第74咬―集う烏
未登録訪界門はここから7ブロック先の路地を曲がった先の右側の空き貸し店舗。
「ちょっと早歩きするか。」
どこから金に目眩んだ連中が襲ってくるか分かんない。
通行人には用心しなきゃな。
「ちょいとお嬢さん・・・。」
「はい?」
ヨボヨボのおばあさんが話しかけてきた。
「カバン屋さんに行きたいんだが、どこかねぇ・・・。孫のリュックを仕立て直してほしいんじゃが・・・。」
「ああそれでしたら反対車線に・・・。」
❝カチャ・・・パン!❞
「うおっ。」
突然リュックからデリンジャーを出して撃ってきた。
『ちっ!逃したか!』
ロシア語・・・。
このお婆異世界語でカモフラしやがったな?
腹からほとんどゼロ距離で撃ってくるお婆の狙撃を、腰を振って回避する。
『ごめん乱暴な老害には優しくできないんだわ。』
お婆の胸を拳で貫いて心臓を引き抜く。
ドサリと倒れるお婆に通行人が集まるのを無視して走ることにした私。
そしたら今度は反対側の歩道でチェロ弾いてたおっさんがケースから狙撃ライフル出して撃ってきた。
「こんなに相手にできんわ。」
◇◇◇
「よし、日本橋駅だ。」
このまま駅に飛び込めばさすがに手ぇ出しづらいだろ!?
「まずは区と都議会の繋がりを明白にし、区民一人ひとりの生活を・・・!!」
区議会選挙の演説かぁ。
「騙されたと思って是非ともわたくしに清き一票を・・・。」
❝ドン!!ドン!!❞
「いいっ・・・?!?!」
選挙カーの上から撃ってきた!?!?
別の意味で騙されたわッッッ!!!
立候補してた中年男性は車から飛び降りて立ち塞がった。
そのまま格闘に入る俺達。
「3億ユーロは俺のモンだぁ!!」
「いや当選しろよ!」
銃を向ける男の腕を刀でねじって粉砕骨折させ、悶絶したところで脳天に刃をブッ刺した。
「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
「おい警察警察!!」
騒然となる現場を放って地下鉄の駅に飛び込んだ。
「早く電車乗らねぇと!!いつまでも付き合ってられっか!!」
◇◇◇
貸し店舗見えてきた。
訪界門まであとちょっと。
❝バララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララ!!!!❞
マンションからゴツい黒人たちがサブマシンガンで撃ってきた。
『3億ユーロは俺達ンだぁ!!!』
『粉になりやがれぇ!!!』
またかよ。
「ふぃ~。何パーティだよこれ?」
物陰に隠れて道を殴って粉砕して、コンクリの欠片をポケットにしまう。
『出てきた!!撃て撃てぇ!!!』
ポッケから破片を出して、男達に向かって指ではじく。
『うげっ・・・?!?!』
『あぎゃ・・・?!?!』
欠片が胸や眉間に直撃した黒人たちがマンションの外階段にガンガン当たって落ちていく。
全員倒しきったところで建物に入り、奥の部屋の訪界門に飛び込んだ。
「はぁ~。やっとだ。末広町駅。」
あとは地下鉄に乗って神田に行くだけ。
「じゃあ二軒目行きますかっ!」
「アタシ次は焼肉屋がいい~!」
「みんなで多数決取ろうぜ・・・あっ!!」
目の前の居酒屋から出てきた大学生グループと目が合った。
なんか一斉にスマホ見てる。
「なぁみんな・・・オオカミの討伐クエにしない?二次会。」
「さんせ~い。」
「全員で6人だから・・・5000万ユーロずつな?」
全員バックからリボルバーやらマチェットとか出して襲ってきた。
「ああダメだ。段っ々ムカついてきた。」
◇◇◇
切符買ってる余裕ない!!
最終手段・・・キセルじゃ!!
「ああちょっと君ッッッ!!!」
改札をジャンプで超えたら駅員が血相変えて走ってきた。
「切符切符ッッッ!!!」
「サ~セン今緊急事態なんでッッッ!!!」
「運賃払って払ってッッッ!!!3億ユーロ。」
「はぁ・・・!?いっ?!?!」
追っかけてきた駅員が懐からサイレンサー付きの銃出して撃ってきた。
「も~う!!いい加減にしろよッッッ!!!」
一気に間合いを詰めて駅員の腕を斬って、その流れで心臓を突いた。
「ごぼぇ・・・!!!」
血ぃ吐いてブッ倒れる駅員を尻目に、俺はホームまで走った。
そして、神田方面に向かう電車に駆け込んだ。
「はぁ・・・!!はぁ・・・!!しんど!!!」
ドアにもたれてズラ落ちながら座り込むと、警笛が鳴って地下鉄は日本橋駅を出発した。
◇◇◇
返り血がベットリ付いたデコ付きのケースに入ったICカードで改札を通ってホームに降りると、ちょうど神田行きの電車が来てたから乗った。
その際に殺して使ったICカードを隠滅のため電車とホームの隙間に落とした。
「よいしょ。」
席に座ると「ファ〜ン!」って鳴って、地下鉄は末広町を出発した。