第73咬―危路へ
アベルによって俺と美玲の首に3億ユーロ・・・日本円で500億の懸賞金がかけられた。
ヤバいぞこれは・・・。
猛烈にヤバいっっっ!!!
ちょうどエキドナも帰ってきたからラウンジでなんか策でも練ろうかと思ったが状況が状況なだけに考えがまとまんないッッッ!!!
「これから俺らは世界中のフリーの殺し屋に狙われんのかよぉ~!!うかうか街も歩けんわッッッ!!!あああああああああああああ!!もうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!!」
慌てふためく俺を見てエキドナは苦笑いを浮かべる。
「そう狼狽えるな。アベルの喉笛に喰らい付く機会はまだ皆無になったワケではあるまいて。今は同じ苦境に立っている片割れと再び会うことに専念したらどうだ?」
「んん・・・。」
エキドナに諭されて、ちょっと冷静になってきた。
腐っても母親・・・ってトコか・・・。
「しかし、すでにホテルの目と鼻の先で襲われたのですし、どのように落ち合うのです?」
「そこが問題なんだよなぁ~・・・。」
「美玲ならどうするか。という考えなら、自ずと答えはでるのでは?」
美玲ならどうするか・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「家でゆっくり寝る。」
「ほう?」
「美玲はこういう状況がうんざりするほど嫌いだ。だから家でのんびり寝たいって思う。だって・・・すんごくめんどくさがりだから。」
「ですがご自宅の周囲はすでにマークされている可能性があります。下手に近づけば養父母の方々が危険に晒されるのは明白・・・。」
「へびまるちゃん。別に家に帰ることが目的じゃない。問題なのは通り道だ。」
「通り道?」
「エキドナ。俺達が通った巨大廃水道の近くに、❝未登録の訪界門❞はあるか?」
エキドナは胸ポケットから手帳を出して確認した。
「あるな。ひと月前に発見されたのが一つ。」
「どこに繋がってる?」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「末広町だな。」
「へぇ~。神様は俺らの味方なんだな。」
「どういうことでしょうか?」
「このホテルの訪界門の出口の恵福の会本部ビルの最寄り駅は日本橋。そっから互いに東京メトロ銀座線で俺が通学に使ってるJR常盤線に乗り換えれる一番近い駅は神田。つまりそこが・・・俺と美玲の合流ポイントになる。」
「なるほど。ですが美玲様の方はこちらの動きに合わせてくれるでしょうか?」
「それは心配ない。オルトロスの片割れどうし、考えることは一緒だ。美玲も絶対・・・神田を目指すはずだ。」
◇◇◇
前にエキドナからもらった未登録訪界門の所在地。
ここから一番近いのは末広町に通じてる。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「頼太と落ち合うのは神田だな。」
きっと私の考えなんかとっくに見越して、頼太も神田を目指してんだろうな・・・。
長い付き合い。
手に取るように分かる。
頼太が何考えてるか。
「さて、行きますか。」
◇◇◇
訪界門の前。
エキドナ、へびまるちゃん、そしてケイローンに見送られ出発するところだ。
「じゃあ、行ってくる。」
「お気をつけて。」
「無事会えるといいな。」
「どうなるかアンタには大体予想付いてんだろエキドナ?」
エキドナは「フッ・・・。」と笑ってそれ以上のことは言わなかった。
『ケイローン。しばらくヒナの面倒頼むな?』
『子守りなど俺にとっては造作のないこと。安心して行ってこい。』
『結構な頑固ちゃんだぞ?俺らの子は。』
そう言って、俺は訪界門をくぐって日本橋の恵福の会本部ビルに戻った。
一階への階段を上がって、ロビーの前に立つ。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
こっから先は地獄も同然。
誰が、いつどこから襲ってくるか分からない。
気ぃ引き締めて・・・いかないとな!!
腰にさした紅狼をグッと握って、俺はロビーのドアを開けて外に出た。
左右確認した後に、急いで駅へと向かう。
ちょっと、ビビり過ぎ、だったか・・・?
まだビルを出て1分も経ってない。
組織の施設のめっちゃ近くだ。
「まぁここで仕掛けてくるほど金に目が眩んでな・・・いいっ?!?!」
いきなり横からハイエースが突っ込んできたから、俺は慌てて受け身取って避けた。
『3億ユーロが出てきやがった!!』
『覚悟しろよオルトロス!!』
俺を轢きかけたハイエースから中華系の男達が6人、ぞろぞろ出てきた。
「いきなりかよ!?」
刃にトラとかニワトリとかが描かれた牛刀を振り回して男達が向かってきた。
呼吸を整え、居合で3人仕留める。
続いて4人目を袈裟斬りにし、5人目の首を落とす。
『金よこせゴラぁ!!』
『俺に3億ユーロの値打ちなんかねぇよ。』
最後の男の両足を飛ばして体勢を崩し、そのまま胸から上を真っ二つにした。
「ふぅ~・・・!!」
安地から出て1分で襲われるなんて・・・。
コレ・・・神田までもつんか?