壊れる音
〈sideジーク〉
気を失った少女を抱えながら俺は、この子の母親であろう人の亡骸を見る。
かつては冒険者として名を馳せていたSランクの魔導士アリシア・エスポワールその人だ。
知らない訳が無い、どんな依頼でも達成する冒険者パーティ【エターナルウィング】は冒険者で憧れない奴は居ない。
そんな彼女が殺されるような事なんて…一体何があったんだ。
「埋葬…してあげましょう?」
リラがそう提案してくる。
「あぁ…そうだな」
俺は少女を近くの家のベットに寝かせた。
リラはロケットを少女の首に下げようとしたらロケットの蓋が開いた。
そこには文字と粉々になった魔石の残骸が入っていた。
「これは…?」
文字はこう書かれていた。
〜最愛の娘シェリー・エスポワールに贈る、アリシア・エスポワール〜
「アリシアは命を落としても…娘を守りきったんだ」
「そうね…貴女の娘さんは生きてますよ」
俺はそっとロケットを閉じるとリラが今度こそシェリーの首にロケットを下げた。
埋葬のため、外に出た俺は、村の教会があったのでそこの庭を使わせて貰うことにした。
そしたら中から泣き声が聞こえて来るので中を覗くと、村の子供達が居た。
「良く頑張ったな、もう大丈夫だからな…」
俺は亡骸を整えてるリラを呼びに戻ると、村の入り口に騎士団が居るのが見えた。
「逃げ出した騎士団様がやっとお出ましか…」
俺はリラに教会の中に子供が居る事を伝えて、騎士団の所へ向かった。
「今更何しに戻ってきやがった!!」
俺は隊長の胸ぐらを掴んで睨み付ける。
「だ、黙れ!付近で激しい戦闘があったと聞いて辺りを見ていたんだ!」
「ビビって逃げ出したの間違いじゃねぇのか?」
「ジーク!騎士団を侮辱するのは立派な違反行為だぞ!」
「俺はもう騎士団じゃねぇよ…肝心な時に命令が無いとかで動かなかった結果がこれだぞ…」
俺は更に言葉を続ける。
「挙げ句の果てには大事な時に逃げ出すわ…それが騎士団の誇りってんならそんなもん俺は要らねえ!!」
そう言って俺は胸にある騎士団の証のエンブレムを引き千切ると、足元に投げ捨てた。
「ジーク!こんな事してどうなるか分かってるんだろうな!」
「上にでも何でも言ったらいい!お前らも騎士団の誇りが残ってんなら最後くらいちゃんとやったらどうだ!!」
「ジーク…悪かったよ…俺は…穴掘るよ」
騎士団の1人がそう言って村に入って行く。
「俺も…」
そう言って1人また1人と村に入って行く。
「き、貴様ら!勝手な行動をして良いと思ってるのか!」
俺はもう一度胸ぐら掴んで言う。
「じゃあテメェは何しに来てんだ…あ?」
「くっ…私は周囲の安全の確保をする!行くぞお前ら!」
そう言って隊長は、残りの騎士団を連れて村から離れて行く。
「…おととい行きやがれってんだ。」
そう吐き捨て俺は村の中に戻ろうとしたら、パチパチパチと拍手するリラが居た。
「見てたのかよ…」
「珍しく熱くなってたじゃない?」
「あんな光景見たらな…一言言わないと気が済まなかった。」
俺の脳裏に、母親にしがみついて泣き叫んだ少女の姿が思い浮かぶ。
「そうね…ジークは子供やお年寄りには弱いから」
「うるせーよ…」
リラは胸に付いてるエンブレムを外すとポイっと投げ捨てた。
「良いのかよ?」
「今更戻れないし?それにさ………私も同類だから、ジークが怒鳴り込んでなかったら、私がはっ倒してたわ」
「俺よりやべーじゃん」
「でしょ?」
そうして俺とリラは笑い合った。
「子供達は?」
「騎士団の人が見てくれてる…ベーネチアまでちゃんと送り届けるってさ、良かったじゃん」
「ま、まだ騎士団の中にも腐ってないのが居たってことだろ?」
「素直じゃないなぁ」
「ほっとけ」
「じゃあ私、あの子の様子見てくる」
そう言ってリラは少女が眠る家に向かった、そして直ぐに戻って来てた。
「ジーク!あの子居ない!!」
「何だって!?」
俺とリラは村の中を走り出した。




