間章 ep1 這い寄る狂気
帝国領の首都ベリルン
そこにある王城の一室。
暗闇を星明かりが照らす中、そこに2人の男が居た。
1人は玉座に突っ伏していた、身体中から血を流しており既に息は無い。
そんな惨たらしい死体を、まるでゴミを見るかのような目で見つめるもう1人の男がいた。
真っ黒な髪に赤い目をした妖狐族の男だった。
静かに扉が開き、そこに赤い髪に緑の目をした和装の妖狐族の男が入って来る。
「やっと見つけたぞ…ミカヅチ…!」
ミカヅチと呼ばれた男はニィっと口角を上げて和装の男に振り返る。
「よぉ……随分と遅かったじゃねぇぇかぁ…潜入は楽しかったかぃ?グレン?」
グレンと呼ばれた男は腰に差した刀に手を掛ける。
「ぬかせ!貴様は…帝を…大和を滅ぼしただけに留まらず!お嬢までも手をかけた!どうしてじゃ!何故…帝を…ましてやお嬢を殺したのだ…あれは…!!」
ミカヅチは、クックックと可笑しそうに喉を鳴らす。
「まぁー…どうでもいいけどさぁ…ここに来た時点でグレン、お前は詰んでるぜぇ?」
そう言うとミカヅチは左手を壁に向けると、魔力解き放つ。
放たれた魔弾は、壁にぶち当たると大きな音を立てて崩れ落ちる。
「わざわざこんな帝国のど真ん中まで来るとは…さぁて、帝国全てと遊んでくれや…?」
爆破の音を聞き付けてドタドタと兵士が集まって来る。
「貴様!!どこまで落ちぶれたら気が済むのだ!クソっ!!」
グレンが空いた壁を通り抜けて外に出る。
その後ろでミカヅチが叫ぶ。
「ガイウス陛下が討たれた!!下手人は大和の生き残りだ!!生きて逃がすなぁぁぁぁ!!!」
グレンが逃げた壁を見つめるミカヅチの顔には、狂気の笑が浮かんでいた。




