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第60咬―前嵐祭

❝コンコン・・・。❞


「はぁ~い?」


「とっ・・・とりく、おあ・・・とりっと・・・?」


恥ずかしさのあまり真顔でカボチャの入れ物を差し出すヒナに、玄関のおばさんはクスっと笑ってペロペロキャンディーを3個入れる。


「ぱっ、ぱぱ!おかし・・・もらえた・・・。」


「ガッチガチだったな~!でも良かったじゃん!!」


勇気を振り絞ったヒナの頭を、俺はわしゃわしゃした。


ルビガロカの件からおよそ一ヵ月後。


今日は10月31日。


つまりハロウィンだ。


俺と美玲、ヒナは町内会のイベントで、コスプレしながら近所を周ってお菓子をもらってる。


これがヒナの初日本。


ハロウィンだからヒナの格好も怪しまれないと踏んだが、どうやら正解だったらしい。


だけど・・・。


「あっ!犬飼さん家の頼太くん?」


「どうも増山さん。」


「今年は参加したんだ?」


「ええ。()()()()()()()()()()()ことになったんで、せっかくならと。」


「そ~?でもその子の仮装・・・かなり本格的だね!?」


俺はオオカミのパーカーなのに対し、ヒナは毛むくじゃらで尻尾や耳まで付いてる。


正直、かなり浮いてた・・・。


「みっ、美玲がガチったんですよ~!!変なトコで本気出しますからアイツ!」


「すごいねぇ~・・・。お菓子、いっぱいもらえるといいね。」


増山さんにヒナは固まったまま撫でられた。


「ヒナぁ。やっぱ知らない人に撫でられんのはイヤ?」


「ううん。みんなやさしいから。」


「そっか・・・。」


「それに・・・これはとてもきちょうなしんせんなたいけん。かみしめる。」


「おっ、おう・・・。」


最近ヒナの口調にある種の貫禄のようなモノを感じるようになった。


柴犬特有の肝の座り方なのか・・・。


「頼太、ヒナ。」


「まま!」


「そっちは?どんなカンジ?」


「とりあえずキャンディー3つ。ってかお前なんで頭に巨大カボチャ乗っけってんの!?インドの人みたいになってる!!」


「これ特注。中にはキャンディー、クッキー、チョコ。しめて150個。」


「山ほど集めとるやんけッッッ!!!」


「この町のお菓子、全部いただく。」


コイツのガチっぷりは一体どこから出て来んだ・・・?


「まま・・・すごっ・・・!!」


「どうだヒナ。ままと一緒にこの町のお菓子、総取りしてはみないか?」


「うん・・・!!そうどりする!!」


胸の前の両手をフルフルさせて、ヒナは目をキラキラしながら尻尾を振る。


「では行くぞ!!ついて来い!」


「おう!」


「ちょっ、ちょっと待てよ2人とも!!これハロウィンだから!!収穫祭であって()()()じゃないからッッッ!!!」


ああ行っちまったよ・・・。


ホント世話が焼ける女衆だ。


こうして俺達は、初めて参加した近所のハロウィンイベントと、ヒナの初日本をバタバタしながら大いに楽しんだ。


この日ばかりは、殺し(しごと)のことなんか忘れて、年相応の羽の伸ばし方ができたと思う。


同時刻に、巨大な災いの渦が発生して、それの中心に巻き込まれることになるなんて微塵も思ってなかった・・・。





◇◇◇





東京、恵福(けいふく)の会本部の応接室。


一人の男が、エキドナから()()()を受け取っていた。


『ふむ・・・。約束の410万ユーロ(約66億円)、確かに入金できているな。エカトー。』


エキドナに付いていた()()()()()()()ことエカトーは、エキドナに促され、テーブルに例の品を置き、男はそれを受け取った。


『これがあれば・・・。』


『ああ。オルトロスは()()()で君の命令に従うさ。クラン代表の私が保障する。』


Merciありがとう。」


『一つ、教えてくれないか?』


ソファから立った男を、エキドナは呼び止めた。


『それを使って何をする気だ?』


・・・・・・・。


・・・・・・・。


『我々の世界を変革する。』


男はそう告げ、配下の者達を連れて退出した。


「代表。」


「何だ?」


「オルトロス様・・・大丈夫でしょうか?」


エカトーの問いに、エキドナはこう答えた。


「大きな試練が訪れるだろう。オルトロス(あの子)達に。」

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