回想 上陸
「やっと着いたぁー!」
船を降りたリア姉がそう叫んで伸びをする。
「思ったより早く着けたな、それもこれもシオンのお陰だな!」
そう言ってルー兄は、グローブをはめてる右手を見せてくる。
「そうね、あれだけ撃ったのにまだまだ行けるわ!」
リア姉もグローブをはめた左手を見せてくる。
「リア姉はやり過ぎ…後半なんて魔物がビビって全然出会わなくなるんだもん」
そうぶーたれながら私も船から降りる。
「まぁ、そういじけるなって…シオンは確実に強くなってるって、焦っても仕方ない…だろ?」
ルー兄はそう言って宥めてくる。
「そうよ?無理は駄目だからね?そ れ よ り も、まずはギルドに行きましょう?」
リア姉もそう言って私を嗜める。
2人はいいよね、ある程度戦闘の経験がある状態で印の力を得たからスムーズに使いこなせてるから。
ゲームで例えると、レベルが50だとして、印の力でステータスが50%上がったような感じ。
それに比べてわたしは、レベル10でステータスが50%上がっても微々たるものだ。
100が150になるのと、10が15になるのじゃ全然違う。
2人が強くなったのは素直に嬉しい、だけど私が足手纏いな状態が嫌なのだ…2人の足枷になりたくない。
「そうだな、アルヴィンの情報も欲しいし、冒険者登録もしないといけないしな」
「む〜……登録したら魔物倒しに行く!」
「はいはい、1人で先走っちゃ駄目だからね?約束できる?」
「約束する!」
そんなやり取りをしている私達を見る周りの人達の目が優しい。
「にいちゃん達ギルドに行くなら階段を上がって右に行きな!」
定期船の荷下ろしをしていたおじさんがルー兄に道を教えてくれる、会話を聞いていたのだろう。
「おっ、サンキュ!助かるわ!」
「良いってことよ!嬢ちゃんも気をつけてな!これ食べて頑張りな!」
おじさんは袋からビスケットを取り出すと私にくれた。
「ありがとう…ございます」
ペコリと頭を下げてお礼をしてからビスケットを貰う。
「おう!どういたしまして、それじゃ引き留めて悪かったな!」
そう言って手を振りながら見送ってくれるおじさん。
良い人だ、私も手を振っておこう。フリフリ
おじさんに言われた通りの道を進むと、大きな建物が見えてきた。
ここがギルドなのだろう。
中に入ると沢山の人が居た。
依頼を受ける人や出す人、テーブルに座り情報を交換する人など様々だ。
その中で大きな態度で椅子に座るスキンヘッドの男と目が合った。
見るからにガラが悪そうだったので慌てて私は目を逸らす。
「おいおい…ギルドにガキが来やがった、ここは孤児院じゃねーぞ?」
ルー兄とリア姉が男の方を見たが、無視して通り過ぎるので私もそれに続く。
「お前だよ、獣人のお前…ガキは家に帰ってママの乳でも飲んでな!!」
流石にちょっとイラっとしたけど抑える、いきなり問題を起こすのも良くない。
帰る家も母親もいねーよハゲ。
「お?なんだその目は…俺とやり合おうってか?」
やっべ睨んでるのバレた。
「大都市にあるギルドだから立派な冒険者が居ると思ったら、なんだ…子供にしか威張れないチンピラの集まりだったとはな」
ルー兄がそう吐き捨てる。
あちゃー…ルー兄ぷっちんしちゃったかぁ…。
「んだとてめぇ!もう一回言ってみろ!」
ハゲのチンピラがテーブルを蹴り飛ばしてルー兄に近づく。
リア姉に止めて貰おうとそっちを向くと…リア姉もぷっちんしてた…。
ハゲピラさんご愁傷様です……ナムナム。
「ここはチンピラの来る所じゃねぇって言ってるんだよ!」
「上等だぁ!表に出な!ぶっ飛ばしてやる!!」
周りの人は、面倒はごめんだと言わんばかりに避けていく。
隅っこの方に居るおじさんは、面白そうにこっちを見てるけど…止めては来れなさそう。
ルー兄見たり、ハゲピラ見たりと、ぐりんぐりん首をうごして周りを見ていたら、リア姉に後ろから引き寄せらた。
真上を向いてリア姉を見ると、笑顔なのに目が笑ってない。
この中で1番怖いの間違い無くリア姉だ…。
私は毛を逆立てて怯える。プルプル
ルー兄とハゲピラが外に出ようとした時だった。
「何やっとるんだ!この馬鹿タレがぁぁ!」
空気を震わす怒号がギルドに響き渡る。
あまりの声の大きさに私は耳が飛んで行ったかと思った。
尻尾もピーーンと伸びてる。
「だ、旦那…こりゃ違うんすよ、こいつがナマ言って…ぶべらぁ!?」
私は耳が飛んで行って無いか、両手を頭の上に当てて耳を探していたら、2メートルはありそうな熊みたいな大男がハゲピラを殴り飛ばした。
ハゲピラは壁に穴を空けて突き刺さりピクピクしている。
流石にこれには、ルー兄もリア姉もポカーンとしてる。




