新生活(後編)
ロバートと別れてからは、村の畑を見たりすれ違う人に挨拶したりした。ロバート式敬礼は好評でみんな笑ってくれる。彼は今後コミュニケーションの師匠として密かに呼ばせて貰おう。
そんなこんなしてると、俺のお腹が可愛い悲鳴をあげた。この世界に目覚めてから何も食べて無いもんね。腹減った。
それを聞いたアリシアさんに連れられて今は、アリシアさんが住んでる家でご飯が出来るのを待ってるところだ。
家は簡素な感じで2LDKのアパートの一室を一戸建てにしたような感じで、ここが生活部屋で奥が寝室だろう。横にある2つ並んだ扉はトイレとお風呂場かな?
こちらの世界の生活環境は気になるが、若い女性の部屋をあれこれ探索するのは気が引けるので、大人しくしていようと思う。
キッチンではアリシアさんが、手際よくご飯を作ってくれていてる。
電気もガスも無いこの世界のキッチンは凄い。まずコンロの中に結晶があり、魔術の刻印がされたボタンを押すと、結晶の魔力を使って火が出てる仕組みになってるみたいだ。
部屋の照明にも結晶があり、こちらは結晶自体が発光する仕組みらしい。
この結晶は現代でいう電池みたいな役割りで、刻印の種類よって火が出たり水や光ったりするっぽい。流石異世界なんでも魔力様で、解決だ。
椅子やテーブルは木製で出来ており、座面には布で出来たクッションを置いて座るみたい。そのままだとお尻痛くなるもんね。
『お待たせシェリー!』
アリシアさんがご飯をテーブルに並べていく。パンとスープに野菜とキノコを炒めて干し肉を乗せた料理が出てきた。
2人分のご飯を用意したアリシアさんは、俺の隣に座り目を瞑り手を組んでお祈りをした。
俺も真似して手を組み目を瞑る。こちらの世界の頂きますだろうか?
『まぁ!シェリーもお祈りしてくれたの?えらいね!さぁ食べましょっか!』
アリシアさんの声が聞こえたので目をあけると、料理に手の平を向けてこちらを見ていた。食べて良いみたい。
しかし俺はじっとアリシアさんを見つめ、彼女が食べてから食べ始めようと思う。食べ方にもマナーがあるしな!というか食べ方が分からん!
『食べていいのよ?…もしかして私が食べるのを待ってるのかな?』
アリシアさんが食べ始めたので、俺も真似して食べてみる。パンは手で千切ってスープに付けてから食べる。なるほど…少し硬い。スープに付けて柔らかくしてから食べるんだ!
野菜炒めはフォークを使って食べてみると、調味料の関係か、現代の料理と比べて淡白な感じだが、干し肉にしっかり味付けがされているので美味しい。
こうして俺の異世界生活が始まったのだ。




