第59咬―鍛冶神
「ふぅ~む・・・。はい。破損個所は一切ございませんね。ではこれで返却完了です。」
3日後、俺はレンタルしてた岩鱗丸を恵福の会本部ビルに返しにきていた。
「さすがは頼太様。武具の扱いをよく心得ております。」
「当ったり前じゃんへびまるちゃん!追加料金取られるの、ヤだからね。」
「フフッ。最近懐が御寂しいですからね。」
「へっ?!なんで知っとんの!?」
「レンタル料金引き落としの際に預金口座を拝見させていただきました。少し・・・♪」
笑顔でちょびっとのサインを見せるへびまるちゃんに、俺は少しヒエッとした・・・。
「あっ、あんまプライベート覗き見すんのも、ほどほどにしなよ・・・?」
「はい♪」
分かってんのかなぁ・・・?
「あっ。それで、例の件なんですが、材料が到着したと。」
「ホント?そっかぁ・・・。じゃあちょっくら顔出してくるわ。どんなデザインにするか相談したいし。」
「いい刀が出来上がると良いですね。」
「うん。」
へびまるちゃんと別れて向かったのは、南麻布。
そこに殺し屋の武器を作ってくれる職人がいる。
美玲の武器は全部そこで作ってもらってる。
俺が頼むのは初めてだ。
だけど美玲を通じて付き合いは長い。
緑が結構ある住宅街に建つ、大理石造りの2階建ての一軒家のチャイムを押した。
『はい?』
「❝火繰 創❞さんに会いに来たんだけど。」
『申し訳ございませんが先生は一般の方とお会いになりませんので。』
「オルトロスの頼太が来たって言えば分かるかな?」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
門扉の電子ロックが解除されて、俺は玄関じゃなく一見すると物置に見えるトコの扉を開けて、中にある地下に続く階段を降りていった。
通路は関節証明になってて薄暗い。
まぁこれぐらいの方がアイツにとって落ち着くのだろう・・・。
廊下の行き止まりの左側にあるドアをノックして開けた。
「ご無沙汰~。材料届いたんだっt・・・。」
「いい?ハンマーの持ち方をこうすれば、余計な力を加えず鉄を整えれるよ♡」
「しっ、師匠・・・♡くっ、くすぐったいです・・・♡」
「フフッ・・・♡感覚がちょっと過敏だね?ボクは君のそんなところ・・・イイと思うよ♡」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「何してんの?」
声をかけると背中越しに抱かれていた中学生くらいの女の子が、ハッとしてそそくさと部屋から出ていった。
「なっ、なんだ来てたのか!?黙って入るなんて無作法なんじゃないのかい?」
「ノックしたわ。っつかまた弟子に手ぇ出してたの?ヘパイストス。」
この、性格と同じくらい曲がった髪質の赤毛の女がヘパイストス。
表の顔は主にヨーロッパで活躍する、天才ジュエリーデザイナー少女・❝火繰 創❞だ。
だけどその実態は、殺し武器の神様と呼ばれた武器造りの達人だ。
生活態度が尋常じゃないほどだらしなく、ゴリゴリの百合属性持ちなのだが・・・。
「はぁ~・・・!!相変わらず散らかしまくってるなぁ~・・・。っつかお前、いつ風呂入った?」
「20日前・・・くらいかな?」
「バカじゃないの!?!?」
「天才は僅かな無駄時間も有効活用しなきゃいけないのだよ。」
「風呂の時間は無駄じゃないと思うけどね!?!?これが半年前にロンドンの世界的コンテストでグランプリ取った名高いジュエリーデザイナーの素だと思うと泣ける・・・。」
「感性のある者共にボクの作品が評価された証拠だよ。それに・・・ボクの専門は宝飾品じゃない。」
「確かに・・・そうだったな。で、どんなカンジ?」
「キミから仕事をもらって驚いたよ。いつもは相方が頼んでくるからね。とりあえず見たまえ!!」
テーブルに散らばった物を全部落として、ヘパイストスは図面を広げた。
「これは・・・。」
「材料を貰った瞬間からインスピレーションが湧いてきてね!今回は大太刀にしてみようと思うんだ!!」
「大太刀・・・。」
「全長はキミの背丈の4分の3。毛皮は鞘に、骨は柄に、爪はそのまま鍔にして、最後に腕刃は刀身にするんだけど、刃の上半分を削ってそこに牙を付けようと思う。斬られた者の身体には、狼の噛み跡のような刀傷が付くようにね!」
なるほどぉ・・・。
「鉄は使わないんだ・・・。」
「と~ぜん!!だってキミ、そういうの好まないだろう?」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「分かってんじゃないの~?じゃあ、これで進めて。イカしたデザインだ。」
「オッケー!!よぅし!!今から腕が鳴るッッッ!!!」
「あとそれと、もう一つの方は?」
「殺した男が使ってた剣だろう?そっちはキミの注文どおり、美玲の武器に仕立て直すよ。ガントレットでどうかな?」
「いいじゃん。じゃあこれ、依頼料。」
俺と美玲の分と合わせて4金貨。
即金でヘパイストスに渡した。
異世界の裏社会の金での支払いを希望なんて、コイツ、実は結構そういうの好きなんじゃないか?
「確かに。では出来上がったら並存世界のホテルに届けるから、楽しみに待っていてくれたまえ!!」




