を上げてコッチを見て」
「はい」
「あなたが猟犬?こんなに可愛いのに?」
「うぇ」
ライは頬をスノウに片手で、つままれたので、変な声が出る
スノウはライより少し背が高く、ライはスノウを見上げる様にしながら、頬をブニブニとされている
すると段々と花咲く様な、ライがよく知っている様な笑顔をスノウは浮かべながらカマクの方を見て
「コレ!欲しい!」
「お気に入りになったわね」
「いやいや、それはカルナのモンだろ
アイツは色々あって、今は大人しくしてんだ
やめておけって、荒れるぞ、また」
「いや!欲しい!の!」
「あら、荒れるの?楽しみね」
「あんまりおちょくってやんなって」
ライはどこかに救いはないものかと視線を動かすが何もなかったのだが、少し困った様な顔をしたカマクと目があってしまった
「んで、猟犬
お前は何をやってたんだ、ここで」
「あの‥‥‥サマンサ様に言われて寄り道して道草をしていました」
「サマンサが言っていた通りに鼻が効く様だな
ここになんかあったのか?」
「雑草しかございませんでした」
「次は隠すな‥‥何があった」
スノウに離してもらって、ライは答えていくがカマをかけられているのか、本当に見抜かれたのか、どちらにせよ誤魔化せば、次はない
「サマンサ様に今から報告して判断を‥」
「お前の飼い主に忠義を尽くすのはいいが、ソイツの雇い主は誰だ?わからんわけがない様に見えるが」
「‥‥‥スノウお嬢様、失礼致します
コートの右ポケットに見つけた物が入っていますので、取ってもよろしいでしょうか?」
「コレかしら?」
スノウはいつの間にかコートを着ており、ライに言われた瞬間にポケットに手を突っ込んで布を取り出す
薄暗い中で布を見たカマクは、スノウから受けってミカエルに見せてから
歯を剥き出して笑い出し、隣ではミカエルが満面の笑みでカマクの肩をパンパンと叩いている
ライは逃げ出したかった
目の前にいるカマクの細身が、筋肉が盛り上がって一回り大きく見える
スーツの形が変わっていないので本当には大きくなっていないのだろうけど、怖い
快活に笑っているから、なおさらに怖い
「コレはいい物を見つけてくれた!猟犬!
おい!コレを兄貴と弟に届けてやってくれ!」
「かしこまりました」
「今すぐに持って行け!早馬でな!」
「仰せのままに」
ライは入り口から現れた背の高い執事の方を見れなかった
向こうは横目で見ているだろうが、目を合わせたくなかった
というよりも、いつ来たのかわからなかった
執事はカマクから布を両手で受け取り、一礼してから部屋から出ていく
「さて、終わった!行くか!パーティーに!」
「お爺様とお婆様に頼んでみるわ!あなたの事」
「善は急げって言うわね
でも、この格好はどうかしら?」
「遅刻の理由を説明する手間が省けるからいいじゃねぇか!
スノウは猟犬を連れて行くんだろう?
なら、もっと省けるな!」
「うん!兄様も味方してくれるって!
よかったわね、ライ!」
「じゃあ、可愛い妹に私も味方しちゃおうかしら」
スノウがライの手を掴んで連れて行く
ライは色々と考えたが、外に用意された馬車に乗せられた頃には何も思いつかなくなっていた
回想は終了となります
過去は変えようがないので
この通りとなります
いえ、変えようとしたんです
本当に色々とした結果
欲にまみれてはいけないと言う事でしょう
クリスマスというのは欲を聞いてくれる
個人の欲望を叶えてくれる日だと聞きました
強い、弱いがあるんでしょうか?
所詮は使用人‥‥いえ、間違いです
スパイの身です
命令1つで終わる様な存在は駄目なんでしょうね
わかってはいるのですが、終わりたくありません
小さな欲、夢ではありますが叶えたくなったんです
ですが、パーティーで皆さんの注目を浴びてからのスノウお嬢様宣言
いやぁ〜、終わった‥‥終わりましたね
何か1つでも叶えたかったんですが、叶わぬ夢となりました
古来より、こういったパーティーでは、濡れ衣を被せられて、可哀想にも国を追われる人がいるそうです
いいですね!追放されてみたいですが‥‥
カルナ様、エリザ様、マリア様
回想よりただいま戻りました
駄犬のライと申します




