表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
second Re:Life  作者: 天月シズク
2章「動き出す歯車」
25/41

覚悟

私がなぜ嘘を付いたかと言うと、この2つの魂が少し厄介な型で存在して居るからである。


例えるならコーヒー牛乳は、コーヒーと牛乳を混ぜたものだ。


コップ一杯のコーヒーと、コップ一杯の牛乳。


これを混ぜるとコップ二杯分のコーヒー牛乳が出来る。


では、牛乳を8割とコーヒー2割のコーヒー牛乳Aと、牛乳2割とコーヒー8割のコーヒー牛乳B、これが今の私達になる。


クオンとしての記憶を持つ俺と、現世の俺こと橘祐樹の記憶を持ち育ったシェリー。


魔術の暴走のせいで歪んだ魂、現世の記憶と入れ替わったとしても精神は子供のままだ、本質は変わらない。


そんな子に今からクオンとして生きろは酷なものであろう…それに育ての親であるアリシアの死で、シェリーの精神は既にもう限界をとうに超えている。


だったら俺がクオンとなって生きるしか無い。


幸いシェリーとして過ごした記憶は、シェリーの身体を通じて俺にある。


これが俺の…私がこの世界に来た経緯です。





「じゃあどうしてシェリー…いえ、クオンの身体に2つの魂が居るの?」


リラが疑問を口にする。


「それは…ことの発端は帝国が大和に攻め入った事が原因です」


「帝国が…⁈」


私がそう切り出すと、帝国と言う言葉を聞いたリラの目が見開く。ジークも顔が少し険しくなる。


「はい、大和に攻め入った帝国は、巫女の力を持つ私の身柄を要求してきました。」


私はかつて左手の甲にあった紋章、イザナミの印があった場所に目を向けて話を続ける。


「もちろん、そんな要求を呑めるはずもなく、最初は抗戦していましたが…膨大な軍事力有する帝国を相手に、所詮小さな島国の1つに過ぎない大和は…追い詰められました」


「そして大和は、私の身代わりを用意して帝国を欺く策を考えますが、その策に反対した私は、巫女の力で皆を連れて、遥か遠くの地に移動する術を行いましたが…術は失敗し、魔力暴走を起こした結果…私だけが転移しました、そしてその時に生まれたのがシェリーです」


私の事の経緯を聞き終えた2人だったが、2人とも言葉を失っていた。


「それから大和と帝国がどうなったのかは分かりませんが…恐らくは、身代わりの策を使ったのでしょう」


私の脳裏に、私に良く似た1人の少女の姿が浮かび上がる。


「そして魔力を使い切った私は、転移した先で意識を失って、新しく生まれた魂であるシェリーがアリシア様に保護されたと言う訳です」


私はそっと立ち上がると、ベットで睡るアリシアの亡骸に近づく。


シェリーとアリシアが過ごした日々の記憶が頭の中で巡る。


「シェリーはどうなったの?」


リラが尋ねてくる。


「今は私の中で眠ってます、無事…とは言えませんけど魂は生きてます」


あの時のシェリーの様子を思い出したのか、目元を涙で滲ませたリラが私に歩みより抱きしめてくる。


「そっか…今はゆっくり休んでね…それとクオン様は大丈夫ですか…?」


「私は平気ですよ、私まで壊れる訳には行きませんから…それと私に様は必要ありませんよ、大和はもう…ありませんから」


シェリーの周が優しい人ばかりで良かった…シェリーの為にも、今ここで絶望感に浸ってる場合じゃない。


シェリーの身体を通じて見た、村を襲った男の顔を思い出す。


コイツには必ず報いを受けてもらう…私は改めて覚悟を決める。


「クオンだって一緒に過ごして来たんだから…無理しなくても良いんだよ?」


リラの優しい手が私の頭を撫でてくれる。


目から涙が溢れてくる…辛くない訳がなかった、4年とはいえシェリーの中で共に過ごして来たんだ。


何も出来なかった無力感や失った喪失感が次々と溢れてくる。


「グスッ…すみません…では少しだけ…胸をお借り…します」


そう言って私は、リラの胸の中で静かに嗚咽を漏らしながら、涙を流した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ