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第81咬―狼と蛇

『お前がここにいるってことは、やっぱりアベルはこの中か?』


『きししっ。ああそうさ。だけどちょ~っと遅かったねぃ~』


()()()()


ってことは、奴はもう脱出口を出た後か。


『殺して見つける。ただそれだけ。』


美玲にもラミアの言ってることが分かったようだ。


そうだ。


コイツとケリを着けて、後を追えばいいだけのこと。


『しっ!ししっ!言うのはカンタンだよ~!?!?』


チャクラムが接続された鎖をラミアがぶん回してきた。


「うおっ・・・!!」


チャクラムの刃が頬ギリギリを通ってヒヤッとする。


ブラックマンバの毒が塗られてるんだ。


掠っただけで、アウト・・・。


『きしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃ!!!』


不気味は高笑いを浮かべながらラミアはチャクラムの鎖を振り回す。


シートや床を、ビシビシ切り刻みながら。


やけくそのように思えるが、正確に俺と美玲に向かって振るのだからビックリだ。


まるで2匹の毒蛇が牙を剥いてくるような攻撃に俺と美玲は回避一方になった。


距離を大きく取って、息を整える。


『どうやらスタミナ切れがすぐそこのようだねぇ~?ししっ!』


鎖を握る手を口に添えてラミアは厭な笑みを浮かべた。


ムカつくが、完全に奴のペースだ。


「クッソどうすれば・・・!!」


「頼太、私が出る。」


「はぁ!?出るってどういうことだよ!?」


「奴の気を引き付ける。その隙に仕掛けて。」


「分かってると思うが、アイツの武器には治癒不能の猛毒塗ってんだぞ!!それにそっちの思い付きについて来れるか・・・」


「大丈夫。」


「ッッッ!!」


「私と頼太は一つ。合わせるなんて簡単。」


・・・・・・・。


はっ!


そうだったな。


俺達はオルトロス。


2つの首に一つの身体。


息を合わせるまでもない。


「リードは任せる。失敗すんなよ?」


「もち。」


美玲が「すぅ~・・・。」と深呼吸する。


そして、ラミアに正面から向かっていった。


『はい無駄ぁ~♪』


2つのチャクラムの刃が美玲の首を落とそうとする。


しかし寸でで美玲は高く跳び、シアターの天井にぶら下がった。


『なっ・・・!?』


ここに来てラミアが初めて驚いた。


『高いトコのエサは捕まえられない?ヘビなのに?』


『ぎぃぃ・・・!!!うるっせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!』


激昂したラミアが美玲に再度鎖を振る。


美玲はシアターの天井の支柱から手を離し、ふわっと落ちる。


そして・・・空中で回転してガントレットでチャクラムを弾いた。


『がっ・・・!?お前・・・!!!』


『ほら後ろ。』


宙を降りながら指差す美玲の先にいたのは俺。


弾かれた反動で後ろに曲がった鎖を刀で絡め取る。


『捕まえた!!』


『てっ、テメェら・・・!!!』


ラミアは鎖を引っ張って俺を一本背負いしようとした。


だが、それは逆に好都合。


護主命絶流(ごしゅめいぜつりゅう)・鎖解き!!」


ラミアが引っ張った反対方向に、刀を軽く捻りながら引く。


次の瞬間、ラミアの鎖が糸みたいに解けてバラバラになった。


『あっ、ああっ・・・?!?!』


武器を失ったラミアは牙を折られたヘビと同じ。


もう恐れる必要はない。


「はっ!!」


「それっ。」


俺は刀で正面からラミアの首を。


美玲は拳で背後からラミアの心臓を同時に貫いた。


『がぼふっ・・・?!』


同時に引き抜くと、ラミアは床に力無く倒れた。


「ふぅ~!!何とかなったな。」


「頼太、コレ。」


美玲がスクリーンの下の隠し扉を見つけた。


「深いな・・・。どこまで続いてる?」


「微かに錆びたニオイ・・・多分地下鉄。」


「間に合うか?」


「急げば。」


「よし。行こう。」


ドームシアターを出ようとした時だった。


ラミアが俺達に手を伸ばして睨みつける。


『がぶっ・・・ごびゅ・・・くっ・・・。』


血を吐きながら何か言おうとしてる。


大方、「行くな。」ってことだろうな。


『それは、無理だ。』


背にラミアの手がポスっと床に落ちる音をして、俺と美玲はドームシアターを出ていった。

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