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第70咬―偲び酒

「はぁ・・・!!はぁ・・・!!はぁ・・・!!」


ホテルに入るとすぐに玄関ドアを閉めて、俺はそこにもたれかかった。


「くっ・・・はぁ~・・・!!!」


やっとここまで逃げることができたぁ~・・・。


心臓バクバク汗びっしょり!!


ちょっと・・・休も!


ヘロヘロになりながら、俺はミーティングルームに戻ることにした。


「頼太様っ!」


「ああ、へびまるちゃん・・・。コンバンハ!」


「ずいぶんお疲れのようですね。お飲み物お出ししましょうか?」


「いやダイジョブ。」


「美玲様は?」


「ワケあって今別行動。なにがあったか明日話すから。」


「分かりました。そういえば、お客様がお見えになられてますよ?」


・・・・・・・。


・・・・・・・。


「おきゃく、さまぁ・・・?だれ?」


「ケイローン様です。」


なんで先回りできてんだよ・・・。





◇◇◇





『やっと来たか頼太。』


ケイローンは2階のバーで俺のことを待っていた。


『なんでお前俺より先にここに来れたんだよ?』


『難しいことなんかしてないぞ?ただ走っただけだ。』


それが異常なんだよ・・・。


とりあえず俺はケイローンの隣に座って、ちょうど喉も乾いてたのでなんか頼むことにした。


「ああすいませんウーロン茶お願いします。」


『俺はライ。』


『ウィスキーじゃねぇか。お前いくつだよ?』


『17だ。』


『やっぱ俺と同い年じゃんか。いいの酒飲んでも?』


『俺の国にそんな法律はない。』


そうだった。


イタリアには飲酒と喫煙の下限年齢が定められていないんだった。


すぐに俺にはウーロン茶。


ケイローンにはライ・ウィスキーが来て、一気に飲む俺と対照的にケイローンはチビチビ飲んで、タバコまで吸い始めた。


隣で同い年に酒とタバコやられると、なんか背徳感を感じてモヤる。


向こうは合法でやってんのに・・・。


『それで・・・。』


ケイローンは酒とタバコを嗜みながらも、オーラだけで凄んできた。


『話せ。クロノス様と何があった?』


・・・・・・・。


『ああ・・・。』





◇◇◇





『そう、か・・・。』


全部話した俺に、ケイローンは元気無さげ返事した。


『信じる信じないはそっちの勝手だけど・・・。』


『お前が自分の素性以外で偽りを述べたことなどただの一度もない。よって疑う余地はないだろう・・・。』


誤解が解けてホッとする俺と違って、ケイローンはなんか堪えた様子だ。


『自ら死を選ぶくらいなら、生きている間に相談の一つくらいしてくれれば・・・ズルいお方だ。』


少しずつ飲んでたウィスキーをグビっと飲む。


どうやら酔わずにやってられなくなってしまったらしい。


『つきっきりだったお前なら知ってるだろ?そういうのは表に出さない性質(タチ)なんだよあの女性(ひと)なんだよ。自分の気持ちに嘘ついてまでどっしり構える・・・。だから本心を悟るのが難しいんだ。』


・・・・・・・。


『俺もそこに惹かれたからな。反論はできん・・・。』


ケイローンは二杯目を注文すると、また元のペースで飲み始めた。


『まだ俺達を殺したいか?』


・・・・・・・。


・・・・・・・。


『殺せず、元より殺す気のなかった者に復讐心を抱くほど俺は血迷っていない。』


『そっか・・・。じゃ、俺は部屋に戻るわ。お前は?』


『今夜はここで過ごす。あの方との逢瀬に、もう少し浸りたい・・・。』


『若い内から深酒すんなよ?』


去り際に見たケイローンの背中は、心配しそうなくらい哀愁が漂っていた。


とにかく、これでなんとか無駄な争いをせずに済みそうだ。


だけど、これからどうなるか・・・。





◇◇◇





頼太がケイローンとともに過ごしたいた頃、エキドナはアベルの許を訪れていた。


『何の用だ?』


『口封じに失敗したようだな?』


『慰めでもしに来たのか?』


『私にそんな暇はない。』


キッパリ言うと、エキドナはアベルに手を差し出した。


『結果的にお前は望みの物を手に入れた。さぁ。オルトロス(あの子達)の令鎖を返してもらおうか。』

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