暖かさの中で
さて、色々と状況を整理出来た中で、今後の自分の身の振り方についても考えよう。
まず言語、日本語についてだ。
おそらくこの世界では通じない。喋った所で余計な混乱か若しくは、変に思われるだろう。
この世界に俺以外の日本人の転生者が居ればまた考えるとして、暫くはこの世界の言語つまりアリシアさんの言葉を覚えてくしかない。
スキルや能力といった物があれば大分楽にはなるが、確認のしようがないので自力で頑張る他ない。
異世界転生に憧れた同志達よ、これでもまだ異世界に来たいと思うかね?
…冗談はさておき、まだまだ情報集めが必要なのでなるべく目立たず怪しまれないように行動するとしよう。
『おーまーたせっ♪えいっ!』
俺があれこれ考えて居たら、急に足元がふわっと浮かび地面が見る見る遠くに行くではないか。
「ふぁっ⁉︎ぁぁぁぁ〜」
そう、水浴びが終わったアリシアさんに後ろから抱き抱えられたのだ。全裸で。
『わっ!君思ってたよりも全然軽いね〜!』
何だか楽しそうでなによりではあるが、服を来て欲しい…あと急にやるのはビックリするのでやめてほしい。
そして抱き上げられると言う事はそう…横には破壊力抜群の2つのお山が…俺は咄嗟にギュッと目を閉じるしかなかった。
『あれれ?怖がらせちゃった?!ごめんね!大丈夫だからね〜!』
そう言うとアリシアさんは、よしよしと俺の背中をトントンとあやしてくる。
そんな事しとる場合では無い…だろうて…早く…服を…。
アリシアさんに抱えられ、心地よいリズムで叩く背中の振動と暖かな体温と花のような香りの中で、気がつくと俺は意識が無くなっていったのだった。
『くすっ…いっぱいあって疲れちゃったよね、おやすみ!ゆっくりやすんでね!』
眠につく前に何か聞こえた気がするが…今はこの心地良さに身を任せよう…。
〈side:アリシア〉
私は腕の中で眠る小さな狐の女の子を起こさないようにそーっと草原の上に置くと、ササッと服を洗い乾かして着た。
そして気持ち良さそうに寝ている女の子に眺めながらこの子の事を考えていた。
見た目は真っ白に近い銀髪で、耳の毛先と尻尾の先端が淡い水色の子だった。年齢は8歳くらいかな?
愛らしいお顔にちょっと長めのまつ毛と綺麗な碧の瞳にちょんと飛び出た八重歯がとっても可愛い。
報告にあったグリズリーウルフは1体だけだったので、付近にはもう危険な魔物は居ないから大丈夫だと思うけど…早めに村に戻るとしよう。
倒した魔物は…後でまた取りに来よう。
私はそっと眠る女の子を抱上げると村に向けてゆっくりと歩いた。




