第69咬―頭別る
あんだけ走ったのにもう追いついてきやがった・・・。
しかもこの弓の威力・・・。
やっぱアイツも並存世界に来て元のステータスが爆上がりしてるッッッ!!!
『おやおやおや~。ケイローンかぁ~。仕事は終えたはいいけどヤバいのに見られちゃったかぁ~。きししっ!』
『仕事を終えた?なるほど。お前達、アベルの部下だな?証拠隠滅のためにオルトロスを始末しに来たと・・・。』
『あ~これはワタシとしたことが。つい口が滑っちゃったぁ~。で?どうする?オルトロスをあげるって言ったら、手ぇ引く?』
薄ら笑いしながら首を傾げるラミアから目を下に逸らし、ケイローンは矢をつがえる。
『無論・・・残らず的だ。』
ケイローンは走りながらラミアに矢を撃った。
『それっ!』
ラミアは股を平にしてそれを避けた。
後ろに立ってた男の胸に矢が刺さり、遠くに飛んでいった。
なんだよアイツの関節?!?!
気持ちワリィほど柔らけぇじゃねぇか!!
『よそ見をするな。』
『え・・・?』
見るとケイローンが自分の下まで滑り込んでおり、真下で弓を構えていた。
『うっ・・・?!?!』
刀を抜いて咄嗟に撃った矢をはじくと、俺はバックステップでケイローンから離れた。
『しゃしゃ!!油断大敵~♪』
後ろを向くとラミアが連れて来た男達がこっちに銃を向けていた。
「ヤバっ・・・!!!」
次の瞬間、素早く駆け付けた美玲によって、男達は一瞬で撲殺された。
『おいヘビ女。お前の相手はこっち。』
ラミアと交戦を始めた美玲は、素早く連撃を浴びせる。
ところがラミアはそれを本物のヘビみたいに滑らかにぬたくって避け続ける。
『きしゃしゃ!!うりゃ!』
ラミアのチャクラムの刃が反り返る美玲の髪を掠める。
『ちょっと切るだけでも死みたいだね?』
『よぉ~く分かったねぇ~』
『鼻が利くから。臭いすごいよ?』
『ブラックマンバの毒だよ~。ほんの少し切れば20分くらいで・・・ポックリ♪』
マジか!?!?
「美玲!!待ってろ!!すぐ・・・そっちに・・・!!』
「頼太はケイローンに集中!サポートしてる場合じゃない!」
珍しく声を荒げる美玲に驚いたが、おかげで我に返れた。
逃げ回る俺に、ケイローンは矢をどんどん撃ちまくってくる。
馬なのに、まるで鹿みたいに飛び跳ねながら、正確に脳天に向かって。
その最中にも、俺達に向かって銃を撃ってくるラミアの部下を一人として零さず仕留めていった。
とんでもない剛脚に集中力だ。
これが主人が死んだ後の怒り狂った護衛ができることか!?!?
しかし矢には当然限界があるワケでケイローンが背負う矢筒の矢は底を尽きた。
『矢のストックは無くなった!!もう止したらどうよ!?』
『代わりはそこら中にある。』
ケイローンはすれ違ったラミアの部下の死体の足をもぐと、皮を一剥きして、足の骨を弓で撃ってきた。
刀でそれを斬った俺はぶったまげた。
コイツなんつ~モンで矢を代用してやがんだッッッ!!!
それからケイローンは、自分が仕留めたフランス男達の死体から足をもいで、矢筒に突っ込み、❝ズルッ!❞と皮を剥いて俺に撃ってきた。
その威力たるや・・・。
撃ち損した矢が当たった壁や床にデカい穴が開いて、廃墟の巨大水道に激しい弾幕が生じる。
「くっそ・・・!!!」
美玲の方を見ると、ラミアのチャクラムに塗られた毒を警戒して回避に徹している。
ラミアの部下はアサルトライフルを二人に向けながらあたふたしている。
フレンドリーファイアを恐れてるんだろう。
「今の内に間引かせてもらうぜ!!」
俺はライフルを構える男達を二太刀で斬り伏せた。
そして、追ってくるケイローンの前で急ブレーキをかける。
『ッッッ!!?』
「護主命絶流・血潮撒き!!」
ケイローンに刀の側面を向け、空中で振ると、着いた血が煙幕のように飛び散った。
『うっ・・・!!』
顔面にまともに血を浴びたケイローンの動きが止まった。
その隙を狙って、俺は奴に耳打ちした。
『俺達はクロノスを殺ってない。タルタロスの拠点で話す。』
『なに・・・!?』
よし。
早口だったが伝わったか。
「美玲!!2年前のシンガポールの手を使うぞ!!」
「ってことは・・・。」
・・・・・・・。
「今から別行動だ!!そっちの方が都合がいいッッッ!!!」
一緒に行動するより、別々になった方が敵をかく乱できる。
オルトロスの動きが読めるのは、俺達しかいないからな。
ラミアと戦うことを止めた美玲は、水道の入り組んだ方へ走りだした。
俺は元来た道を、そのままこっちの世界のクラン拠点に向かった。
「死ぬなよ?」
「そっちこそなッッッ!!!」




