不安の兆し
〈side?〉
暖かい、いつぶりだろうか?よく子供の頃は良く誰かに抱っこやおんぶをして貰っていたような気がする。
それにこの匂い、何だかとても落ち着く。そうか俺は寝ていたのか。
少しずつ頭が覚醒してくると誰かが話している声がする。
『なるほどのう…あの森でそんな事があったのか…グリズリーウルフの件といい、謎が深まるのぅ…』
『普段はもっと南の方に居るはずのBランクの魔物が森に居たのも何か異変が起きてるのか、それともただのはぐれでしょうか?』
『だと良いんじゃがの…ワシの方でも調べとくとしよう、してまずはこの妖狐族の娘っ子の方が先決じゃな』
『妖狐族といえば、かなり北東の地の島国を住処にしていたはずですが……』
『うむ…身なりからして十中八九奴隷か亜人狩りから逃げて来たのだろうか…それかあまり考えたくはないが…』
『捨てられた…ですか?』
俺は邪魔にならないよう大人しく寝かされていたソファーで、2人のやり取りを眺めていたんだがアリシアさんが何か話した瞬間アリシアさんの雰囲気がピリッとした気がする。怒ってる?俺なんかやらかしたか…?
『気持ちは分かるが、1人だけとなるとな…話を聞く限りだとそうとしか思えんのう…』
『あんな幼い子を森に置き去りにするなんて!!殺してるも同然じゃない!!』
「!?」
バンと机を叩いて立ち上がるアリシアさんを見てビックリした俺は、尻尾と耳がピンと伸びると反射的にソファーから飛び退いてしまった。
きっと多分あれだ!状況を見るに俺の扱いをどうするか的な事で、言い争いになってるのかもしれない。
このお爺さんが立場が上なんだろう、アリシアさんの家族かな?…ハッ!これはよくあるアレでは無いか?
子供が学校の帰りに猫や犬を拾ってきて、うちで飼いたいとパパやママにお願いして、元の場所に返してきなさいと言うお馴染みのやつでは?
元の場所に帰ると俺はそのまま土にも還そうですけどね。
しかし助けて貰った上これ以上アリシアさんに迷惑をかける訳にも行かない…ひとまず、ここまで助けてくれた感謝をして…ここを出てからコレからの事を考えよう。アリシアさん超怖いけど…
普段温厚な人がキレたら怖い的な?
『落ち着かんかい!ほれ見ろ!お前さんが怒るから娘っ子が怖がっとるでは無いか!』
お爺さんも何やら叫ぶと俺を指差してくる。これは間違いないな…
『ハッ…!?ごめんなさい…!』
アリシアさんも俺を見て何やらショックを受けてるみたいだ。ついに捨てて来なさいが来たか…。
俺は腹を括ると、とぼとぼとアリシアさんの前に歩いてく。
正直に言うと、またあの場所は勘弁して欲しい…せめて何処かもう少し弱い魔物か生き物がいる場所にして下さい…
不安と恐怖からか耳はぺたんと垂れ、股を潜り前に伸びてきた尻尾をぎゅっと抱きながら俺は、感謝の気持ちを込めて頭を下げた。




