欠けた破片
〈sideジーク〉
俺は目の前の光景をただ見つめるしか出来なかった。
リラが少女を抱きしめて泣く姿に何て話しかければ良いのか…分からなかった。
大丈夫か? 大丈夫な訳がない。
大丈夫だ 何が?
この少女は、シェリーは、村の人を1人1人それぞれの家へ返そうとしていたんだ。重症な身体でだ。
騎士団の連中もこの光景に、皆絶句していた。
俺はそっとリラ達から離れると、騎士団の方へ向かう。
「ジークさん……」
1番最初に村に入った騎士団の団員が俺を呼ぶ。
「どうした?」
「俺…俺…はどうすれば良かったんですかね…?」
嗚咽混じりに何とか言葉を絞り出してやがる。
「俺にも分からねぇよ…ただ…どんなに頑張っても、がむしゃらになってやっても、こんな事は何処でも起きる…」
他の団員も近くに集まってきた、こりゃ相当参ってんな…。
「だからこそ、俺達が出来るのは、救える命は救う事…なんじゃ無いかって思うぜ、こんな思いをする人を無くす為によ」
「そうですね…」
「シャキッとしろ、今は助けれた命を守って行こうぜ!」
そう言って俺は、騎士団を見回す。
「「「「はい!!」」」」
騎士団は整列すると、同時に敬礼する。
俺も敬礼して、命令する。もう大丈夫だな。
「各員、作業再開!」
「「「「はっ!!」」」」
騎士団は、各自の作業に戻って行った。
俺は、リラ達の方へと戻る。
こっちも大分落ち着いたみたいだ。
「おかえり、騎士団の方をまとめくれて、ありがとう」
リラは、此方に振り返り話してくる。
「別に大した事はしてないさ」
そう言って俺は、シェリーの様子を見る。
もう無理に動こうとする気配は無く、ぼーっと地面を眺めてる。
さっきまで無理に動いていたせいか、魔法で塞いだ傷口は開いて血が滲んでる所も何ヶ所かあった。
俺が騎士団と話してる間に、リラが手当てしたのだろう、所々包帯が巻かれている。
元は綺麗だった銀髪も、所々ついた血が乾燥して黒く汚れてる。
服も血で汚れ、所々ボロボロで、損傷が酷いのは、お腹と背中が破れてるくらいだった。
「これからどうしょっか…」
リラはそう言って、空を見あげている。
「そうだな…ターレスに行って、冒険者でも始めるか」
俺も空を見上げてそう答えた。
「良いわね、ノルドランド領なら獣人族に排他的じゃないし、この子…シェリーもゆっくり休ませてあげれるもんね?」
リラは、シェリーの首に下げてあるロケットを見つめて話す。
「ま、そういう事」
「それじゃあ私は、シェリーを身なりを整えてくるわ、何時迄もこのままじゃ可哀想だからね。」
「あいよ。」
リラは、シェリーの手を引いて、シェリー達が住んでたであろう家に歩いて行った。
「……俺もやり残した事を片付けるとするか。」
離れて行く2人を見送り俺は、村の入り口へと歩いていく。




