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仲間の苦悩

    △▽◯△▽


「……本当に、ここは不思議な所ね……」


 アリアベルは改めてこの世界を見渡した。ポータルを通った先にあったのは、地下世界にあるという異次元空間で、ここには太古の昔を彷彿とさせる見事な景色が広がっている。ここでは通常の物理法則が通用せず、時間や距離といった概念がないようだ。

 しばらく再会の喜びに浸っていたアリアベルだったが、こんな風にひとまず話を逸らしたのは、次第にみんなの表情が硬くなり、緊張したような雰囲気を帯び始めたからだ。何か話があるのだろうと察したアリアベルが、そのあと少しの沈黙を置くと、案の定、そこで白龍が口を開く。これまでの状況について自然と話が進んでいった。


「其方が辛い輪廻転生を繰り返している事は知っていた。だが、どうしても“呪”の障りが祓えず……。魂の痕跡が分かるのも死の直前……、感知できたかと思えばすぐに闇に消えてしまう……。ポータルが開かれるのもいつになるか分からぬ状況ではどうしようもなかったのだ……」

「ええ、それはさっき、フェンからも聞いたわ」

「すまなかったっ! こんなにも長い間なにも出来ずに……! 結果、其方ばかりが犠牲となり、死ぬよりも辛い経験を何度も何度も味わわせてしまったっ……!」


 そこで一斉に全員が声を上げる。「申し訳ありません!」「悪かった!」「ごめんなさい!」など、それぞれが沈んだ表情で口にする。アリアベルがそれを制止しようとしても、彼らの気は到底おさまらないようだった。


「……ね、ねえ、みんな……、私ならもう平気よ……、けしてあなたたちのせいではないし、責任を感じる必要はないわ」

「平気な訳があるまいっ! 呪われた人生を何度も繰り返したのだぞっ!」

「そうだ! ……くそっ! 神の愛し子が人間ごときに何度も何度も殺された!」  


 白虎が憤怒の形相で牙を剥き、それにつられるように、フェンも感情的に火花を散らす。


「……だから、もう……そんなに怒らないで……」

「我々は己の不甲斐なさに腹が立っているのだ! ……悔しくてならぬ……、其方が苦しんでいると知りながら何も出来ずにいた事が……。なんともやりきれぬ思いを抱え、どこにその感情をぶつけて良いのかも分からずに生きてきた。更には我々だけが安全な場所にいたという実状が余計に心苦しくさせるのだ……」


 白龍の言葉に皆が頷き、また苦しそうに顔を歪める。その様子を見たアリアベルもまた、仲間たちが抱えてきた思いを初めて知る事となり、その計り知れない苦悩や葛藤に対して胸を痛める。「私は大丈夫」と反射的に出かかった言葉を思い直していったん飲み込み、それから改めて心の内にある偽りのない感情を整理する。それを素直に打ち明ける事にした。


「……ええ、そうね……、正直に言うと、やっぱりすごく辛かったわ。呪いの影響とはいえ、なんでこんなに酷い事ができるんだろうって、人間の汚なさや残酷さ、狡さをまざまざと見る事になって……。辛くて辛くて、それまで知らなかった暗い感情が生まれてね……、途中、私は本当に嫌な人間になったのよ。本気で人を恨んだし、時には復讐心さえ抱いたりした。そんな自分が嫌になって、もう全部消えてなくなればいいのにって何度も思ったわ」

「「「「……アリアベル……」」」」


 未だその情景はありありと脳裏に浮かんでくるが、痛みに蓋をするようにアリアベルはそっと自分の胸に手を当てる。軽く息を吐き出した後、今度は少し笑みを浮かべながら話を続けた。


「でも、私には救いがあった。それが死を代償にした力だとしても、それがあったから辛い人生でも最後まで生きる気力を保てたし、聖女としての誇りを失わずにいられたのよ。それに、最期はレリアーシュ様が寄り添ってくれたしね」

「レリアーシュ様が?」

「ええ。死んだ後は必ず迎えに来てくれたし慰めてくれた。どんなに惨い最期だったとしても、それで私は救われたの。力を取り戻した今ならはっきり分かる……、やっぱりあれは夢なんかじゃなくて、本当にレリアーシュ様だったんだわ。今もその存在を感じてるもの……」


 正確には、それは思念に触れている状態だ。女神の想いは時を越え、いつもアリアベルに癒しと慰めを与えてきた。そして、今の覚醒した状態であれば常に女神と対話が出来るし、その姿も捉えられる。アリアベルの目の前にはニコリと微笑みを浮かべるレリアーシュがいて、「良かったわね」と嬉しそうに語りかけている。アリアベルは存分にその思いを受け取っていた。


「だからみんな、そんな風に自分を責めないで? あなた達は何も悪くないし、私も責める気持ちはこれっぽっちもないの。むしろとっても嬉しいのよ? だってあなた達とまた会えたんだもの。みんなが無事でいてくれた事が今は本当に嬉しいの。今までの苦労なんてこれで全部報われたわ! 今日は本当に素敵な日ね!」


 感情のままにそう言うと、みんな呆気に取られた顔をする。毒気を抜かれたようなそんな感じで、その後、やれやれといった多少ぎこちない笑みが返される。それからはまたようやく砕けた雰囲気が戻ってきた。

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