祝福
俺はアリシアに手を引かれながら家の外に出た。そこには20〜30人くらいの人が集まっていた。ケモ耳の人は1人も居ない…この世界ではあまりポピュラーな人種では無さそうだ。
そして、みんなの視線が俺に集中してる。見知らぬ人間?に耳と尻尾が生えてたらそら珍しいよね〜?
前世でもあまり人に注目されるのが苦手だった俺は、大勢からの視線が早々に耐えれなくなりアリシアさんの後ろに逃げるように隠れた。
そんな俺をアリシアさんは、大丈夫と言わんばかりによしよしと撫でてくる。そんなやり取りを村の人達は微笑ましそう見てる。
そんな中お爺さんは、俺等の前に立ち何やら皆んなに話すようだ。
『皆、忙しい中集まってくれてすまんのう…先日より東の森に現れたというグリズリーウルフじゃが先程アリシアが討伐してくれた!皆もう森に脅威は無いので安心して欲しい』
お爺さんの話を聞いた人々は、拍手をしたり喜んだりと賑やかだ。なんだろう?お祭りでもやるのかな?
『討伐した死骸については、後ほど何名かで回収しょうと思う。ミラが段取りをしてくれるみたいなのでそちらで話し合って欲しい』
みんなお爺さんの話を聞いて頷いてた。何人かの男等は腕を上げたり捲ったりとなんかアピールしてる…筋肉自慢大会とか…?暑苦しそう……。
『そして皆が気になっているであろうこの妖狐族の娘っ子は、アリシアがグリズリーウルフと遭遇した際に保護した子じゃ…見てわかる通り着の身一枚で言葉も話せん有様での…状況からの推測じゃがおそらく捨て子じゃと判断し、この村でアリシアの娘として迎える事になった!皆にも色々不便をかけるとは思うがよろしく頼みたい!』
《なんて酷い事…》《まだあんな小さな子が…》《うちの村の近くでぇ捨てるとは…随分と舐めた真似する奴がいるなぁ…》《万死に値する!》《当たり前だぁぁ!!》
さっきとは打って変わって今度は、悲しむ人や怒ってる人でいっぱいだ…何でか分かんないけど最後に叫んだ麦わら帽子の人は海の王様になりそう…あと体が伸びたりしそう…何でか分からないけど…。
お祭り中止なのかな?
『さぁシェリー?みんなに挨拶できるかな?』
ぽけ〜っとお爺さんの話と目の前の人達の反応を見てたらアリシアさんが、俺を連れて集まってる人達の真ん中に連れてきて名前を呼んだ。
俺を指差して集まってる方を指差してる。どうやら挨拶せい!って感じみたい?…え?皆さんだいぶヒートアップしてらっしゃるんですが…ここで俺にパスします?
「…え?…えっ?」
俺はアリシアさんと集まってる人交互に見るが皆じっと俺の見つめて黙っている。これは…もう言うしかないみたいだ。名前で良いんだよね?それしか言えんよ?
俺はもう一度交互に見て覚悟を決めた。…ええい!ままよ!
「し…しぇりー!!」
俺はそう言ってペコっと頭を下げた。頭を戻して少し待つとパチパチと辺りから拍手が聞こえてきた。
《あら、お上手ね!》《可愛い!》《おー!お利口さんじゃないか!》《もうお前を縛るものは何もない…お前はもう、自由なんだ》
あれぇ?さっきまでの顔とは打って変わってみんなニコニコしてる…最後の人は何かやり切った感出してるけど…やり切ったのは俺だからね?死にかけたり元の場所に戻されそうになったりね?…満足そうな顔しやがってぇ!
とりあえず、結果オーライ?




