おわかれ?
『あぁ…怖かったよね!ごめんね!君に怒ってるんじゃないの!大丈夫だから泣かないで〜!』
アリシアさんは、頭を下げた俺にガバッと抱いて来た。
いきなりの事で少しビクっとしたがきっと返す前の最後のお別れなのだろう。俺はアリシアさんにされるがまま頭を撫でられている。
『やれやれ…先が思いやられるのう…お前さんがしっかりせんと娘っ子も不安になるじゃろうさに』
『気を付けます…あの、村長さん…それってつまり?』
『お前さんの事じゃ、この娘っ子の面倒を見るんじゃろう?』
『村に住まわせてもいいのですか…?獣人族それも妖狐族の子でも!』
『当たり前じゃバカモン!獣人族だろうが人族だろうが子供は子供じゃ!ワシら大人が守ってやらねばどうするんじゃ…それに町や都市の孤児院に預けたとしても…獣人族と人族の子では対応がのう、それに比べて元Sランク冒険者であり獣人族に偏見の無いお前さんの側に居るのが、1番安全で幸せであろうて』
『村長さん…グズッ…ありがとう…ございます!』
頭の上がちべたい…アリシアさん泣いてる?
きっと頑張って交渉してくれたんだろうなぁ…俺も昔親に反対されたっけ、今思うと生き物を飼う事の責任の重さを教えてくれたんだよなぁ…って何で俺はナチュラルにペット枠を受け入れてんだよ!これでも一応人間だって!
ブンブンと頭を振って要らん考えを捨てて俺は、泣いてるアリシアさんの頭をよしよしと撫でた。爪先立ちで。
もう少し屈んでくれると…助かるんだけどなぁ…プルプル
『ほっほっほぉ、優しい娘っ子じゃないか!村の者達についても安心せい、ここにはそんな偏見を持った奴などおらんわい!』
『えぇ…みんな優しい人達ですもんね!君も慰めてくれたのかな?ありがとう!』
アリシアさんが笑った。元気になったっぽい?ふぅ…!やっぱり女の子はこうじゃないとね!泣いてると落ち着かんて。
『それにしても大人しい子じゃのう〜娘っ子よ、お主の名前はなんじゃ?』
なんと!いつの間にかお爺さんもニコニコしとるではないか!屈みながら何か話してくるがスマン爺さん…まだ全然分からんのだ…。
『あ、その…この子…言葉が分からないみたいで…名前も分からなくて』
俺がどうしたら困っていたらアリシアさんが何か話してくれた。きっと言葉が分からないのを伝えてくれたんだと思う。
『なんと……ではお前さんが名前を付けなされ』
『私がですが?でも良いのでしょうか?』
『良いも悪いも名前が無いと不便じゃろうて…それに育てるんじゃろう?ならば親が名前を付けてあげないとのう!』
『もうー!村長さん!…でもそうだよね、私がこの子の面倒を見るんだ!名前…名前…うーん!シェリーはどうかな?』
『ほう…古代聖星語で最愛の意味を持つシェリーか、良い名前では無いか!』
アリシアさんも爺さんも俺を見ながらニコニコして話し込んでる…うん?感動の涙の別れじゃないの?何でそんな楽しそうなんだ…?
「……???」
俺が首を傾げながら不思議そうに2人を見てると、アリシアさんが屈んで俺と目線を合わせて話しかけてきた。




