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そして時は巡り

どれだけの街を訪れただろう


廻る廻る世界を廻る


悪はいつも栄えては滅びてった


巡る巡る季節のように


あの人との出会いは宝物で


想像を超える、奇跡の軌跡


出会いに別れはいつも付き物で


笑顔、怒り、涙、そして幸せを


一つ一つ感じながら時を刻む


2つ3つ前に進む楽しみを


弱く弱く鈍くなる感覚で


強く強く優しく噛み締めながら




お爺さんは、椅子を回す、


くるり、くるり




かつては勇者と呼ばれたお爺さんは


思い出したかのように昔を語る


かつては異世界転生という


不思議な魔法が流行ったらしい


強力で便利な力だったけど


不幸になった人も多かったようだ


だけどお爺さんはその魔法のお陰で


お婆さんに出逢えたみたい


去年死別した最愛の


お婆さんとの馴れ初めを聞いた


何度も何度もプロポーズして


何度断られても諦められなくて


信頼した味方に裏切りにあって


パーティー全滅しかけた時も


お婆さんの能力が優秀すぎて


自信を失いかけた時も


禁断の宝箱がうっかり開いて


世界が滅びそうになった時も


いつでもお婆さんを大切にしてた


そんなお爺さんにきっと惹かれたんだね




お爺さんは、椅子を回す、


くるり、くるり




どんなに苦しい時も


諦めない心が、私を救っていた


しつこいと思われただろう


でもあの人も同じ気持ちと気付いてた


何度も死ぬ思いをしたが


往生際の悪さが自慢だった


無駄なことなんて何もないと気づけた


だからいつも前を向いて歩けた


君もいつか大人になって


何かに絶望する日が来るだろう


でも君には気付いて欲しい


絶望の裏には希望があって


それは今は見えないだけだって


前が暗いなら後を振り向いてもいい


泣いたり逃げたりしたっていいから


笑ったり進むことを諦めないで欲しい




お爺さんは、椅子を回す、


くるり、くるり




私も君との別れの時が


いつか来ることは知っているが


それは永遠の別れじゃない


また違う形で巡り会えるさ


きっとこの身体は朽ち果てるだろう


君との思い出は覚えていられるかな


だけど悲しむことはない


魂はきっと残るから


私の肉体は大地に還って


新しい生命の糧になる


私の記憶が消えてしまっても


君達の思い出に生きるだろう


残された魂は巡り廻って


新しい生命に宿る


魂に記憶が宿らなくても


私の魂に変わりはない




これは嘘じゃない


これは嘘じゃない


私はそうして生まれてきた


あの人も、多分君も




お爺さんは、椅子を回す、


くるり、くるり




さてさて、夜も暗いし君はおうちに帰ろう


お父さんとお母さんが待ってるよ


特に君のお父さんは


とても心配症な人だから


君の帰りが遅くなったら


目の色を変えて探しに来るだろう


前世か何かで何かあったか知らんが


とても家族想いで素敵なお父さんだ




さあ、お家へ帰りなさい


そして明日、私が元気なら、またおいで




お爺さんは、椅子を立ち、笑顔で


少年を見送った




どれだけの街を訪れただろう


廻る廻る世界を廻る


悪はいつも栄えては滅びてった


巡る巡る季節のように


あの人との出会いは宝物で


想像を超える、奇跡の軌跡


出会いに別れはいつも付き物で


笑顔、怒り、涙、そして幸せを


こんな老いぼれになっても


新しい出会いは楽しいもんだ


かつての勇者の成れの果てと


書いて勇者の成果と読もう


愛しのお婆さんを見習って


明日はもっと想像力豊かに生きよう


人生楽しみは終わらない


昨日も、今日も、そしてきっと明日も




どんな生命もいつかは巡る


輪廻が廻る、世界が廻る


異世界転生は希望であり、


時に絶望にもなり得たけれど


本当は人の想いなんて関係無くて


ただそこにあるだけ


幸せになれるかはその人次第


回る速度は自由自在


ぐるん、ぐるんと、激しくも


くるり、くるりと、優しくも


けれど、決して止まることはなく


ただ廻る、ただ廻る

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